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原発に子孫の命は売れない 恩田 勝亘(著) - 七つ森書館
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原発に子孫の命は売れない (ゲンパツニシソンノイノチハウレナイ) 新装版 原発ができなかったフクシマ浪江町 (ゲンパツガデキナカッタフクシマナミエマチ)

社会科学
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発行:七つ森書館
四六判
268ページ
並製
定価 1,800 円+税   1,980 円(税込)
ISBN
978-4-8228-1139-6   COPY
ISBN 13
9784822811396   COPY
ISBN 10h
4-8228-1139-5   COPY
ISBN 10
4822811395   COPY
出版者記号
8228   COPY
Cコード
C0036  
0:一般 0:単行本 36:社会
出版社在庫情報
不明
初版年月日
2011年9月
書店発売日
登録日
2011年10月7日
最終更新日
2013年2月22日
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紹介

福島第一原発から10kmも離れていない、福島県浪江町にも原発立地計画がまいこんだが、地元住民が土地を売らないことで、原発立地を阻止した。なぜ、浪江町では原発ができなかったのか? その軌跡をたどる。

目次

はじめに──新装版にあたって/i

第1章 狙われた町
     ピースボート
     知事の野望
     吹っ飛んだ正月気分
     悪魔の囁き
     反対同盟誕生

第2章 誤 算
     もの別れ
     町長の捨てゼリフ
     戻ってきた平穏な日々
     恫喝に屈した慎重派

第3章 反転攻勢
     署名運動とデモ
     東電第一原発潜入──原発日誌(1)
     重大事故は隠される──原発日誌(2)
     三枚岩の対決

第4章 高まる圧力
     ついに離脱者が
     公聴会ボイコット
     舛倉委員長再登場
     理論武装強化

第5章 拡がる亀裂
     ピーナッツ
     南北対立
     分裂

第6章 無気味な予兆
     ダーティビジネス
     原発労働者が危ない!
     ムラサキツユクサの警告
     町一番の利口者

第7章 総力戦
     ホッキ貝ショック
     札束攻勢
     一進一退
     どんでん返し

第8章 凱 歌
     舛倉さんにツブされる!
     推進派最後のあがき
     最後の審判
     勝利宣言

対談・土地を売らなければ原発はできない──高木仁三郎・舛倉隆

あとがき
年 表

前書きなど

はじめに ── 新装版にあたって

 東京電力福島第一原発事故から早くも五か月が過ぎようとしている。当初はすべての関心が事故炉の行方に集まっていたが、筆者はいずれ大問題になるのが放射能による食品汚染、とりわけ日本人の主食である米の汚染を心配した。それというのも本書で描いたように、東北電力の浪江・小高原発計画に故・舛倉隆氏たち地元農民が反対したのは、土地を奪われるのみならず自分たちの米に「放射能米」のレッテルが貼られるのを恐れたからだ。四三年前もの彼らの判断は正しかった。舛倉氏がいまもこの世にあって、今回の事故に遭遇していたら何と言うのだろうか。
 「9・11」で象徴される二〇〇一年米同時多発テロは、従来の戦争観を一変させる「非対称戦」(米国)あるいは「超限戦」(中国)の時代を告げるものだった。あれから一〇年目、同じく世界を変えた日として「3・11」が長らく記憶されるはずだ。東日本大震災で始まった東電福島原発事故は、いまや「フクシマ」として「チェルノブイリ」同様、巨大原発事故の象徴となった。そしてチェルノブイリでも変えられなかった世界のエネルギー観を一変させつつある。今年はその旧ソ連チェルノブイリ原発事故からこれまた二五年目という節目でもある。(中略)
 フクシマの真実はまだ未解明のままだ。東電や政府が隠していることもあるが、あの強烈な放射線下では各炉の状況把握が難しいのも事実だろう。第一原発は老朽化しているうえ、先の平井氏が証言していたように手抜きやズサン工事も横行する札付き原発だった。津波前の最初の強烈な地震動により、配管の破断や亀裂、圧力容器と配管の接合部でのひび割れなどで冷却水喪失が始まっていた可能性も高い。ともあれ「隣の町にあるから同じ」という賛成派、推進派に対し、「事故の確率が増える」という舛倉氏の論理は正しい。
 そんな舛倉氏と反対同盟の闘いを振り返ると、国も地方も問わず政治家にとってはその政治的野心を満たす手段が原発であり、電力会社を頂点とする原子炉メーカーや素材メーカー、ゼネコンなどの産業界には「カネのなる木」が原発だ。そのおこぼれに預かってきたのが「官」や「学」の面々であり、片棒を担いできたのがメディアである。一言でいえば原発は欲望という負のエネルギーそのものであり、「先端科学技術の塊」というより推進者たちの「我欲の塊」と呼ぶのがふさわしい。
 A氏一家は七月、同じ会津地方の借家にやっと落着いた。ペンションの居室は二階。共有スペースの食堂や風呂場のある一階との上り下りは九二歳の母堂には辛く、そう長居は出来なかったのだ。五月の一時帰宅時、今や跡形もない南棚塩に足を踏み入れたA氏の目に映ったのは、大昔からあったという小さな社とそれを守るように立つ大木だった。それを頼りに我が家があったとおぼしき場所を歩き回ったA氏が見つけたのは、汚泥に埋まった古いアルバムの切れ端だった。
 「残ったのは数枚の写真だけ。すべては夢、うたかたです」(A氏)
 フクシマがさらなる巨大震災になるのを阻止したのはA氏らの父親、母親世代。にもかかわらずすべてを失った子孫たちはフクシマ最大の犠牲者だ。それに国や電力会社はどんな報い方をするのだろうか。

   二〇一一年八月六日

著者プロフィール

恩田 勝亘  (オンダ カツノブ)  (

1943年島根県生まれ、法政大学卒。ジャーナリスト。
1966年から70年まで週刊誌、月刊誌のフリーライター。71年より、2007年まで講談社『週刊現代』記者として、国内外の政治・経済・社会問題を取材・執筆。
原発関連では、78年の「東海大地震では原発と新幹線が一番危険」を皮切りに、評論家・内橋克人氏の連載企画「原発が来た町」(80年)のスタッフライターとして各地の原発立地地域や予定地を取材。その後も、被曝労働者問題や原発の危険性を随時取材・執筆。
86年のチェルノブイリ原発事故後は、主に放射能による食品汚染問題を提起。2006年のチェルノブイリ20年目には、世界のメディアで唯一、事故炉4号機の中央制御室に潜入。世界の被曝地帯を追うカメラマン森住卓氏による11ページのグラビアと著者による原発と地震の因果関係の記事4ページを掲載。
著書に、本書(93年)と『東京電力・帝国の暗黒』(2007年)。他に『仏教の格言』(75年、KKベストセラーズ)。共著書に『日本に君臨するもの』(97年、主婦の友社。2010年、徳間書店五次元文庫『日本を支配するフリーメーソン』として復刻)。

上記内容は本書刊行時のものです。