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ピープルの思想を紡ぐ 花崎 皋平(著) - 七つ森書館
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ピープルの思想を紡ぐ (ピープルノシソウヲツムグ)

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発行:七つ森書館
四六判
200ページ
上製
定価 2,000円+税
ISBN
978-4-8228-0615-6   COPY
ISBN 13
9784822806156   COPY
ISBN 10h
4-8228-0615-4   COPY
ISBN 10
4822806154   COPY
出版者記号
8228   COPY
Cコード
C0036  
0:一般 0:単行本 36:社会
出版社在庫情報
不明
初版年月日
2006年1月
書店発売日
登録日
2010年2月18日
最終更新日
2015年8月22日
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紹介

自民党のコイズミ政治に圧倒されて、グローバリズムの勢いに流されてしまいそうな時代に、じっくりと読みたい一冊です。9.11、イラク戦争、自民党圧勝……。内心に思いを馳せ、ピープルとして生きていくことを思索する著者が、時代の息吹を静かに語りかけます。

目次

まえがき

第Ⅰ部
第一章 現代日本のナショナリズムと宗教
第二章 現代日本の民主主義の明暗
      社会領域での漸進と国政での逆行
第三章 田中正造と現代
第四章 反グローバリゼーションの哲学のために
     カレル・コシークの思想から
第五章 「田を作る」
    地域に根ざした抵抗と創造のつながりを

第Ⅱ部
第六章 現代アイヌ民族史の素描
第七章 知里幸恵とアイヌ民族の詩人たち
第八章 『上西晴治短編全集 ポロヌイ峠』を読む

初出一覧

前書きなど

まえがき

 本書は、読んでいただければわかるように、現代日本の政治・思想・文化の状況に対するつよい違和の念に貫かれています。いたずらに声を張り上げても空しいばかりだと思いながらも、ついつい身の程を顧みず、こんな世の中には我慢できないと声高になってしまいます。
 敗戦後六〇年を経て、この国はまた脱亜入米の道を突き進んでいます。ネオリベラリズムを信奉する政治経済の運営で、社会のきずなはずたずたになり、すさんだ世相が日々報じられています。
 二〇〇六年の年賀状には、こんなことを書きました。
田中正造一九〇九年八月二四日の日記に「困苦、貧苦、節義、言行一致、主義貫徹に対する困苦艱難が…経験の度数の数十百回ニ達して、百戦百敗、その研磨に得たる自得力堅忍となりて、夫れより発動せる以上の良知良能の付合せるにあらざれバ…時勢を造る人とは云へず」とあります。この「百戦百敗」の思想こそ、今日、私たちが堅持すべき思想ではないかと思っています
 田中正造はまた、「余は、最弱を以て最強に当たるをもってよろこびとするなり」とものべています。私は、ここ三〇年ほど、田中正造を仰ぐべき先達としてきましたけれども、近年ますますかれが慕わしくなっています。人間存在の低みに向かうことこそが、もっとも豊穣な世界を知ることであるように思います。
 二〇〇五年秋に、東京で、水俣フォーラムの講座に招かれたのを機会に、石牟礼道子さんの、いま刊行中の全集をひもといていて、次のような一節に出会いました。
「もういちど自分を無にして、自分を低くして、この世で一番低いところに自分を置いて…目線を低くして…ずっと山川を見直してみる」
 もっと低みへ、という、この呼びかけに呼応したいです。
 こうした石牟礼さんや沖縄の安里清信さん、前田俊彦さんなどが考え、語り、書いた日本の民衆思想に目をこらし、ピープルをキイワードに、その潮流を活性化させることを、これからの仕事の一つとしようと思っています。そうした思想に導かれつつ、私が、いま、なにをしようとしているかは、第五章の「田を作る」を見てください。
 アイヌ民族運動への関わりも、引き続き大事にしていくつもりです。アイヌ民族の戦後史では、農地改革という戦後民主化の重要な構造改革が、アイヌにとっては差別と抑圧の上塗りであったことがわかります。敗戦後日本社会の民主化をいうとき、アイヌ民族の置かれた状態やハンセン病療養所で暮らす人びとの処遇を視野に入れないと上滑りになります。
 現代の芸術家のなかで、私がもっとも尊敬し、その作品を愛する富山妙子さんの絵で、装丁をすることを許していただけたことは望外の喜びです。
 かたい本が売れない時代です。そういう時代の中で、まして時代の進んでいる方向に逆行する私の本などを出版してくださる七つ森書館の中里さんに深く感謝します。中里英章さんとの関係は、著者と出版主という関係にとどまらず、新東京国際空港(成田空港)建設反対の三里塚農民への連帯運動、そして故高木仁三郎さんとの交友、高木さんの著作集の編集、出版など、同時代の運動と仕事を共にしてきた同志友人の関係でもありますので、親愛の念をあらたにしています。

  二〇〇六年一月
   花崎皋平

版元から一言

 いまの世の中、ちょっと変です。
 何がどのように変わったのでしょうか。
 じっくり、ゆっくり読んでいただきたい1冊です。

著者プロフィール

花崎 皋平  (ハナザキ コウヘイ)  (

1931年 東京に生まれる。哲学者。北海道小樽市在住。
北海道大学教員を経て、ベトナム反戦運動、成田空港や伊達火発、泊原発などの地域住民運動、アイヌ民族の復権運動への支援連帯運動に参加する。1989年ピープルズ・プラン21世紀国際民衆行事で世界先住民会議の運営事務局に参加。
現 在 「さっぽろ自由学校〈遊〉」、ピープルズ・プラン研究所の運営委員。
著 書 『生きる場の哲学――共感からの出発』(岩波書店、1981年)『あきらめから希望へ――生きる場からの運動』(高木仁三郎との対論、七つ森書館、1987年)『静かな大地――松浦武四郎とアイヌ民族』(岩波書店、1988年/1993年)『民衆主体への転生の思想――弱さをもって強さに挑む』(七つ森書館、1989年)『アイデンティティと共生の哲学』(筑摩書房、1993年/平凡社ライブラリー、2001年)『個人/個人を超えるもの』(岩波書店、1996年)『〈共生〉への触発――脱植民地・多文化・倫理をめぐって』(みすず書房、2002年)『〈じゃなかしゃば〉の哲学――ジェンダー・エスニシティ・エコロジー』(インパクト出版会、2002年)、ほか多数。

上記内容は本書刊行時のものです。