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野蛮と宗教 I
エドワード・ギボンの啓蒙
原書: Barbarism and Religion, vol. 1
- 出版社在庫情報
- 在庫あり
- 初版年月日
- 2021年10月20日
- 書店発売日
- 2021年10月18日
- 登録日
- 2021年9月8日
- 最終更新日
- 2021年10月14日
受賞情報
アメリカ哲学協会ジャック・バーザン賞
紹介
ヨーロッパの文明につきまとう「野蛮と宗教」という主題。それを壮大な世界史のなかで描き上げた歴史家ギボンの生涯を軸に、多様な啓蒙思想との出会いから、『百科全書』との対決、ローマ帝国史の着想までをたどる。『マキァヴェリアン・モーメント』の著者によるもう一つの主著、ついに邦訳開始。
目次
凡例
謝辞
参照、引用、翻訳について
序 文
第I部 イングランドとスイス 1737-63年
第1章 パトニー、オクスフォード、イングランド啓蒙の問題
ギボン家、そして教会と国家の危機
スタワヘッド訪問とアングリカンの歴史叙述への冒険
オクスフォードのギボン――権威の危機
第2章 ローザンヌとアルミニウス派の啓蒙
第3章 若きギボンの再教育
――方法、不信仰、歴史への転回
第4章 ハンプシャー民兵軍と近代の問題
第5章 野営での研究
――博読と語りの探究
第II部 パリとの出会いと博学の擁護 1758-63年
第6章 英仏の啓蒙における学識の政治学
第7章 碑文・文芸アカデミーにおける博学と啓蒙
第8章 ダランベールの『百科全書序論』
――啓蒙哲学者の歴史認識
第9章 『文学研究試論』
――想像力、アイロニー、歴史
第10章 パリと文人
――経験と回想
第III部 ローザンヌとローマ、ある主題への旅 1763-64年
第11章 ローザンヌへの復帰と博学の追究
第12章 ローマへの旅と意図の変化
エピローグ ギボンと「異なるリズム」
注
訳者あとがき
参照文献
索引
前書きなど
本書は、エドワード・ギボンの『ローマ帝国衰亡史』を中心とするいくつかの研究のうち、最初に刊行されるものである。私の焦点はしばしば、かの偉大な書物の本文に置かれるだろうし(この第I巻には当てはまらないけれども)、『衰亡史』を読むのに有益だと思われる様々なテクストに置かれることもあるだろう。このように焦点を拡大するのは、十八世紀における歴史叙述と他の知的活動を描き出すことで、より大きな舞台装置のなかにギボンの歴史書と歴史家としての人生を位置づけるためである。そうすることで我々は、『衰亡史』をその時代と文化の産物として理解できるようになるだろう。二〇世紀の終わりにおいても〔本書第I巻の出版は一九九九年〕、いくつかの分野でギボンが成し遂げた業績を検証し、その評価を定めることができる専門家は存在するだろう。その場合、ギボンは彼らと同時代の同等の研究者たちと同じように扱われ、敬意を込めて批判の対象とされることもある。しかし、私がここに提出する著作は、前述のとおり別の目的をもっている。『野蛮と宗教』はローマ帝国の歴史叙述への貢献ではなく、十八世紀のヨーロッパ文化の歴史叙述への貢献を目指しているのである。
本書ができあがるまでには長い時間がかかった。その経緯をここで要約しておきたい。一つには、そうすることが、感謝すべき多くの恩義に報いるための手始めとなりうるからであるが、しかしそれ以上に、この著作の性格を読者に理解してもらうのに役立つだろうからである。この主題の書物を書くという考えが最初に思い浮かんだのは、一九七六年一月のローマのパガニカ広場においてであった。私は、アメリカ芸術科学アカデミーとエンサイクロペディア・イタリアーナが主催する会議に招待されていた。ギボンの〔『衰亡史』〕第一巻の刊行から二〇〇周年――一九七六年は多くの二〇〇周年記念の年だった――と、西ローマ帝国の最後の皇帝ロムルス・アウグストゥルスの廃位一五〇〇周年との双方を記念するための会議であった。我々はカピトリーノの丘の階段の上――そこではギボンが一七六四年の一〇月十五日に座って瞑想していたかもしれない――……
[「序文」冒頭より/注は省略]
上記内容は本書刊行時のものです。