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ヨーロッパ中世の想像界 池上 俊一(著) - 名古屋大学出版会
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詳細画像 0

ヨーロッパ中世の想像界

A5判
重さ 1410g
960ページ
上製
価格 9,000円+税
ISBN
978-4-8158-0979-9
Cコード
C3022
専門 単行本 外国歴史
出版社在庫情報
在庫あり
初版年月日
2020年2月28日
書店発売日
登録日
2020年1月28日
最終更新日
2020年3月6日
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書評掲載情報

2020-04-25 毎日新聞  朝刊
評者: 木村凌二(東京大学名誉教授・西洋史)

紹介

西洋中世の人々が生きた豊穣なる世界──。動植物や人間から、四大や宇宙、天使や魔女、仲間と他者、さらには楽園と煉獄まで、文学・図像・伝説・夢を彩る広大な想像界を縦横無尽に論じ、その全体構造を解明する。心性史・社会史を刷新する「イマジネールの歴史学」の集大成。

目次

序 章 想像界の歴史学
1 想像界へのアプローチ
 想像界とは何か/文学・図像・伝説・夢/研究史
2 驚異の役割
 中世知識人にとっての驚異/分類・定義の試み/キリスト教的驚異について/驚異の歴史
3 本書の概要

第I部 植物・動物・人間

1 薬効の在処――植物から人体へ
 植物薬/鉱物薬/動物と人体/癒しのイメージ/むすび
2 庭園の変容
 飼い慣らされた自然空間/庭と果樹園の現実/愛の庭/魂の救いの庭からマリアの庭へ/王の庭/むすび
3 鸚鵡と梟
 鳥たちの世界/鸚鵡/梟/図像が発信するメッセージ/むすび
4 動物観と動物イメージの変遷
 ヨーロッパ的動物観の根源/動物イメージ増殖の理由とその操作/動物のヒエラルキー/幻獣の役割/中世の動物園/むすび
5 魂の姿
神学的思弁/擬人化・身体化する魂/死後の魂と幽霊/カタリ派の教説/むすび

第II部 四大から宇宙へ

1 地――母なる大地
 アダムの身体/沃土――食物と医薬と魔力/死と腐敗のシンボル/山と洞窟の住人/揺れる大地/むすび
2 水――水浴と温泉のイマジネール
 入浴慣行の歴史/自然の水の治癒力への信仰/医学的ディスクール/快楽としての水/魂の救済と若返りの水浴/むすび
3 火――神秘と怪異の光
 神の光と地獄の業火/雷と稲妻/妖火/儀礼の火/むすび
4 風――翼に乗って
 空気と風/風の神話・伝説/風と天使と鳥の翼/翼の象徴/むすび
5 宇宙と世界の形
 ゲルマン時代/ロマネスク時代/ゴシック時代以後/王国・ヨーロッパと教会・キリスト教世界/むすび

第III部 聖と魔

1 天使の訪れ
 聖人と修道士/妖精・鳥としての天使/守護天使/天地を繋ぐ使者/神の軍勢/むすび
2 聖心崇拝
 抒情詩からアレゴリー文学へ/心臓の政治的地位の上昇/心臓の別葬/聖心への敬虔心/家・本・地図/むすび
3 魔術師ウェルギリウス
 キリストの預言者/ナポリでの魔術/ローマの驚異へ/白魔術師から黒魔術師へ/愛の虜囚/むすび
4 魔女の先駆け
 ディアナとヘロディアス/ホルダとホッレ姥/ペルヒタ/ラミアとストリガ/むすび
5 魔女のダンスとサバトの成立
 サバトの登場と定着/魔女のダンスの実態/ド・ランクルの場合/各身分におけるダンスの伝統/キリスト教とダンス/むすび

第IV部 仲間と他者、現世と異界

1 権力と権威のイメージ
 教皇/皇帝と国王/貴族と騎士/都市支配者/さかさまの世界/むすび
2 友愛の印
 友愛の裏面と儀礼/接吻/指輪(プレゼント)/血盟/誓約/むすび
3 ユダヤ人人相書
 宗教文学と美術/宗教劇/3つの嫌疑/追放と迫害の年代記/むすび
4 糸巻き棒論
 ギュナエケウムとヴェイエ/糸巻き棒と色欲/糸巻き棒の民俗/図像の中で/むすび
5 「地上の楽園」と「煉獄」
 地上の楽園の神学/インドとオリエントの幻想/西方海上の楽園/千年王国とコカーニュの国/煉獄のイメージ/死者をめぐる異教的信仰と悔悛の神学/むすび

終 章 想像界の構造とその変容
A 異教とキリスト教
B 超自然界と聖性・魔性
C 自然・宇宙と身体
D 空間と時間
E 社会の外と内
F 想像界のダイナミズム

あとがき

参考文献
図版一覧
索引

前書きなど

本書は、ヨーロッパ中世の「想像界」imaginaireの全体像を、その歴史的変容とともに明らかにすることを目指している。

ヨーロッパ中世は、ヨーロッパ世界揺籃の時代であるが、西洋文明が地球規模で広まった今では、世界文明の揺籃の地にして時代であると言い換えることも可能であろう。神聖ローマ帝国と諸王国、ローマ教皇庁とキリスト教世界、封建制と都市、騎士道と宮廷風恋愛、十字軍と百年戦争……こう並べてくると、たしかに近代以降のヨーロッパ文明は、そのすべての要素が中世に根を張り、そこに源流を有しているように思われてくる。

しかし現代の私たち、あるいは西洋人の思考様式や感覚をもって、中世人とその世界を理解しようとするとひどく道を踏み外してしまおう。現代の価値観で遡及的に過去を評価してはならないとは、どの歴史家も心得ていようが、中世人は一見すると、素朴で微笑みを誘うような単純さを持っているゆえに、簡単に、迷信深いとか、子供っぽいというような評価を下してしまう危険がある。また、アーサー王物語などに代表される文学・伝説の世界に魅了されて、現代のファンタジー作品の原点のように看做すのも、それとはまったく異なる機能をはたしていた中世のファンタジー──そもそもそう呼べるとして──を誤解する恐れが高い。

中世世界に接近する時には、「イマジネール(想像界)」という媒質の特徴を十分理解した上でなければ、彼らの……

[「序章」冒頭より]

著者プロフィール

池上 俊一  (イケガミ シュンイチ)  (

1956年 愛知県豊橋市に生まれる
1983年 東京大学大学院人文科学研究科(西洋史学専攻)博士課程中退
現 在 東京大学大学院総合文化研究科教授、博士(文学)
著訳書 『ロマネスク世界論』(名古屋大学出版会、1999年)
    『ヨーロッパ中世の宗教運動』(名古屋大学出版会、2007年)
    『中世幻想世界への招待』(河出文庫、2012年)
    『公共善の彼方に』(名古屋大学出版会、2014年、フォスコ・マライーニ賞)
    『魔女と聖女』(増補版、ちくま学芸文庫、2015年)
    『フィレンツェ』(岩波新書、2018年)
    『原典 イタリア・ルネサンス人文主義』(監修、名古屋大学出版会、2010年)
    『原典 ルネサンス自然学』(上下、監修、名古屋大学出版会、2017年)
    ジャック・ルゴフ『中世の夢』(名古屋大学出版会、1992年)他多数

上記内容は本書刊行時のものです。