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もう一つの金融システム 田中 光(著) - 名古屋大学出版会
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もう一つの金融システム (モウヒトツノキンユウシステム) 近代日本とマイクロクレジット (キンダイニホントマイクロクレジット)

社会科学
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A5判
368ページ
上製
定価 6,300円+税
ISBN
978-4-8158-0932-4   COPY
ISBN 13
9784815809324   COPY
ISBN 10h
4-8158-0932-1   COPY
ISBN 10
4815809321   COPY
出版者記号
8158   COPY
Cコード
C3033  
3:専門 0:単行本 33:経済・財政・統計
出版社在庫情報
在庫あり
初版年月日
2018年12月20日
書店発売日
登録日
2018年11月27日
最終更新日
2018年12月25日
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紹介

日本の発展を導いたのは、日銀中心の銀行システムだけではなかった。現代の郵便貯金や農協に連なる系譜をもつ「大衆資金ネットワーク」が地方経済の安定と成長に果たした役割を、資金供給の実例や制度設計から解明。見過ごされてきた半身に光を当て、経済成長の条件を問い直す意欲作。

目次

序 章 個人少額貯蓄と日本の経済発展
1 近代化を支えた大衆資金ネットワークとは
2 分析対象と研究史上の位置づけ
3 構成と手法


第Ⅰ部 集める・回す

第1章 農村在来経済の発展を支えたもの
 ―忘れられた金融インフラ―
1 はじめに
2 日本の近代化とその基盤
3 個人貯蓄による資金形成
4 日本経済における大衆資金の規模
5 小 括

第2章 郵便貯金の誕生
 ―個人少額貯蓄収集システムの形成―
1 はじめに
2 個人向け貯蓄機関の登場
 ―郵便貯金制度の成立
3 貯蓄習慣の広がり
 ―郵便貯金の普及過程
4 小 括

第3章 産業組合の形成と発展
 ―自己循環するマイクロクレジット―
1 はじめに
2 新たな少額金融の担い手
 ―産業組合と地域社会
3 和産業組合の設立
4 和産業組合の経営発展
5 その後の展開と小括

第4章 郵便貯金の地方還元
 ―再分配機構としての大蔵省預金部―
1 はじめに
2 預金部とは何か
 ―制度的起源と運用方針
3 1914年の緊急融資
 ―重要輸出産業救済融資の概観
4 救済融資の発動過程と機能
 ―長野県の事例から
5 小 括

補 論 大蔵省預金部改革
 ―巨額資金運用の諸問題と諮問委員会―
1 はじめに
2 改革以前の預金部の姿
3 大蔵省預金部資金運用委員会の役割
4 小 括


第Ⅱ部 分かち合う

第5章 恐慌・災害救済融資の拡大へ
 ―戦間期の産業組合と中央金庫の成立―
1 はじめに
2 恐慌下農村への救済資金供給
 ―大規模霜害への対応
3 長野県内における融資状況
 ―個別事例の検討
4 小 括

第6章 セーフティネットとしての産業組合
 ―産業構造的不況を越えて―
1 はじめに
2 戦間期の和産業組合をめぐる背景
3 産業組合間の連携に向けて
 ―ネットワーク形成の模索
4 長期不況下の和産業組合
5 小 括

第7章 産業組合不在の影響
 ―満洲移民の背景―
1 はじめに
2 清内路村という事例
3 恐慌からの救済に向けて
 ―中央の政策と地域社会
4 セーフティネット提供の限界と満洲移民政策
5 その後の状況と小括

第8章 戦後日本へ
 ―「もう一つの金融システム」としての郵便貯金と農協―
1 はじめに
2 統計的概観
3 制度的連続性と断絶性
 ―大蔵省預金部から資金運用部へ
4 協同組合系金融機関の展開
 ―産業組合から農協・信組へ
5 その後の展開
 ―大衆資金ネットワークと現代日本経済

終 章 近代化の淵源としてのもう一つの金融システム
 ―市場経済の荒波への防波堤―
1 社会基盤としての大衆資金ネットワークの力
2 本書の含意


参考文献
あとがき
初出一覧
図表一覧
索 引

前書きなど


金融システムが経済にとって必要不可欠なものであることは疑いを容れない。「経済の血液」たる資金の流通は日々の円滑な経済の営みに欠くべからざるものであり、一国の経済成長のためにも、一企業の日々の経営のためにも、一個人の日常のためにも、決定的な役割を果たしている。したがって、現在に至るまでに先進国、工業国として発展してきた国々は、銀行システムにせよ株式市場にせよ、何らかの形で発達した金融システムを有する。日本も例外ではない。

金融にかかわる日本の特徴として、しばしば日本人はよく貯蓄する人々であると内外から評される。実際、預金口座を持っていない日本人は現在、ほとんどいないだろう。銀行だけでなく郵便貯金口座なども含めれば、年少者であっても口座を持っていることは珍しくない。個人が複数の金融機関に口座を開くことも、現代日本社会においては一般的なことである。

これは、日本において個人が日常的に預貯金を形成すること、またそれが銀行や郵便貯金をはじめとする様々な近代的金融機関に預けられることが、社会的常識となっていることを示している。金融機関の中に預貯金が集積されているということは、それが金融システムの中で、投資資金として運用されていることを示す。日本では、貯蓄を投資とみなすマクロ経済における基礎モデルが、国内金融機関を通じて実現されているのである。
……
[「序章」冒頭より/注は省略]

著者プロフィール

田中 光  (タナカ ヒカル)  (

1983年生まれ
2013年 東京大学大学院経済学研究科博士課程修了
日本学術振興会特別研究員、東京大学大学院経済学
研究科特任助教などをへて、
現 在 神戸大学大学院経済学研究科講師

上記内容は本書刊行時のものです。