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弁論の世紀 木曽 明子(著/文) - 京都大学学術出版会
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弁論の世紀 (ベンロンノセイキ) 古代ギリシアのもう一つの戦場 (コダイギリシアノモウヒトツノセンジョウ)

歴史・地理
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4-6
310ページ
定価 2,000円+税
ISBN
978-4-8140-0433-1   COPY
ISBN 13
9784814004331   COPY
ISBN 10h
4-8140-0433-8   COPY
ISBN 10
4814004338   COPY
出版者記号
8140   COPY
Cコード
C1322  
1:教養 3:全集・双書 22:外国歴史
出版社在庫情報
在庫あり
初版年月日
2022年10月31日
書店発売日
登録日
2022年8月16日
最終更新日
2022年10月26日
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紹介

訴訟中毒といわれた古典期アテナイにおいて、法廷弁論で勝利を収めることは生きるための必須条件であった。前半では現存する私訴弁論を題材に、当時の市井の人々の生きざまを紹介する。後半では当時の有数の弁路家デモステネス、アイスキネスが、北より迫り来るマケドニアの脅威の前に反マケドニア・親マケドニアを代表し、弁論の火花を散らす。社会の縮図といわれた法廷での抗争と時代の推移とを、ときに軽妙な筆致で活写する。

目次

巻頭地図

はじめに
 走れ、法廷へ!

序 章 アテナイの民主政
    ―成熟の時
 1 不死鳥のごとく
   民会(エックレーシアーあるいはデーモス)
   民衆法廷(ディカステーリオン)
   政務審議会(ブーレー)
   アマチュア政治の思想
 2 弁論の世紀
   パレーシアー(言論の自由)
   挫折を経て
   戦火、海陸を問わず

第1章 「立替分を返せ!」(『ポリュクレスへの抗弁』)
    ―アテナイ海軍の台所は火の車
 1 ヘレスポントス海域危うし
   糧道を確保せよ
   三段櫂船奉仕
   船長アポロドロス
   エーゲ海を往復
   船員たち
   穀物商船護送任務
 2 交替役ポリュクレス
   名門の御曹司
   引継ぎ拒否?
   事前取引
 3 将軍ティモマコスの悪事
   遠征将軍の役得
   親戚の手紙
 4 アポロドロスの将軍告発
   将軍は戦場よりも法廷で命を落とす
 5 立替金返還請求の訴訟―『ポリュクレスへの抗弁』
   憂国の弁
   十一番目の弁論家アポロドロス
   アポロドロスの実像
 6 ポリス魂はどこへ?
   憎まれっ子世に憚る
   パシオンの銀行
   イソクラテスの弁論学校
   植民地復権―ケロネソス半島とアンピポリス
   ビュザンティオン、第二次海上軍事同盟から脱退
   同盟市戦争そしてアンピポリス戦争

第2章 「言いくるめられてたまるか」(『ラクリトスへの抗弁』)
    ―甦る海上交易ネットワーク
 1 海上交易再興は喫緊の課題
   同盟市戦争に敗北
   海上交易訴訟を非アテナイ人にも開放する
 2 長兄ラクリトス、妨訴抗弁に立つ
   弁論術教師が海上交易訴訟の被告に?
   妨訴抗弁とは?
   パセリス人店卸し
 3 真正史料―海上貸付け契約文書
   パセリス人二兄弟との海上貸付け契約文書
   往路の契約違反
   黒海交易事情
   復路の契約違反
   アテナイの穀物供給を守るには
 4 弁論術教師ラクリトス
   弁論術教師とは
   ラクリトスの「詭弁」
   告発の行方
   作品年代
 5 気がつけば北方に
   後進未開の国?
   マケドニア王ピリッポス二世
   アテナイ再興
   ピリッポス、テルモピュライに現われる
   オリュントスを死守せよ

第3章 「出稼ぎに行ってる間に……」(『パンタイネトスへの抗弁』)
    ―国富の源泉、ラウレイオン銀山
 1 ラウレイオン鉱脈
   大鉱床発見
   鉱山経営は請負制
   「買戻し特約つき売却」―パンタイネトスの商法
   金貸しニコブロス、黒海に……
   厄介払いに如くはなし
 2 パンタイネトス、訴訟を起こす
   パンタイネトス、二タラントンをせしめる
   次の標的は?
 3 ニコブロス、妨訴抗弁に立つ
   その告訴は法的に無効
   「訴権放棄と免責」後の提訴は無効
   アテナイにいなかったのに
   シュコパンテス(告発屋)を許すな!
   パンタイネトスの方が一枚上手?
   判定はどちらに?
 4 鉱山ビジネス
   鉱山経営者たち
   復興アテナイのあらたなライバル
 5 マケドニア王国の鉱山事業
   パンガイオン金山
   オリュントス陥落

第4章 「なんで私が?」(『エウブリデスへの抗弁』)
    ―ポリス・アテナイの市民
 1 三つの身分の共棲する社会―市民・居留外国人・奴隷
   市民
   居留外国人
   奴隷
   ポリス社会の閉鎖性
 2 「市民」となるためには
   誕生・プラトリア入籍
   市民となる
   区民名簿に名前があるかないか
 3 市民資格一斉点検
   エウクシテオス、市民権を否認される
   議事を取り仕切ったのは区長エウブリデス
   その日、区民集会で……
 4 「なんで私が……」エウクシテオスの上訴弁論
   父母ともに真正市民
   エウブリデスの悪辣さは父親譲り
   政治家エウブリデス
   ハリムス区民エウクシテオス
 5 エウクシテオスは市民? 非市民?
   出生
   貧困からの脱出
   代作者デモステネス
   他の区でも
 6 「国勢調査」
   区民名簿再確認の効用
   「国勢調査」はポリス衰退への焦りか
   ピリッポス王、第三次神聖戦争に参入

第5章 マケドニアとの和議
    ―「ピロクラテスの講和」
 1 ピリッポス王の外交戦略
   ピリッポス王の視線は?
   戦争か平和か
   デモステネス、表舞台に
   第一回対マケドニア使節
   アイスキネス登場
   マケドニア王宮にて―国王謁見
   類いまれな貴人
   エラペボリオン月一八日と一九日の臨時民会
   第二回対マケドニア使節
   デモステネス、疑念を抱く
   アイスキネスの民会報告
 2 第三回対マケドニア使節
   ピリッポス王からの出動要請
   ポキス降伏
   ポキス懲罰会議
   アンピクテュオニア神聖同盟会議の二議席をピリッポス王に
 3 「ピロクラテスの講和」成る
   講和成って人々は
   反マケドニア王国の烽火上がる

第6章 マケドニアの走狗を許すな
    ―法廷闘争、敗退、再開
 1 デモステネス、アイスキネスを告発する
   執務審査
   逆襲「演説者資格欠如」
 2 アイスキネス『ティマルコス弾劾』
   男色売買禁止法
   古代ギリシアの男性同性愛・少年愛
   アテナイ市民と男色売買
   アイスキネスの弁論術―身を乗り出して聴き入る裁判員たち
   ティマルコスの不可思議―どうしてこれまで?
   勝者アイスキネス
 3 雪辱なるか?
   反マケドニアの闘士デモステネス
   いまいましい「ピロクラテスの講和」
   呪うべきはピリッポス王の手先
   君子豹変?
   「ピロクラテスの講和」条約修正
   時こそ来たれ!
 4 デモステネス『使節職務不履行について』vsアイスキネス『使節職務不履行について』
   同じ時に同じ場所で
   竜虎相搏つ戦いやいかに
   デモステネス、くじけず
   アイスキネスに逆風
   デモステネス、繁忙を極める

第7章 カイロネイアの戦い
    ―ギリシアの自由の終焉
 1 「ピロクラテスの講和」破棄
   最後通牒
   戦時態勢へ突入
   ピリッポス、ふたたび神聖戦争の指揮をとる
 2 左翼にアテナイ、右翼にテバイ、ギリシア連合軍の奮戦は
   マケドニア軍圧勝
   勝者ピリッポスはアテナイに寛大であった
   ピリッポス、「コリントス同盟」を設立、盟主となる
 3 デモステネス、ポリス再興に献身
   戦争責任
   デモステネスへの冠授与提案は違法?

第8章 なお落日の余光きらめく
 1 アイスキネス『クテシポン弾劾』vsデモステネス『冠について』
   「冠裁判」
   クテシポン提案の違法条項三点
   民会決議案に嘘を書いてはならない
   亡国の大罪、カイロネイア戦
 2 デモステネス、畢生の大事業を再現
   あの日、エラテイアに
   デモステネス、テバイを動かす
   「アテナイの使命に殉じた戦い」
   勝負あり

終 章 ポリス・アテナイの過去・現在・未来
 1 愛国者ふたり
   政治家デモステネス
   ギリシア第一のポリス
   アテナイのほまれ
   アイスキネスの政治思想
   「コイネー・エイレーネー(共通平和)」
 2 覇者ピリッポス
   帝王の器
   ピリッポス王の人間像

おわりに―弁論、その後

謝 辞
古代ギリシア史年表
図版出典一覧
略記一覧
用語解説
参考文献一覧
索引(人名・事項)

著者プロフィール

木曽 明子  (キソ アキコ)  (著/文

大阪大学名誉教授
1936年 満州生まれ
1967年 京都大学大学院文学研究科博士課程修了
大阪大学教授、北見工業大学教授を経て2002年退職

主な著訳書
“TYRO : SOPHOCLES’ LOST PLAY” in Studies in Honour of T. B. L. Webster, Vol. I (Bristol Classical Press,1986) ; “What Happened to Deus ex Machina after Euripides?”(AbleMedia Classics Technology Center, 2004) ;(翻訳)デモステネス『弁論集2』(京都大学学術出版会、2010年)

上記内容は本書刊行時のものです。