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東ヒマラヤ 都市なき豊かさの文明 安藤 和雄(著/文 | 編集) - 京都大学学術出版会
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東ヒマラヤ 都市なき豊かさの文明 (ヒガシヒマラヤ トシナキユタカサノブンメイ)

歴史・地理
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A5判
縦216mm 横156mm 厚さ31mm
重さ 830g
560ページ
定価 6,500円+税
ISBN
978-4-8140-0273-3   COPY
ISBN 13
9784814002733   COPY
ISBN 10h
4-8140-0273-4   COPY
ISBN 10
4814002734   COPY
出版者記号
8140   COPY
Cコード
C3325  
3:専門 3:全集・双書 25:地理
出版社在庫情報
在庫あり
初版年月日
2020年3月31日
書店発売日
登録日
2020年3月3日
最終更新日
2020年4月7日
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紹介

アジアの高地は,中国やインドの低地からの文明干渉に対抗し,取り入れるべきものは取り入れながら高地の風土に応じた生業を発展させる一方で,独自の社会文化を築いている。高所特有の環境に移動し適応してきた人々の,自然利用と精神世界の特徴をあぶり出し,そこに「文明」と呼びうる制度を見る。世界の高地社会研究に資するとともに,あまたある文明論に一石を投じ,温帯・低地世界中心の文明観の問題点に鋭く迫る。

目次

口絵
はじめに――東ヒマラヤ地域研究の意義
 1 都市なき豊かさとしての農村文明
 2 もう一つの文明の定義
 3 地域単位「東ヒマラヤ」――ミッシングリグとしての東ブータンとアルナーチャル・プラデーシュ州
 4 チベットとは異なる独自な文化圏――東ヒマラヤの自然・言語と生活・農業生態
 5 本書の構成
序 章 高地文明論と農村文明論――東部ヒマラヤでの地域研究が目指すもの[安藤和雄]
 1 文明ニッチと在地ニッチ
 2 高所「文明」と呼ぶことの意味
 3 青海省での確信したアジア高地文明
 4 低地文明に外発的に意識させられた高地文明

第Ⅰ部 生業――農耕,牧畜と生態環境

第1章 「高地文明」としての東ヒマラヤ――農耕からの視点
[安藤和雄]
 1 ブラマプトラ水系がつくる東ヒマラヤ
 2 東ヒマラヤの湿潤モンスーン農耕の文化的特徴
 3 高地ネットワーク社会――ディランのモンパ・モデル
第2章 高所ヒマラヤの地勢的特徴と現代――自然災害問題から考える[宮本真二]
 1 高所の自然災害
 2 氷河湖の決壊洪水
 3 森林破壊・土地荒廃と斜面崩壊・地滑り
 4 災害と人為
第3章 ミタンの利用と高所世界――ブータンの交雑家畜の遺伝学研究から[川本 芳,タシ ドルジ,稲村哲也]  51
 1 ヒマラヤと周辺地域のウシ科動物の利用
 2 ミタンという家畜
 3 ブータンでのミタン利用
 4 ミタンの利用と起源に関する遺伝学調査
 5 牧畜文化からみたミタン交雑利用
 6 ブータンの変貌と伝統的農業の変化
第4章 焼畑から換金作物へ,そして……――東ブータン村落の農業と現状[赤松芳郎]
 1 ツァンラの住む村――調査地とその概観
 2 農業――焼畑農業から常畑換金作物栽培へ
 3 離農,離村,GNH――東ブータンの農山村の現在
 4 農村が農村として担う役割とは?
◉コラム1 アルナーチャル・プラデーシュの生業景観 [竹田晋也]
◉コラム2 乳の利用から見る東ヒマラヤの文化 [稲村哲也]
◉コラム3 東ヒマラヤの植物に魅せられて [小坂康之]

第Ⅱ部 身体――食文化と医学的特徴

第5章 健康と高地文明――ディランの医療事情とライフスタイルの変容[石本恭子]
 1 ディラン周辺の医療状況とディランヘルスセンター
 2 ディランヘルスセンターの日常
 3 メディカル・キャンプの実際とその成果
 4 生活様式から考える高所文明
第6章 ビレッジヘルスワーカーたち――ブータン王国における村の保健管理の担い手[坂本龍太]
 1 VHW導入前の保健行政の歩み
 2 VHWの設置
 3 VHWの仕組み
 4 今後の可能性
第7章 モンパ族の食事――ルブラン村に暮らす牧民の栄養調査から[木村友美]
 1 調査について
 2 ルブラン村でみられた主な料理
 3 住民の一日の栄養摂取量
 4 食塩摂取量と高血圧
 5 ルブラン村での食事と肥満,高血圧
第8章 高地生活習慣病モデルからみたモンパの高齢者[奥宮清人]
 1 アルナーチャルにおける生活スタイルの変容と生活習慣病
 2 高所生活習慣病(糖尿病・高血圧)アクセル仮説
 3 高所生活に適応した健康デザイン

第Ⅲ部 精神――高所の宗教文化

第9章 モンユルの仏教――チベット仏教圏の中のアルナーチャル・プラデーシュ州西部[奥山直司]
 1 アルナーチャル・プラデーシュの民族と宗教
 2 モンユル回廊とその住民
 3 ラセー・ツァンマ伝説とシャルモンの諸氏族
 4 モンユル仏教史の曙
 5 ニンマ派とカルマ派の進出
 6 ゲルク派の勢力扶植
 7 メラ・ラマとタワン僧院の創設
 8 ダライ・ラマ6世の誕生
 9 ディランの仏教
第10章 「森のチベット」における自然信仰の聖地[小林尚礼]
 1 なぜ「自然信仰の聖地」なのか
 2 「森のチベット」の聖地を訪ねて
 3 山へ祈る祭礼「ラーソイシー」
 4 森のチベットの魅力
第11章 モンパ民族地域に見られる「悪霊」と儀式[水野一晴]
 1 ボン(ポン)教の儀礼,祭式,ホシナ
 2 ディランモンパとリスとの関係
 3 ボン(ポン)教やチベット仏教にみられる悪霊
第12章 焼畑耕作と在来信仰[トモ リバ,安藤和雄,小坂康之]
 1 タニ・グループのドニ・ポロ信仰
 2 タニ・グループの焼畑耕作と在来信仰との関わり
 3 「多様性の中の統一」と信仰
◉コラム4 ブータンの仏教 [奧山直司]

第Ⅳ部 近代――土地利用,グローバリズムと変容

第13章 陸封された地域の「解放」[河合明宣]
 1 陸封された地域
 2 1960年代以降の社会経済及び地方行政の変化――NEFA:アルナーチャル・プラデーシュ
 3 1960年代以降の社会経済及び行政の変化―ブータン
 4 陸封された地域の今日から我々は何を学ぶか
第14章 東ヒマラヤの植生に刻まれた歴史[小坂康之]
 1 民族移動の伝承
 2 ゾウの好む果実(標高100m)
 3 野生バナナの森(標高200m~500m)
 4 水田の野草(標高1600m)
 5 コナラ(アベマキ)林の恵み(標高2000m)
 6 雲の上のお花畑(標高3000m~4000m)
 7 植生に刻まれた歴史
第15章 東部ヒマラヤにおける土地開発史[宮本真二,安藤和雄,アバニィ クマール バガバティ,ニッタノンダ デカ,トモ リバ]
 1 はじめに――ヒマラヤにおける埋没腐植土壌・炭化木片と土地開発史研究
 2 「間接的手法」によるデータ
 3 東部ヒマラヤにおける土地開発時期の地域間差異
第16章 ブータン極東部の牧民社会とその変化[稲村哲也,川本芳]
 1 調査地メラックの概要
 2 独特な家族と婚姻の形態
 3 生業のしくみ――ネパールとの比較
 4 家畜の交雑の複雑化とその背景
 5 メラックの牧畜システムと社会の変容とその背景
◉コラム5 マクマホン・ラインと東ヒマラヤ [河合明宣]
◉コラム6 東ヒマラヤ南面の森林保全と農業環境 [河合明宣]
◉コラム7 牧畜民と社会発展――ドゥンカルパ福祉協会の試み [リンチン ツェリン ドゥンカルパ,安藤和雄,小坂康之]

終章に代えて 西南シルクロードと焼畑的水田稲作からひもとくヒマラヤ東部――3次元的な地域体系研究の端緒として[安藤和雄]
 1 東ヒマラヤの地域体系を輪郭づける
 2 西南シルクロード
 3 ハニ族と棚田稲作
 4 アパタニ族の棚田の作付体系――無犂稲作と畦のシコクビエ移植栽培
 5 アパタニ族とハニ族の稲起源伝説
 6 二つのチベット=ビルマ・グループの適応戦略

あとがき
初出一覧および執筆者による謝辞
文献一覧
索引
著者紹介

著者プロフィール

安藤 和雄  (アンドウ カズオ)  (著/文 | 編集

京都大学東南アジア地域研究研究所 教授
専門分野:熱帯農学,農村開発研究,地域研究

上記内容は本書刊行時のものです。