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歌川広重の声を聴く 阿部 美香(著/文) - 京都大学学術出版会
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歌川広重の声を聴く (ウタガワヒロシゲノコエヲキク) 風景への眼差しと願い (フウケイヘノマナザシトネガイ)

芸術
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A5判
290ページ
定価 3,400円+税
ISBN
978-4-8140-0139-2   COPY
ISBN 13
9784814001392   COPY
ISBN 10h
4-8140-0139-8   COPY
ISBN 10
4814001398   COPY
出版者記号
8140   COPY
Cコード
C3370  
3:専門 3:全集・双書 70:芸術総記
出版社在庫情報
在庫あり
初版年月日
2018年4月
書店発売日
登録日
2018年3月14日
最終更新日
2021年1月14日
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受賞情報

第19回人文地理学会学会賞(学術図書部門奨励賞)受賞

書評掲載情報

2018-05-12 朝日新聞  朝刊
評者: 山室恭子(東京工業大学教授)
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紹介

江戸時代後期、社会が成熟し「開国」への胎動を感じる時期にあって、風景は大きく変わろうとしていた。現代にも通じるその時代に、北斎や広重といった風景画家が活躍したのは偶然ではない。中でも歌川広重は、絵だけでなく、自身の言葉を付した作品を残した。その『絵本江戸土産』に記された広重の言葉から、彼独特の風景観を炙り出す。広重が絵本を通じて訴えたかったことは何なのか?――そこには明るい江戸での生活だけではなく、日々の暮らしの中で見過ごされ、社会変動の中で急速に人々の手からこぼれ落ちる、「風景」をめぐる現実があった。

目次

広重の風景観から何を学べるか―はじめに
 1 広重の作品が放つ風景のイメージと、その先への一歩
 2 「風景」が意味するもの
 3 『絵本江戸土産』から広重の思いを汲み取っていく

第Ⅰ部 大都市江戸と絵師広重

第1章 空前の大都市─広重の生きた江戸のまち
 1 江戸という都市の規模と内実
  (1)首都「江戸」の成立
  (2)明暦の大火と「江戸」の拡大
  (3)人と物が集まる江戸とその賑わい
  (4)「異国」にも触れられた江戸
  (5)季節の行事を楽しむ人々
  (6)江戸の一大歓楽地―吉原と歌舞伎町
  (7)旅と出版文化の隆盛
 2 江戸時代後期とはどんな時代だったか
  (1)江戸の都市問題
  (2)「外国」が押し寄せる

コラム:過去と今を往き来する1 過去を探すと出会っていくもの

第2章 庶民の娯楽 浮世絵版画
 1 生み出された浮世絵版画―「浮世」の絵と錦絵の誕生
 2 役者絵・美人画から風景画へ
 3 名所絵の流行と広重

第3章 成熟・変動の時代と絵師 歌川広重
 1 広重誕生前夜(一七七八~一七九六頃)
 2 幼少期(一七九七~一八〇九)
 3 思春期・青年期(一八一〇~一八三〇)
 4 駆け出しの頃(一八三一~一八三八)―出世作「東海道五拾三次」
 5 円熟期・集大成期(一八三九~一八五八)―『絵本江戸土産』、「名所江戸百景」創出

第Ⅱ部 広重の風景観を言葉から探る

第4章 『絵本江戸土産』と分析の視角
 1 『絵本江戸土産』について
 2 名所案内記に関する既往研究と第Ⅱ部の分析視座
 3 〈広重自身〉の風景観に迫る

第5章 『絵本江戸土産』挿絵の構図を読む
 1 江戸の名所案内記の類型と『江戸名所図会』の位置づけ
  (1)『都名所図会』の影響
  (2)江戸に関する名所案内記の類型
 2 『絵本江戸土産』に描かれた場所―『江戸名所図会』との相違
   構図からみた五類型
 3 『絵本江戸土産』における構図の特徴

第6章 広重による「風景」とその類義語の使われ方
 1 風景と類義語の抽出
 2 広重が風景を表す際に用いた語と使用特徴
 3 広重は「風景」をどのような意味で捉えていたか

第7章 『絵本江戸土産』の文章にあらわれた広重の風景観
 1 由緒由来以外の記述に注目して考える
 2 『絵本江戸土産』で風景を評価する時、着目している点は何か
 3 場所ごとの風景評価
  (1)『土産』と『図会』で場所ごとの着目点が共通する場合
  (2)『土産』と『図会』で場所ごとの着目点に違いがある場合
 4 江戸を見つめる広重の眼

コラム:過去と今を往き来する2 「形」を残す名所のそれぞれ

第8章 『絵本江戸土産』における耕地・広野
 1 『遊歴雑記』に記される「耕地」「畑」「田園」
  (1)『遊歴雑記』とは
  (2)『遊歴雑記』における耕地・広野表現
 2 『絵本江戸土産』と『遊歴雑記』との比較
 3 広重の耕地観

第Ⅲ部 歌川広重の思いを掬い取る

第9章 広重が託した思い─『絵本江戸土産』の絵と言葉を合わせてみると
 1 「風景評価の着目点」を絵とともに解く
  (1)耕地・耕作する農夫への風流心
  (2)眺望の賞賛
  (3)遊観するに良い場所
  (4)山水美
  (5)特徴的な事物・名物
  (6)「賑わい」の風景─5つの場合
     ①行楽の場   ②遊興空間・多くの参詣者
     ③繁昌する店々   ④人々の労働の場
     ⑤流通の拠点や起点となる場所
 2 水辺の風景
  (1)描かれ続ける隅田川と江戸湾
  (2)『土産』構成上の工夫
 3 日常生活の中に見出す風景美
 4 「気がついてほしい」風景の美しさ
 5 「失ってはならない」風景

第10章 「名所江戸百景」を広重の「思い」とともに読み直す
 1 「名所江戸百景」における構図の特徴
 2 「名所江戸百景」へ『絵本江戸土産』に表された「思い」を重ねてみる
  (1)「百景」と『土産』に共通して描かれた場所
  (2)「百景」のみに描かれた場所
 3 北斎との対比、そして「堀江ねこざね」の謎
  (1)北斎の風景画との相違
  (2)「堀江ねこざね」はなぜ描かれたか

歌川広重の風景観と現代の私たち―おわりに

あとがき
初出一覧
図版一覧
索引

著者プロフィール

阿部 美香  (アベ ミカ)  (著/文

専修大学文学部助教 博士(人間・環境学)
1981年イタリア・ミラノ市生まれ。札幌市出身。京都大学大学院人間・環境学研究科 博士課程修了後,英国レスター大学研究員,同志社大学・京都三大学教養教育研究・推進機構 非常勤講師を経て,2017年より現職。歴史地理学・風景論を専門とする。主要著作・論文に『近現代の空間を読み解く』(共著翻訳書 古今書院,2017)「歌川広重『絵本江戸土産』における風景描写の特徴――『江戸名所図会』との比較を通して」(歴史地理学54-2,2012年)などがある。

上記内容は本書刊行時のものです。