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漂流キャスター日誌 金平 茂紀(著) - 七つ森書館
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漂流キャスター日誌

発行:七つ森書館
四六判
352ページ
並製
定価 2,500円+税
ISBN
978-4-8228-1800-5
Cコード
C0036
一般 単行本 社会
出版社在庫情報
在庫あり
初版年月日
2018年8月
書店発売日
登録日
2018年7月13日
最終更新日
2018年8月10日
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紹介

 行動するニュースキャスターの2016年9月からつづく取材日誌(WEBRONZA連載)。「暗黒と言っていい時代に僕たちは生きている」「今という時代は1940年前後に似ている」と語り「でも、口をつぐんでいる気はない」と断言する。

目次

1 アメリカ大統領選
 1 精神のストリップを行う覚悟について
 2 ♪もんじゅを、もんじゅをとめよう…
 3 友よ、その答は風に吹かれている
 4 「土人」、ウラボシシジミ、サムルノリ
 5 選ばれる大統領と、葬られる大統領と
 6 米大統領選挙。何が起きてもおかしくない
 7 アメリカが「非寛容な国」になっていく…
 8 人は去る 思い出だけを残して
 9 足元はもう揺るがないと思っていたのか?
 10 いいことばかりは、ありゃしない
 11 高江の不条理、いかがわしさの「同心円」
 12 「土人」と「不時着」が発語される国で
 13 オスプレイ、「島人ぬ宝」、恋ダンス
 14 この憎しみの根源にあるものは何か?
 15 イラクから帰国、とんがった人々をみる
 16 カッコ悪いことは何てカッコいいんだろう
 17 トランプ就任式より女性大行進がニュース──虫の目に徹して起きたことを記す
 18 無知はちからである
 19 演劇と現実の境目がなくなった1週間

2 時代は1940年代に似る
 20 『大東亜戦争』『足跡姫』……
 21 行くべき場所に行っているか
 22 目の前の現実は筋が全く通っていない
 23 ニ・ジュダーリ/スティーブ・ライヒ
 24 だいせんじがけだらなよさ
 25 同時代にいる喜び…坂本龍一/C・コリア
 26 籠池泰典氏から感じられた説得力
 27 悲しくてやりきれない
 28 キューゲキの人ってわかりますか?
 29 熊本地震、1年目の現場をみる
 30 『ニッポン国VS泉南石綿村』は傑作だ
 31 「東北でよかった」と「沖縄でよかった」
 32 ゴールデンウィークを漂流する
 33 今という時代は1940年前後に似ている

3 前川喜平紙の矜持
 34 「共謀罪」法案が衆議院を通過した週に
 35 前川喜平氏の捨て身の告発
 36 前川喜平氏、ドン・キホーテの矜持 
 37 官房長官会見、彼女ら以外の記者たちは?
 38 「共謀罪」成立の日、大田昌秀さんを送る
 39 戦後72年。沖縄慰霊の日の埋まらない溝
 40 2017秋葉原の変とNHKの不条理
 41 前川氏の清廉・豪雨・キジムナーkids
 42 非情の相を、しかと眼をこらして…
 43 あの大事件の取材をしてこなかった
 44 他人事のように遺憾であると言い放つ

4 イラク取材~解散総選挙
 45 あの時、君は若かった
 46 木綿のハンカチーフ/恋のハレルヤ
 47 イン・ザ・サマータイム
 48 イエスタデイ・ワンス・モア
 49 われ怒りて視る、何の惨虐ぞ
 50 ガツンと殴られたような衝撃
 51 ♪いい事ばかりはありゃしない
 52 もりかけ出前出演と人寄せパンダ
 53 民進党が終わった日
 54 没後30年、澁澤龍彦展がすばらしい
 55 原発と沖縄が脇においやられ…
 56 これが日本だ わたしの国だ
 57 誠実なルポライターのかけがえのなさ
 58 シンゾー・ドナルドの緊密時間
 59 「私はクールな報道陣じゃないからよ」
 60 前川喜平氏の中学授業と原一男監督の矜持
 61 風呂が壊れてお湯が出ないのだ
 62 聖なる女性詩人ステラの豪快なゲップ
 63 北の無人島行きの直前、原寿雄さんの訃報
 64 囲いのなかのエルサレム「首都」抗議行動
 65 何やってんだか、の日々

5 名護市長選と森友文書改ざん事件
 66 友人の死をはるか遠い中東の地で知る
 67 公衆の面前でズボンが、ずり落ちて…
 68 Shitholeを肥溜めと訳す妥当性
 69 みんな、みんな、先に逝く
 70  「小泉進次郎通り」を歩きながら…
 71 最も誠実な市長が最も残酷な形で…
 72 飲んでる暇があったら…
 73 2018年のヴァギナ・モノローグ
 74 大杉漣さんの死去、むしょうに寂しい
 75 森友文書書き換え疑惑、大乱の予感
 76 3・11から7年。公文書を改ざんする国
 77 文書改ざん事件のさなか、オウム死刑囚が
 78 佐川氏国会証人喚問までの漂流記
 79 史上最もおぞましい国会喚問劇

前書きなど

あとがき

 この日誌を書き始めるにあたって僕は「精神のストリップ」という醜悪な作業を敢えて行うのだという趣旨のことを書いた。本としてまとめるにあたり、たった一度、79週間分を通しで読み返してみた。何だ、「精神のストリップ」になんかなっていないじゃないか。ストリップにしてはどこか中途半端で、まだ下着をつけたまま全てを晒しているわけじゃあないな、と。やはりいろいろなことを配慮しながら書き淀んでいたのがわかる。ほんとうに書きたいことをどこかで避けていたんじゃないか。たとえば、伊藤詩織さんという女性が僕も知っている元後輩の男に、看過できない酷い仕打ちを受けたこと。そのことを知った自分が本当は何をしなければならないのかという葛藤について。それがもっと書かれているべきだ。たとえば、自分を取り巻く職場環境のなかで起きていたほんとうに不当な権力の行使について。保身を懸命に考える「凡庸な悪」について。それらのことがらは行間にわずかに滲んでいるだけだ。
 さらに、「精神のストリップ」を言うならば、精神がまだまだ軟弱だ。もっともっと徹底的に考え抜け。持続的な強度を欠いている、と。だから、そのようなものをお読みいただき、本当に読者の方々には申し訳ないという気持ちがある。自嘲的にならざるを得ないのは、この日記で一番多い記述が、酒場に駆け込んで憂さ晴らしの酒をあおっていた行動と、プールに駆け込んで何かを洗い流すようにひたすら泳いでいた自分の姿だ。泳いで、飲んで、漂流して。ただ、言い訳に聞こえるかもしれないけれど、現場で取材をしようという意志だけは僕はいつだって持ち続けていた(いる)。
 暗黒と言っていい時代に僕たちは生きている。ジャーナリストの清沢洌が、太平洋戦争勃発のちょうど一年後の1942年12月9日から書き出し、死の直前の1945年5月5日まで二年半近くにわたって書き続けた日記に『暗黒日記』という貴重な同時代史がある。あのような時代にも、精神の内面の自由を失わずにそれを書きしるしていた日本人がいた。お隣の国・韓国で保守政権時代にむごい弾圧を受けたテレビ局のジャーナリストたちのたたかいを記録したドキュメンタリー映画『共犯者たち』のなかで、たたかいの末にガンに倒れた男性記者が呟いていた。「少なくともこんな暗黒時代にも、私たちは沈黙はしなかった」。
 つたない不十分な日誌ではあっても、理不尽な現実に対して、僕も口をつぐんでいる気はない。
 
 本書は、朝日新聞社のインターネット言論サイトWEBRONZAで連載された『金平茂紀の漂流キャスター日誌』の2016年9月26日から2018年4月2日までの79週間分を単行本化したものだ。ちなみに連載はその後も継続しており、さいわいなことに少なくない読者の支持を得ているようだ。WEBRONZAの担当編集者・高橋伸児氏には、そもそもの連載の立ち上げからお世話になり続けている。お礼を申し上げたい。単行本化にあたっても快諾をいただき感謝。さらに『沖縄わじわじー通信』の刊行以来、いやそれ以前の初代原子力資料情報室以来、お世話になってきた七つ森書館の中里英章さんには、筆者の作業の非効率さにさんざん耐え抜いていただき、深謝。素敵な装丁を手掛けていただいた鈴木一誌さん、ありがとうございました。
                      
  2018年7月6日 
  オウム真理教事件の麻原教祖(松本智津夫死刑囚)ら7人の死刑が執行された日に 
                               
  金平茂紀 

著者プロフィール

金平 茂紀  (カネヒラ シゲノリ)  (

 ジャーナリスト。早稲田大学大学院客員教授。1953年、北海道生まれ。
 東京大学文学部社会学科卒。1977年、TBSに入社、『ニュースコープ』副編集長、モスクワ支局長、『筑紫哲也NEWS23』編集長、ワシントン支局長、報道局長、コロンビア大学客員研究員などを経て、2010年より『報道特集』キャスター。2016年、TBS退社後もキャスターを続ける。2004年、ボーン・上田記念国際記者賞受賞。
 著書に『沖縄ワジワジー通信』(七つ森書館)、『ロシアより愛を込めて』(筑摩書房)、『二十三時的』(スイッチ・パブリッシング)、『テレビニュースは終わらない』(集英社)、『抗うニュースキャスター』(かもがわ出版)など。共著に『白金猿』(かもがわ出版)など多数。

上記内容は本書刊行時のものです。