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分子地球化学 高橋 嘉夫(編) - 名古屋大学出版会
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分子地球化学 (ブンシチキュウカガク)

自然科学
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A5判
厚さ27mm
重さ 730g
444ページ
上製
価格 5,800円+税
ISBN
978-4-8158-1018-4   COPY
ISBN 13
9784815810184   COPY
ISBN 10h
4-8158-1018-4   COPY
ISBN 10
4815810184   COPY
出版者記号
8158   COPY
Cコード
C3044  
3:専門 0:単行本 44:天文・地学
出版社在庫情報
在庫あり
初版年月日
2021年2月28日
書店発売日
登録日
2021年1月18日
最終更新日
2021年3月12日
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紹介

物質循環などマクロな現象の統一的把握は、「元素の個性」に基づくミクロからのアプローチにより、初めて可能となり、その理解は地球史解読や将来の環境予測にも適用できる。本書は、熱力学モデリングやXAFS法などの研究手法の基礎と、海底鉱物資源から地球外天体までの領域における最新の成果を、系統的に解説。

目次

序 章 分子地球化学とは
――原子分子レベルから地球や環境をみるおもしろさ・重要さ
0.1 分子地球化学に向かう動機
0.2 Goldschmidtと分子地球化学
0.3 スペシエーション――元素の化学種を知る
0.4 「分子地球化学」の意義と本書の構成

第1章 元素の地球化学的分類と分子地球化学
1.1 揮発性元素と難揮発性元素――元素の宇宙化学的分類
1.2 親鉄元素――金属結合のでき易さと元素の挙動
1.3 親石元素――マントル-地殻間の元素分配とイオン結合
1.4 親銅元素――イオンのハード性・ソフト性と元素分配
1.5 イオンの水への溶解性と生物への移行
1.6 人為的な元素の再分配――資源の開発や人為的高温燃焼過程
1.7 おわりに
コラム1-1:水銀の環境化学
コラム1-2:Rayleigh分別

第I部 分子地球化学の基礎
第2章 化学熱力学
2.1 熱力学三法則と質量作用の法則
2.2 錯生成反応と溶解度
2.3 活量係数
2.4 酸化還元反応
2.5 固液界面の化学
コラム2-1:熱力学を用いたイオンの溶存状態の系統的理解

第3章 表面錯体モデリング
3.1 鉱物表面での吸着の重要性
3.2 表面電荷
3.3 溶質の吸着
3.4 おわりに

第4章 XAFS
――元素の化学種を知るツール
4.1 固相中の元素のスペシエーションとXAFS
4.2 XAFSの原理
4,3 XAFSの測定
4.4 標準的な測定例
4.5 応用的XAFS法
4.6 X線顕微鏡
4.7 おわりに
コラム4-1:正しいXAFSを得るために(ホール効果と厚み効果)

第5章 量子化学計算
――構造や反応を予測するツール
5.1 量子化学――原子分子の状態を調べる物理化学
5.2 量子化学計算の基礎
5.3 基本的な量子化学計算
5.4 量子化学計算から得られる情報と地球惑星科学との接点
5.5 量子化学計算の地球・環境化学への適用

第II部 固液界面の分子地球化学から探る地球史・環境・資源
第6章 塩湖の地球化学
――沈殿生成反応の熱力学モデリングから探る
6.1 アルカリ塩湖と水質形成モデル
6.2 アルカリ塩湖の水質レビュー
6.3 モンゴル・アルカリ塩湖にみられるモノハイドロカルサイト
6.4 モノハイドロカルサイトにおよぼすマグネシウムの役割
6.5 非晶質炭酸マグネシウムの溶解度
6.6 アルカリ塩湖におけるMHCやAMC生成の意義
6.7 おわりに

第7章 海水/鉄マンガン酸化物界面の分子地球化学
7.1 海洋の鉄マンガン酸化物と分子地球化学
7.2 海水/鉄マンガン酸化物界面でのMoWの地球化学
7.3 他のオキソアニオンにも成り立つ元素の分配-吸着構造-同位体分別の関係性
7.4 吸着構造の規定要因
7.5 陸上の微生物起源鉱物から見出す吸着反応の促進・阻害因子
7.6 固液界面から探る過去の海水組成
7.7 おわりに

第8章 粘土鉱物への金属イオンの吸着と環境・資源
8.1 福島第一原子力発電所事故で放出された放射性セシウムの挙動解析
8.2 イオン吸着型鉱床中のレアアース(REE)の特徴
8.3 粘土鉱物への陽イオンの吸着の系統性

第9章 微量元素の固液分配反応の整理
9.1 陽イオン吸着に対する水酸化鉄と層状ケイ酸塩の比較
9.2 陽イオンおよび陰イオンに対するLFER
9.3 イオンの形状の効果――ヒ素とアンチモンを例に
9.4 元素の挙動のおおまかな予測
コラム9-1:バイオマテリアルを利用したレアアースの分離・回収

第III部 生物圏・大気圏・地球外天体の分子地球化学
第10章 植物体内への元素の移行
――重金属蓄積植物の放射光分析
10.1 重金属蓄積植物と分子地球化学
10.2 ヒ素高集積植物モエジマシダ
10.3 植物体地上部の放射光分析――大気中でのin vivo測定
10.4 根の放射光分析――凍結切片法を用いた生きたままの局所分析
10.5 前葉体の放射光分析――組織構造の発達とヒ素の挙動の関係
10.6 おわりに
コラム10-1:生体中の微量元素のスペシエーション

第11章 大気成分の分子地球化学
――エアロゾルの環境影響解明
11.1 エアロゾルの環境影響と元素のスペシエーション
11.2 黄砂による酸性物質の中和効果
11.3 エアロゾルの化学状態と地球冷却効果
11.4 エアロゾル中の鉄化学種-水溶解性-同位体比と海洋への寄与
11.5 おわりに

第12章 初期火星の水質復元
――地球外惑星への分子地球化学の適用
12.1 初期火星の水
12.2 放射性廃棄物地層処分分野で開発された水質復元法
12.3 火星ゲールクレータ
12.4 火星の水質復元
12.5 復元した水質に基づく初期火星古環境の描像

第13章 太陽系氷天体
――Ocean Worldsにおける分子地球化学
13.1 外側太陽系とOcean Worlds
13.2 サポナイトが明らかにする初期太陽系の大変動
13.3 シリカが明らかにする太陽系における生命生存可能性

あとがき
巻末付表
索引

前書きなど

地球や惑星や生命は元素からできている。元素は、宇宙での核反応による元素合成ででき、それは原子核の安定性に関わる原子核物理の世界である。一方、こうして生まれた元素同士の相互作用は、電子の安定性が織りなす化学の世界であり、その相互作用の積み重ねで地球・惑星は進化し、物質循環が起き、生命が育まれた。従って、宇宙・地球の現在の物質循環の法則の解明、それに基づく宇宙・地球・生命の進化史の解明、現在の環境・資源・気候の問題とその将来予測などのテーマは、「原子核物理」×「元素間の相互作用」で説明できるはずである。地球化学の役割は、このうちの「元素間の相互作用」を物理化学の法則に従って系統的に扱うことにある。こうして集積された原子分子の相互作用の知見に基づき、全元素を周期表に従って系統的に整理して地球・惑星の物質循環を扱う分野が、この本の主題の「分子地球化学」である。

「地球化学」の定義には、色々なものがあり得る。ある場合には「化学」=「分析化学」であり、高度な手法を駆使して試料を分析することは、地球惑星科学・環境科学において重要な要素である。それはツールとしての化学の重要性に鑑みれば当然であり、化学というツールを使って、地球惑星や環境における諸問題を解明することは、地球化学の一側面としても重要である。このような「分析化学的地球化学」が転じて、比較的一般的な分析法でも、地球惑星科学・環境科学の試料を化学分析した場合、それも広義の地球化学となる。現在の地球化学では、このような研究が……

[「序章」冒頭より]

著者プロフィール

高橋 嘉夫  (タカハシ ヨシオ)  (

1968年、米国ニューヨーク州に生まれる。1997年、東京大学大学院理学系研究科化学専攻博士課程修了。広島大学大学院理学研究科地球惑星システム学専攻教授などを経て、現在、東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻教授、博士(理学)。著書、『地球化学』(共著、共立出版、2013)、『海底マンガン鉱床の地球科学』(共著、東京大学出版会、2015)他

福士 圭介  (フクシ ケイスケ)  (

金沢大学環日本海域環境研究センター教授

田中 雅人  (タナカ マサト)  (

東京大学大学院理学系研究科特任研究員

柏原 輝彦  (カシワバラ テルヒコ)  (

海洋研究開発機構 海底資源センター副主任研究員

関根 康人  (セキネ ヤスヒト)  (

東京工業大学地球生命研究所教授

板井 啓明  (イタイ タカアキ)  (

東京大学大学院理学系研究科准教授

上記内容は本書刊行時のものです。