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建設労働と移民 惠羅 さとみ(著) - 名古屋大学出版会
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建設労働と移民 (ケンセツロウドウトイミン) 日米における産業再編成と技能 (ニチベイニオケルサンギョウサイヘンセイトギノウ)

社会科学
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A5判
厚さ27mm
重さ 645g
370ページ
上製
価格 6,300円+税
ISBN
978-4-8158-1020-7   COPY
ISBN 13
9784815810207   COPY
ISBN 10h
4-8158-1020-6   COPY
ISBN 10
4815810206   COPY
出版者記号
8158   COPY
Cコード
C3036  
3:専門 0:単行本 36:社会
出版社在庫情報
在庫あり
初版年月日
2021年2月28日
書店発売日
登録日
2021年2月1日
最終更新日
2021年3月8日
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紹介

オリンピックや相次ぐ再開発を控え、高齢化と人手不足が著しい建設現場にいち早く導入されてきたベトナム人などの外国人技能実習生たち。安価な移民労働力の利用とする画一的理解をこえて、日米の比較から産業再編成と技能継承をめぐる課題に迫り、建設労働移民のグローバルな文脈を示す。

目次

序 章 なぜ日米比較なのか

第1章 建設労働の特性とマイノリティ・移民労働者
1 労働と技能をめぐる考察
2 建設労働と技能をめぐる考察
3 建設産業再編成の進展と曖昧化する労働
4 社会的結合と境界の再設定――マイノリティ・移民労働者をめぐる問題

第I編 アメリカ
第2章 クラフト労働からオープン・ショップへ
――アメリカ建設業の再編成
1 職能別労働市場の形成と労働組合運動の発展過程
2 労働者供給システムの論理と強固な組織化
3 規制緩和とオープン・ショップ拡大の論理――産業側の攻勢
小括 技能をめぐるヘゲモニー転換の構図

第3章 移民労働者の拡大と組織化
1 移民労働者拡大の構造的背景
2 インフォーマル労働市場の拡大と労働者の社会的排除
3 コミュニティにおける移民日雇労働者の組織化の実態
小括 インフォーマル領域の拡大と多様性の包摂をめぐる構図

第4章 建設労働組合運動の革新と組織化戦略
1 労働組合運動の転換と建設職種別労働組合
2 アメリカ建設労働組合運動の構図
3 大工組合UBCの革新と組織化戦略
小括 ユニオン領域におけるメンバーシップ拡大の論理と構図

第II編 日本
第5章 拡大する個人請負労働
――日本建設業の再編成
1 労使関係の基本的枠組み
2 個人請負労働の拡大(1)――大規模建築部門
3 個人請負労働の拡大(2)――小規模住宅部門
小括 個人請負労働における技能をめぐる自律性と地位

第6章 労働者不足問題と移民労働者政策
1 建設就業者の高齢化と後継者問題
2 日本の出入国管理政策と建設業における外国人労働者
3 受入をめぐる実態
小括 建設産業構造の転換期における外国人労働者拡大の含意

第7章 越境的労働市場の構築
1 建設労働者の越境的な移動の拡大とその背景
2 日本と越境的建設労働市場――日越関係を事例に
3 国内における建設労使関係の変容
小括 越境的労働市場と技能をめぐる変容

終 章 産業再編成と職人・労働者の移動
――公正で持続可能な産業社会に向けて

参考文献
あとがき
初出一覧
図表一覧
索引

前書きなど

本書は、建設分野における移民労働者の包摂と技能再生産のジレンマについて、日米比較の枠組みから論じるものである。日本の建設労働は、重層下請制度や流動的労働市場などとの関連において論じられることが多く、移民労働者についても非熟練分野への拡大という画一的な視点で捉えられる傾向にある。それに対して、本書では建設業の構造的な産業再編成という視点から、人の移動と熟練形成をめぐる中長期的な視点を提供することを目指す。

建設業は、他の経済活動を支える基盤であり、社会的インフラ整備・維持の役割を担う部門として、その存在自体を前提として議論されてきた。今日、建設労働が注目される機会が増えたのは、高齢化する日本社会において労働力不足に直面し、その持続性が危ぶまれる典型的分野であることと関係している。衣食住の一端を担う産業としての建設業が、深刻な労働力不足の危機に晒されていることは、人々の生活に潜在的な不安をもたらすものであるだろう。都市化した生活の中で、環境を改造し続ける建設施工現場において、多様なバックグラウンドをもつ人々が働くようになっていることは、いったん意識すれば日常の風景として実感できる。その一方で、それがどのような労働社会によって成り立っているのかについて認識を深める機会は少ない。

建設分野をめぐってジャーナリスティックに伝えられることといえば、たとえば、施工において発生する重大な瑕疵問題であり、東日本大震災後の復興を滞らせている労働力不足問題であり、除染や廃炉にかかわる労働をめぐる不透明な利権・搾取構造であり、開催が危ぶまれる2020年東京五輪施設建設であり、頻発する重大な労働災害事故であり、そして外国人労働者の受入促進をめぐる重点分野のひとつとしての姿である。視点を引いて見れば、産業としての……

[「序章」冒頭より]

著者プロフィール

惠羅 さとみ  (エラ サトミ)  (

2008年、一橋大学大学院社会学研究科博士課程単位取得退学。日本学術振興会特別研究員(PD、RPD)などを経て、現在、成蹊大学アジア太平洋研究センター主任研究員、博士(社会学)。

上記内容は本書刊行時のものです。