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ビデオ・メッセージでむすぶ アジアと日本 神 直子(著/文) - 梨の木舎
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ビデオ・メッセージでむすぶ アジアと日本 (ビデオ・メッセージデムスブアジアトニホン) わたしの戦争の伝え方 (ワシタチノセンソウノツタエカタ)

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発行:梨の木舎
A4判
縦148mm 横210mm 厚さ15mm
185ページ
並製
定価 1,700円+税
ISBN
978-4-8166-1502-3   COPY
ISBN 13
9784816615023   COPY
ISBN 10h
4-8166-1502-4   COPY
ISBN 10
4816615024   COPY
出版者記号
8166   COPY
Cコード
C0021  
0:一般 0:単行本 21:日本歴史
出版社在庫情報
在庫あり
初版年月日
2015年5月
書店発売日
登録日
2015年5月25日
最終更新日
2015年6月1日
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紹介

何かのきっかけさえあれば、人は変わり動きだす!
●20代の若者が、ライフワークとして「戦争を伝える」を選んだのはなぜか? この10年の歩み
●「過去の戦争を知り、未来のかたちを考えるきっかけをつくる」ことを掲げ、戦争体験者のメッセージを記録し続ける

目次

1章 戦後世代が、戦争の傷跡に直面
2章 ブリッジ・フォー・ピースの誕生
3章 ビデオ・メッセージの思いがけない反響
4章 BFPのコンセプトの成り立ち
5章 過去の戦争を知り、未来のかたちを考えるきっかけをつくる
6章 今の時代に大切なこと

前書きなど

はじめに
 私は、1978年に生まれました。敗戦の年は1945年ですから、30年以上がたっていました。中高生時代までは、「戦争なんて昔のこと」、「自分とは関係がない」と思って過ごしていました。将来、「戦争」と向き合い、「日本人」としてなにかをしたいと考えるようになるとは、想像さえもしていなかったことでした。年号の暗記が苦手で、歴史の成績はよくありませんでした。歴史を単なる出来事として学習していたので、そこに自分との距離を置いたり、壁をつくったりしていたのかもしれません。
 そのような教育を受けていた私にとって、歴史を自分のこととして捉えていたドイツ人の女子高生との出会いは衝撃でした。
 「私はドイツ人だと思われたくない。かつてナチスがやったことを思うと……」
そう言って、彼女は言葉を詰まらせました。
 高校生のときに留学したイギリスでのことです。欧米諸国からの留学生十数人と、日本人五人の混成クラスの授業で、先生が「自分の国に誇りを持っている?」と質問したときに、真っ先に手を挙げたのが彼女でした。自国の歴史を自分に重ねて考えたことなんて一度もなかった私にとって、彼女の発言は驚きでした。「同じ年頃なのに、なぜ感覚がこれほど違うのだろうか」と不思議でした。
 次の衝撃は、数年後の大学四年生のときでした。私は、日本の歴史を自分のこととして捉えたい、戦争の傷跡はどこまで深いのか知りたいと考えるようになっていました。青山学院大学の雨宮剛先生(現名誉教授)が主宰しているフィリピンへの体験学習のことを知り、参加することにしました。
 三週間の旅程で、仲間は七人でした。
 「日本人なんか見たくなかったのに、なんであんたたちはフィリピンに来たんだい!」
 私たちに泣きながら詰め寄ってくるおばあさんがいました。新婚当時、夫を日本兵に連行されてしまった方でした。
 自分の父親を含む家族12人を目の前で日本兵に殺された人にも出会いました。多くの遺族から直接話をきき、打ちのめされそうになりました。
 戦争被害の話を突きつけられて、私の中でなにかが大きく変わり始めました。
 これらの「生身の声」に触れたときから、日本人としての自分を強く意識するようになりました。自分のこととして歴史を少しずつ捉えられるようになっていったように思います。
 初めてフィリピンを訪問してから三年後、新潟県のある住職から、戦時中に犯した行為を悔やみながら亡くなった元日本兵がいたという話をききました。その話に私は言葉を失うほど動揺しました。戦争は被害者のみならず、加害者にも深い心の傷を残す……。初めて知った瞬間でした。このことが私を突き動かしました。
 2004年に私は、日本とフィリピンの戦争体験者の声を映像とともに記録し、日本とフィリピンで上映会を開催して、次世代につなげていくという活動を始めました。
 10年の月日が流れた現在は、「過去の戦争を知り、未来のかたちを考えるきっかけをつくる」ことを目標に掲げ、これまでに撮りためた約280人の戦争体験者のメッセージ記録を活用したワークショップを開催するとともに、フィリピンだけではなく、戦争の爪跡が残るアジア諸国との交流活動をおこなうNPO法人ブリッジ・フォー・ピース(以下BFP)を運営しています。
 100年経つと歴史は繰り返されると言います。世代が入れ替わるので記憶が風化し、同じ過ちが繰り返される一つのサイクルだと言うのです。2015年には、「終戦」時に20歳だった方は90歳、30歳だった方は100歳です。戦争体験者が一人もいなくなってしまったら、風化は避けられないでしょう。
 戦後70年目の今、自分がやってきたことを次世代のために残したい。戦争体験者の生の声はもちろんのこと、日本を取りまくアジア諸国との交流など、私たちのこれまでの取り組みを紹介することで、未来に生きる人の役に少しでも立ちたい。
 これは、戦後世代の私が、100年後、200年後、そしてその先の世代に遺したいメッセージです。「戦後」がずっと続くよう、心からの願いを込めて。
神 直子
 2015年4月

著者プロフィール

神 直子  (ジン ナオコ)  (著/文

1978年生まれ。青山学院大学文学部英米文学科卒業。一般企業人事企画本部勤務後、NPOに転職。2004年にブリッジ・フォー・ピースを立ち上げ、現在、代表理事を務める。
共著に『私たちが戦後の責任を受けとめる30の視点』(合同出版)、『未来の入会(いりあい)コミュニティ・コモン―市民がつくる地域力拠点 街を元気にする事例』(NPOメディアネットワーク)

上記内容は本書刊行時のものです。