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詩文と経世 山本 嘉孝(著) - 名古屋大学出版会
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詩文と経世 (シブントケイセイ) 幕府儒臣の十八世紀 (バクフジュシンノジュウハッセイキ)

歴史・地理
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A5判
厚さ27mm
重さ 742g
440ページ
上製
価格 6,300円+税
ISBN
978-4-8158-1043-6   COPY
ISBN 13
9784815810436   COPY
ISBN 10h
4-8158-1043-5   COPY
ISBN 10
4815810435   COPY
出版者記号
8158   COPY
Cコード
C3095  
3:専門 0:単行本 95:日本文学、評論、随筆、その他
出版社在庫情報
在庫あり
初版年月日
2021年10月20日
書店発売日
登録日
2021年9月14日
最終更新日
2021年10月20日
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紹介

江戸時代の漢詩文制作はどのように政治と結びつき、古来の言葉に何が託されたのか。これまで注目されてこなかった幕府儒臣に焦点を当て、漢詩・漢文書簡・建議などの多彩な表現を読み解くとともに、武家の学問論や民間の技芸論をも視野に入れて、近世日本における「文」の行方を問い直す。

目次

凡例

序論 近世日本における漢詩文と経世の関係
一 近世日本漢文学研究の問題点
二 近世日本における経世と儒者
三 十八世紀という時代
四 本書の構成

第一部 木門の儒臣の詩文と擬古

第一章 室鳩巣の漢文書簡
――不遇と諫言をめぐって
はじめに
一 鳩巣の書簡
二 加賀藩主への諫言
三 鳩巣の不遇意識と藩政批判
四 史書・文集に見る唐土の古人
五 朱熹の封事からの影響
おわりに

第二章 室鳩巣の和陶詩と擬古詩
――模倣・虚構・寓意
はじめに
一 鳩巣「和陶詩」の制作背景
二 徂徠以前の「擬古」
三 虚構と寓意――「擬古五首」其一を例として
四 行役詩と閨怨詩の寓意
五 盛唐詩の位置づけ――古への架け橋
おわりに

第三章 室鳩巣の辺塞詩
――「古題」詩の制作と忠臣像の形成
はじめに
一 木門における辺塞詩の題詠
二 盛唐詩の模倣と『唐詩訓解』の利用
三 『文選』所収詩と「古題」詩の寓意
四 詠史詩との関連
五 時事との関連
おわりに

第四章 新井白石・室鳩巣の中秋詩
――李白の模倣と主君の死
はじめに
一 中秋の月と李白・屈原
二 正徳三年の中秋の宴
三 鳩巣の五首連作
四 将軍家宣の死
五 白石の次韻詩
おわりに

第二部 武家の言語空間と幕府儒臣

第五章 室鳩巣の建議における候文の役割
――人材登用政策をめぐって
はじめに
一 儒者が用いた和文の文語体
二 室鳩巣『献可録』と候文
三 荻生徂徠・太宰春台との比較
おわりに

第六章 中村蘭林の詩文論
――奥儒者の朱子学修養と読書
はじめに
一 朱熹の読書法の遵守
二 室鳩巣の漢文学習法の継承――「古文辞」の重視
三 古文辞学習の汎用性
四 漢文学習法の応用――文献考証と仁斎・徂徠門下批判
五 朱子学の体得
おわりに

第七章 中村蘭林と和歌
――学問吟味の提言と平安朝の讃仰
はじめに
一 学問吟味の構想
二 平安朝の讃仰
三 和歌の吟詠
おわりに

第八章 柴野栗山と寛政六年学問吟味
――朱子学と漢文作文の奨励
はじめに
一 寛政三~五年の動向と栗山の役割
二 寛政六年二月の学問吟味
三 宝暦期『栗山上書』との対比
四 朝廷の文物へのまなざし
五 上方儒者による作文の重視と室鳩巣の思慕

第三部 諸芸の流行と経世家

第九章 祇園南海の竹枝詞
――明代古文辞説の受容と「民間」の称揚
はじめに
一 竹枝詞と盛唐詩
二 土着の風俗と擬古的作詩の交響
三 俗のなかの雅
おわりに

第十章 樫田北岸の挿花論
――袁宏道受容における諸芸と禅
はじめに
一 明末挿花論との関連――「瓶史」・「瓶花譜」
二 同時代日本の挿花指南書との関連――『千筋の麓』・『挿花稽古百首』
三 茶人批判と禅味のすすめ
四 「社」の形成
おわりに

第十一章 山本北山の技芸論
――経世家による古文辞説批判
はじめに
一 「小道」の重大性
二 技芸の当代性と教化
三 技術の精緻
四 擬古詩文批判における性霊説の利用
おわりに

第十二章 林鶴梁の文論と作文
――唐宋古文と「気」による感化
はじめに
一 読者の感化――「陳言を去る」ことの目的
二 作文の修練――暗誦と「三多の法」
三 文と生き様の連関
おわりに

結語 朝野を結ぶ儒者
一 各部のまとめと全体の総括
二 擬古の多様な形
三 日本近世漢詩文における「朝」と「野」
四 今後の課題


参考文献
あとがき
初出一覧
索引

前書きなど

十七世紀初頭から十九世紀後半まで続いた近世、すなわち江戸時代のおよそ二百六十年の内、「十八世紀」の再検討を提唱されたのは中野三敏氏である。「従来の過渡期、あるいは谷間の時期といわれた十八世紀を、もっとも近世らしく充実し成熟した時期と仮定する」ことで、「近世」すなわち江戸時代の特質をよりよく理解できる、という。歴史上の時代でも、人の一生でも、成熟ないし隆盛の時期は、初期でも後期でもなく、中期にこそ訪れる、という氏の前提はともかくとして、一つの時代について調査する上で、中期に焦点を当てる方法に価値があることは確かであろう。中期を考察すれば、否応なしに、その前後、すなわち初期と後期も視野に入れざるを得ない。本書も、十八世紀に焦点を当てることで、その前後の十七世紀と十九世紀をも含む江戸時代全体について理解を深め、一定の見通しを示すことを目指すものである。

本書の研究対象である「漢詩文」とは、現代日本語でいうところの漢詩と漢文、現代中国語でいうところの旧体詩と文言文を指す現代日本語の言葉である。江戸時代当時には、「詩文」の語が用いられ、読まれるだけでなく、……

[「序論」冒頭より/註は省略]

著者プロフィール

山本 嘉孝  (ヤマモト ヨシタカ)  (

1985年、兵庫県に生まれる。2008年、ハーヴァード大学学士課程卒業(比較文学専攻)。2016年、東京大学大学院総合文化研究科(比較文学比較文化分野)博士課程単位取得退学。大阪大学大学院文学研究科(日本文学専門分野)講師を経て、現在、国文学研究資料館研究部准教授、総合研究大学院大学准教授、博士(学術)。

上記内容は本書刊行時のものです。