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中世日本の王権神話 阿部 泰郎(著) - 名古屋大学出版会
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中世日本の王権神話 (チュウセイニホンノオウケンシンワ)

歴史・地理
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A5判
重さ 750g
452ページ
上製
価格 5,800円+税
ISBN
978-4-8158-0982-9   COPY
ISBN 13
9784815809829   COPY
ISBN 10h
4-8158-0982-8   COPY
ISBN 10
4815809828   COPY
出版者記号
8158   COPY
Cコード
C3095  
3:専門 0:単行本 95:日本文学、評論、随筆、その他
出版社在庫情報
在庫あり
初版年月日
2020年2月28日
書店発売日
登録日
2020年2月12日
最終更新日
2020年3月17日
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紹介

龍や狐、海人や童子、神仏や魔王が躍動し、神器や国土の由来を説く物語たち──。中世の権力は、自らの「正統」を示す数多の縁起説話によって支えられていた。天皇の即位儀礼から、武家の始祖伝承や幸若舞などの芸能、さらには「中世日本紀」の歴史叙述まで、豊かな王権神話の水脈を探る、永年の探究の到達点。

目次

序 章 中世王権神話テクストの諸位相
1 『旅宿問答』という扉
2 舞の本が物語る神話
3 中世王権神話の輪郭
4 即位灌頂研究の展開と課題
5 本書の構成

第I部 儀礼と王権
――即位灌頂と即位法

第1章 宝珠と王権
――中世王権と密教儀礼
1 花山院の犯し
2 舎利奉請
3 舎利/宝珠/愛染王
4 花園院の王権
5 即位法とダキニ天
6 後醍醐天皇の違乱

第2章 慈円と王権
――中世王権神話をうみだす主体
1 『六道釈』の祈りと王権
2 王を護る僧
3 玉体の夢想者
4 陰陽加持の成就
5 もたらされた回心
6 「慈童」の誕生へ

第3章 慈童の誕生
――天台即位法の成立をめぐって
1 『天台方御即位法』
2 「即位灌頂」の諸形態
3 穆王説話の展開
4 慈童説話の様相
5 法花経注釈と即位法
6 尊海の『即位法門』
7 恵心流と即位法
8 心賀の即位法
9 心賀の即位法の背景
10 中世天台の世界と慈童説話
結び――即位法が語る王権観

第II部 芸能と王権
――舞曲の世界から

第4章 辰狐と王権
――『入鹿』の成立
1 『入鹿』が投げかける課題
2 鎌足説話の諸相
3 舞曲の創造

第5章 海人と王権
――『大織冠』の成立
1 海人説話の諸相
(1)『允恭記』と彦火火出見尊神話、神功皇后神話
(2)大施太子説話と『元興寺縁起』
(3)『志度道場縁起』と能『海人』
(4)海人入海説話の世界
(5)『華厳縁起』における龍宮・龍神と道成寺縁起
(6)龍界と人界を往還遊戯する珠
2 興福寺縁起と海人説話
(1)『大鏡底容鈔』
(2)『春日秘記』
(3)『西金堂縁起』
3 珠をめぐる藤原氏の宗教伝承

第6章 八幡縁起の系譜
――『百合若大臣』の世界から
1 『百合若大臣』と中世日本紀
2 八幡神の登場
3 八幡縁起の展開と日本紀
4 大江匡房と八幡霊験譚
5 中世八幡縁起の創造

第III部 歴史と王権
――変貌する日本紀

第7章 中世日本紀と王権
――即位法と三種神器説をめぐって
1 慈円の夢
2 即位法と中世日本紀
3 釼の巻
4 宝釼の行方

第8章 日本紀の再創造
――『春秋暦』から『秋津嶋物語』へ
1 中世における「日本紀」
2 『春秋暦』とその作者
3 『秋津嶋物語』の成立と特質
4 『春秋暦』と『秋津嶋物語』の連なり

第9章 魔王との契約
――第六天魔王神話の文脈
1 第六天魔王神話の語り口
2 第六天魔王神話の地平
3 魔王との戦い――中世太子伝の文脈と王権神話

終 章 中世王権神話の水脈
1 中世王権神話の淵叢
2 二神約諾神話の場
3 中世王権神話の主体
4 縁起における中世王権神話の融合と生成


あとがき
初出一覧
図版一覧
事項索引
人名・神仏名索引

前書きなど

中世の日本のおける王権神話とは何か。『日本書紀』や『古事記』が、古代王権によって生みだされた王権神話を代表するテクストであるとすれば、中世のそれは北畠親房の『神皇正統記』であろうか。しかし、中世日本が、ひとつのテクストに集約され一元的に構築されるような王権神話を創りだしたとは言えまい。『正統記』自体が、それを読み、利用する立場に応じて改められて流布していくテクストであった。更に、『正統記』だけを特権的に王権神話として、それのみを論ずるばかりでは到底とらえることのできない、豊饒で多元的な世界が、中世にはたしかに存在していた。それらは、ただ書物として記されるだけでなく、物語や秘事口伝として説かれ、絵や図像のイメージとして描きあらわされ、また儀礼や芸能によっても演ぜられた――つまり諸位相のテクストとして中世文化の基底を支え、その先端的な発現として王権を体現する文化的所産であった。本書が探究しようとするのは、そうした、いくつもの相貌を示す、中世王権神話のテクストであり、また、それらの神話が生成し、伝承され、変容する時代と文化の様相である。
……

[「序章」冒頭より]

著者プロフィール

阿部 泰郎  (アベ ヤスロウ)  (

1953年 横浜に生まれる
1981年 大谷大学大学院文学研究科博士課程満期退学
    名古屋大学大学院人文学研究科教授等を経て
現 在 龍谷大学文学部教授、名古屋大学名誉教授・高等研究院客員教授
著 書 『湯屋の皇后』(名古屋大学出版会、1998年)
    『聖者の推参』(名古屋大学出版会、2001年)
    『中世日本の宗教テクスト体系』(名古屋大学出版会、2013年)
    『中世日本の世界像』(名古屋大学出版会、2018年)
    『守覚法親王と仁和寺御流の文献学的研究』(共編、勉誠社、1998年)
    『真福寺善本叢刊』(全24巻、共編、臨川書店、2000-11年)
    『中世禅籍叢刊』(全12巻、共編、臨川書店、2014-18年)他

上記内容は本書刊行時のものです。