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対日協力者の政治構想 関 智英(著) - 名古屋大学出版会
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対日協力者の政治構想 (タイニチキョウリョクシャノセイジコウソウ) 日中戦争とその前後 (ニッチュウセンソウトソノゼンゴ)

歴史・地理
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A5判
重さ 976g
616ページ
上製
価格 7,200円+税
ISBN
978-4-8158-0963-8   COPY
ISBN 13
9784815809638   COPY
ISBN 10h
4-8158-0963-1   COPY
ISBN 10
4815809631   COPY
出版者記号
8158   COPY
Cコード
C3022  
3:専門 0:単行本 22:外国歴史
出版社在庫情報
在庫あり
初版年月日
2019年10月10日
書店発売日
登録日
2019年8月27日
最終更新日
2022年1月12日
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受賞情報

第10回「三島海雲学術賞」

書評掲載情報

2023-11-18 東京新聞/中日新聞  朝刊
評者: 平山周吉(雑文家)
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紹介

日中戦争には、抗日と同時に、占領地における協力の側面もあった。しかし多様な協力者たちは戦後、漢奸として糾弾され、その歴史も未完の政治構想とともに葬り去られた。本書はこの影の側面に光を当て、戦争の全体像に迫るとともに、占領から始まった戦後日本に鋭い眼差しを投げかける。

目次

凡 例
地 図

緒 論
1 中国人亡命者夏文運の回想――はじめに
2 近代日中関係と日中戦争
3 19世紀末から20世紀前半にかけての中国
4 占領地政権の変遷
5 先行研究整理――「漢奸」評価の影響とその相対化
6 課題の設定と分析の方法
7 本書の構成

 第I部 様々な政治構想――日中戦争勃発前後

第1章 「冀東」の構想
 ――殷汝耕と池宗墨をめぐって――
1 ある未亡人の帰国――はじめに
2 冀東政府と日本
3 殷汝耕・池宗墨の経歴
4 「民心の趨向」を重視――冀東政府成立以前の殷汝耕の議論
5 冀東政府長官として――冀東政府成立後の殷汝耕の議論
6 教育者・実業家として――冀東政府参加以前の池宗墨の議論
7 冀東政府の理論的支柱――冀東政府以後の池宗墨の議論
8 「防共」と「聯省自治」
9 殷汝耕・池宗墨に対する議論
10 小 結

第2章 張鳴の「五族解放」「大漢国」論
1 嘉治隆一の台湾紀行――はじめに
2 日中戦争勃発以前の張鳴
3 日中開戦前後の張鳴の主張
4 小 結

第3章 呉佩孚擁立工作と日支民族会議
1 陳舜臣と司馬遼太郎――はじめに
2 盧溝橋事件の勃発と維持会の成立
3 呉佩孚とその周辺
4 3つの自治団体
5 正大社
6 日支民族会議
7 小 結

第4章 上海市大道政府と西村展蔵の大道思想
1 ネズミ講騒動と天下一家――はじめに
2 宗教家西村展蔵
3 上海市大道政府
4 政府関係者の経歴と思想
5 大道政府に対する反応
6 大道政府の終焉
7 小 結

 第II部 現実的な選択へ――日中戦争下の占領地政権

第5章 中華民国維新政府指導層の時局観
1 ある中国人亡命者の検挙――はじめに
2 維新政府とその要人
3 維新政府の議論
4 小 結

第6章 袁殊と興亜建国運動
 ――汪精衛政権成立前後の占領地の動向――
1 児玉誉士夫の日記――はじめに
2 袁殊と岩井英一
3 興建運動の人と組織
4 『興建』と袁殊の主張
5 その他のメンバーの主張
6 興建運動に対する反応
7 汪政権成立後の興建運動
8 小 結

第7章 占領地と憲政
 ――汪精衛政権の憲政実施構想――
1 火野葦平の記念写真――はじめに
2 日中戦争前の憲政実施をめぐる動き
3 占領地における憲政の議論
4 汪政権成立と憲政実施
5 憲政実施委員会での議論
6 小 結

第8章 忘れられた革命家伍澄宇と日中戦争
1 トップ女優阮玲玉の顧問辯護士――はじめに
2 アメリカでの活動
3 辛亥革命後の活動
4 帰国後の活動――政界から法曹界へ
5 日中戦争期の活動――占領地での言論活動
6 小 結

 第III部 日本敗北の中で――日米開戦から戦後へ

第9章 日中道義問答
 ――日米開戦後の占領地中国知識人――
1 45年ぶりの再会――はじめに
2 高山岩男論文の要旨
3 中国知識人の反論
4 議論の収束
5 小 結

第10章 日中戦争末期の“中国人の代辯者”吉田東祐
1 「張三李四俗人たち」への眼差し――はじめに
2 上海に渡るまで
3 上海での生活
4 対重慶和平工作への関与――姜豪工作
5 上海での活動
6 『申報』を中心とした言論活動
7 小 結――戦後の動き

第11章 戦前戦後を越える思想
 ――政論家としての胡蘭成――
1 「色・戒」――はじめに
2 胡蘭成について
3 中国での議論
4 日本亡命後の議論
5 小 結

第12章 中国人対日協力者の戦後と日本
 ――善隣友誼会設立への道――
1 「亡命天国ニッポン」――はじめに
2 亡命のパターン
3 日本の国際社会復帰と亡命者問題
4 旧軍人の請願と実態調査
5 亜東工商協会の請願
6 善隣友誼会とその活動
7 小 結

結 語
1 本書の試み
2 今後の課題――より深く広がりを持った日中関係史構築に向けて


あとがき
図表一覧
索 引

前書きなど

第二次世界大戦の敗戦から二〇年が過ぎ、戦後の混乱も過去のことになりつつあった一九六七年。日中戦争の引き金となった盧溝橋事件勃発から三十周年を記念して、一人の中国人の回想録が日本で上梓された。そこには、次のような彼の発言が載った。

今でこそ何とも思わないが、当時日本に協力した中国人が、中日事変中に日本が米、英と戦争を始めるというような無謀なことを〔すると〕知っていたなら、彼らはもとよりのこと、われわれに至るまで、誰一人として日本に協力するような中国人はいなかったであろうし、また誰も日本に近づかなかったであろう。日本の対米英開戦は、私たち中国人には夢想だにしないできごとであった。

発言の主は夏文運。戦前、大連にあった日本の国策会社興中公司に勤め、その後日本占領下の山西省で建設庁庁長などを歴任した人物である。戦後、夏文運は日本に亡命し、興中公司で社長を務めた十河信二などのつてを頼りに、国鉄総裁室嘱託などを経て、この回想録が上梓された当時は都内の百貨店で中華料理店を経営していた。……

[「緒論」冒頭より/注は省略]

著者プロフィール

関 智英  (セキ トモヒデ)  (

1977年 福岡県に生まれ、千葉県で育つ
2001年 東京大学文学部卒業
2011年 東京大学大学院人文社会系研究科博士課程満期退学
    日本学術振興会特別研究員(PD)を経て
現 在 公益財団法人東洋文庫奨励研究員、博士(文学)

上記内容は本書刊行時のものです。