版元ドットコム

探せる、使える、本の情報

文芸 新書 社会一般 資格・試験 ビジネス スポーツ・健康 趣味・実用 ゲーム 芸能・タレント テレビ・映画化 芸術 哲学・宗教 歴史・地理 社会科学 教育 自然科学 医学 工業・工学 コンピュータ 語学・辞事典 学参 児童図書 ヤングアダルト 全集 文庫 コミック文庫 コミックス(欠番扱) コミックス(雑誌扱) コミックス(書籍) コミックス(廉価版) ムック 雑誌 増刊 別冊
宗教文化は誰のものか 永岡 崇(著) - 名古屋大学出版会
.
詳細画像 0
【利用不可】

宗教文化は誰のものか (シュウキョウブンカハダレノモノカ) 大本弾圧事件と戦後日本 (オオモトダンアツジケントセンゴニホン)

哲学・宗教
このエントリーをはてなブックマークに追加
A5判
厚さ24mm
重さ 615g
352ページ
上製
価格 5,400円+税
ISBN
978-4-8158-1005-4   COPY
ISBN 13
9784815810054   COPY
ISBN 10h
4-8158-1005-2   COPY
ISBN 10
4815810052   COPY
出版者記号
8158   COPY
Cコード
C3014  
3:専門 0:単行本 14:宗教
出版社在庫情報
在庫あり
初版年月日
2020年10月30日
書店発売日
登録日
2020年9月16日
最終更新日
2020年10月27日
このエントリーをはてなブックマークに追加

紹介

信仰の“内か外か”を越えて――。最大の宗教弾圧事件の記憶は戦後、いかに読み直され、何を生み出してきたのか。教団による平和運動を導くとともに、アカデミアにおける「民衆宗教」像の核ともなった「邪宗門」言説の現代史から、多様な主体が交差する新たな宗教文化の捉え方を提示。

目次

凡例

序 章 大本弾圧事件の戦後
一 事件の残骸
二 〈事件〉が切りひらく世界
三 読みの運動と解釈共同体
四 協働表象が生じる場
五 結節点としての大本七十年史編纂会
六 本書の構成
七 戦前期大本の歩み

第1章 戦後大本と「いまを積み込んだ過去」――前進と捻じれの平和運動
はじめに
一 大本の平和運動をとらえるためのふたつのスケール
二 七王も八王も王が世界に在れば……
三 出口伊佐男の世界連邦主義
四 人類愛善-世界連邦運動の展開
五 人類愛善-原水禁運動のはじまり
六 出口榮二の平和思想
七 人類愛善運動とアジア主義
八 平和運動の軋み
九 破裂
おわりに

第2章 〈事件〉をめぐる対話
はじめに
一 「神さまの摂理」としての〈事件〉
二 大本邪教説の再構成
三 予備調査へ
四 〈事件〉をめぐる対話
おわりに

第3章 宗教文化は誰のものか
はじめに
一 大本七十年史編纂会の形成
二 “民衆宗教”という表象
三 教祖の人間化
四 戦争と平和
五 〈事件〉は誰のものか
六 『大本七十年史』とその後
おわりに

第4章 “民衆”の原像――出口榮二と安丸良夫
はじめに
一 アイヌへのまなざし
二 “土”の文化と縄文
三 「万教同根」とアジア主義
四 読みの運動のなかの『出口なお』
五 無意識としての神
六 筆先の「改編」
七 “民衆”の原像
おわりに

第5章 “民衆宗教”の物語の起源――教祖をめぐる欲望の系譜学
はじめに
一 新宗教研究と複数の経路
二 単層的な教祖像
三 深層への遡行
おわりに

第6章 反倫理的協働の可能性――高橋和巳『邪宗門』を読む
はじめに
一 高橋和巳の衝動とひのもと救霊会
二 ひのもと救霊会の構造
三 〈事件〉の変奏
四 協働の反倫理性
おわりに

終 章 批判的宗教文化への視角
一 “いま”を生きる大本
二 苦闘の軌跡へ
三 捻じれた連続性
四 “本質”をめぐる解釈闘争
五 戦後社会のなかの“民衆宗教”
六 分析的介入の課題


大本関連年表
あとがき
図表一覧
索引

前書きなど

一九四五年(昭和二〇)の秋、大本の聖師・出口王仁三郎は、一〇年前の弾圧事件(第二次大本事件)で壊滅させられた京都府何鹿郡綾部町の神苑跡地、そして神体山として崇められてきた本宮山に足を踏み入れた。事件後、綾部・亀岡・穴太の教団所有地は、二束三文で強圧的に“売却”させられ、綾部の神苑は何鹿郡設グラウンドへと改造されていた。当時、すでに七十代なかばとなり、高血圧症にも苦しんでいた王仁三郎は、側近の青年が運転する自転車のサイドカー(「更生車」と呼ばれていた)に乗って移動していたという。このときも更生車を使っていたが、神苑の西門にあたる場所に来ると車を降り、みずからの足で歩きだした。

グラウンドの周囲には桜の木が植えられていた。王仁三郎はその桜をすべて切り、代わりに梅と松を植えるよう「きつく」命じている。そして神苑を新たに「梅松苑」と名づけたのである。梅と松は開祖・出口なお以来の大本の象徴であり、桜はここでは弾圧の記憶、ひいては天皇制国家を象徴しているといえるだろう。王仁三郎は天皇制国家の無残な敗北、そして梅松苑の新たな出立を告知するのだ。

グラウンドを横切って、青年に尻をおされつつ本宮山に登っていく。山頂の木々を眺めながら、王仁三郎は「建……

[「序章」冒頭より]

著者プロフィール

永岡 崇  (ナガオカ タカシ)  (

1981年、奈良県に生まれる。2004年、大阪大学文学部人文学科卒業。2011年、大阪大学大学院文学研究科博士後期課程単位取得満期退学。南山宗教文化研究所研究員、日本学術振興会特別研究員などを経て、現在、駒澤大学総合教育研究部講師、博士(文学)。著書、『新宗教と総力戦――教祖以後を生きる』(名古屋大学出版会、2015年)、『日本宗教史のキーワード――近代主義を超えて』(大谷栄一・菊地暁との共編、慶應義塾大学出版会、2018年)他

上記内容は本書刊行時のものです。