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水の不思議、水の奇跡 上平 恒(著) - 七つ森書館
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水の不思議、水の奇跡

発行:七つ森書館
四六判
256ページ
並製
定価 1,800円+税
ISBN
978-4-8228-1783-1
Cコード
C1040
教養 単行本 自然科学総記
出版社在庫情報
在庫あり
初版年月日
2017年9月
書店発売日
登録日
2017年7月11日
最終更新日
2017年8月23日
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書評掲載情報

2017-10-29 東京新聞/中日新聞  朝刊

紹介

人は水がなければ生きることはできません。水は多種類の物質を溶かすなど、多くの科学的性質を持っています。水の科学の専門家が、29の神話や伝承をもとに、魔法の水の働きを語ります。

目次

まえがき

第1章 伝承・物語の中の水
 1 古代中国の水
     三国志演義の中の水/悪性マラリアの根絶/西遊記の中の水──流沙河
     懐胎と堕胎の水/弱水/「浮かぶ」と「沈む」/溺れるアメンボ
     消滅する弱水
 2 古代ギリシャの不死の水と中世ドイツの龍の血
     ステュクス川──生の川・死の川/アキレウスと不死の水
     ジークフリートと龍の血/血は不死の水

第2章 恒常と転換
 1 水のイメージ
     豊饒/再生/豊饒と再生の二面性/変身/恒常と変換
 2 古代エジプトの水と転換
    第1話 二人兄弟の話(エジプト)
     この物語の中の水の働き
 3 生物と水
     生物と乾燥/アフリカネムリユスリ蚊の干乾びた幼虫は数滴の水で蘇る
     細胞内の水──恒常と転換/ネムリユスリ蚊の幼虫の蘇生の秘密
     ゴミムシダマシ虫は灼熱の砂漠で命の水をつくる
 4 若返りの水と水の再生
     第2話 嫉妬の姉妹(フランス)
     第3話 ふしぎな手太鼓(アジア・エスキモー)

第3章 転換の水
 1 性転換の水
     第4話 魔力をもった泉(アラビア)
     魔法の泉の正体/メス化する自然
 2 悲惨な障害をもたらす水
     第5話 花の咲く木(インド)
     第5話の木と水の意味/枯れ葉剤を浴びた
 3 水の溶解力
     親水性と疎水性
 4 疎水性の二面性
     環境ホルモン/ダイオキシン

第4章 奇跡の水
 1  くすり水と奇跡の水
     第6話 オウニーとオウニー・ナ・ピーク(アイルランド)
     第7話 森の悪魔と兄弟(ブルガリア)
     第8話 何も怖がらない王子(ドイツ)
     第9話 足のない勇士と盲目の勇士(ロシア)
     第10話 眠れる女王(イタリア)
     第6~10話の異界と水の意味
 2 地下水
     地下水の循環/奇跡の水が毒水になる

第5章 血は命の水・死の水
 1 血は命の水
     第11話 8番目の鍵(インド)
     第12話 不死身のコシチェイ(ロシア)
     第13話 忠義なヨハネス(ドイツ)
 2 第11~13話の構造要素・2つの話
     第14話 王子とその命を救った商人の息子(インド)
     第15話 アミイとアミイル(フランス)
 3 石像と選ばれた血
 4 血は死に水か
     第16話 蛇の血(アイヌ)
 5 血の二面性
     血の魔力/生命を支える血液

第6章 死の水・生の水と異界
 1 異界との交流
 2 死の海──現世と異界を隔てる海
    第17話 死体の付添人(アイルランド)
    第18話 羽毛の海(アイヌ)
     第17話と18話の構造
 3 死の海の中の生の水
    第19話 ギルガメシュの冒険(バビロニア)
     第19話の中の水の意味 184
 4 異界からもたらされる水
    第20話 「ルスランとリュドミーラ」
    第21話 イワン王子と火の鳥と灰色狼(ロシア)
    第22話 乙姫マリヤ(ロシア)
    第23話 ジュギーン・メルゲン(モンゴル)
 5 死の水と隙間の水
     「死の水」と「生の水」の関係 /「死の水」の発想とその意味
     「死の水」と隙間の水

第7章 不死の水と死
 1 不死の水
    第24話 不死を求めた王子(ハンガリー)
    第25話 不死の水(沖縄)
     2つの話の死の水と不死の水
 2 不死をめぐる欲望と嫉妬
     冷凍人間/嫉妬に狂う不死人間
 3 自然の中の命の水と死の水
    第26話 怪鳥とくすり水(アイヌ)
    第27話 3人の息子(エヴェン族)
     第26・27話の水と自然の水との関係
 4 不死の水と転換
     大蛇と水・不死
    第28話 辰子姫物語(秋田)
     辰子は何故水を飲み続けたのか/低体温療法
 5 叙事詩の中の命の水と死
    第29話 ウラル・バトウル(ウラル・バシュコルト)
     「命の泉」と死の意味


あとがき

昔話・民話の出典一覧表
文献
参考文献
初出

前書きなど

まえがき

 昔話・民話は多くの民族の間で語りつがれてきた口承文芸である。それらの話の中にはお互いに似通った内容の話もあるので、いくつかのジャンルに分類されている。
 その1つに魔法昔話というジャンルがある。これらの昔話の中には、主人公が魔法の道具を使って奇跡を行なったり、危難から逃れる話がある。
 魔法の道具は多種多様である。例えば命令すると相手をぶちのめす棒または杖とか、自分の姿を見えなくするかくれ布などがある。
 魔法の道具には1つの魔法に1つの道具ということになっている。つまり魔法の数だけの道具がある。これらの道具の形や材質はさまざまであるが、どれも固体である。
 魔法の道具の中に唯一例外がある。それは水である。水は液体であるから固有の形を持たない。どんな形でも取りうるという性質は、昔話・民話で巧みに利用されている。
 昔話にはくすり水、若返りの水、命の水、死の水などのいろいろな水が使われている。これらの水はもちろん、実在しない想像上のものである。しかし、昔話・民話の中の水の働きを読み返してみると、現実の水のある性質に通じるものがある。
 実在の水は多種類の物質を溶かすなどの多くの科学的性質を持っている。
 人は水がなければ生きることはできない。人ははるか昔から水と接して生きてきた。その長い間の経験の積み重ねによって、水にはいろいろな性質があることを感じとってきたと考えられる。そしてそれらの性質を使い分けてきた。
 昔話・民話の中の魔法の水はこれらの経験に基づいて想像されたものであろう。
 この観点から、まず神話や伝承の中の不思議な水を取り上げた。次に29の昔話・民話をえらび、話の中の魔法の水の働きに応じて6つのグループ2章から7章に分けた。なお29の話の中には魔法昔話に分類されていないものもある。
 それぞれの昔話・民話から推測される水の働きやその意味を説明した。また、対応する現実の水の性質にもふれた。
 これらの民話について新しい魅力を感じていただければ幸いである。

著者プロフィール

上平 恒  (ウエダイラ ヒサシ)  (

 1927年、秋田県生まれ。1950年、東京工業大学化学コース卒業。
 工業技術院繊維高分子材料研究所(通産省)研究員を経て、1983年、北海道大学理学部高分子学科教授。1991年に定年退職後、法政大学工学部非常勤講師(~94年)。
 現在は、著述業。工学博士。
 著書に『水とはなにか──ミクロに見たそのふるまい』(講談社ブルーバックス)『生命からみた水』(未来の生物科学シリーズ21、共立出版)など著訳書多数。

上記内容は本書刊行時のものです。