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「ゆとり」批判はどうつくられたのか
世代論を解きほぐす
- 出版社在庫情報
- 在庫あり
- 初版年月日
- 2014年10月
- 書店発売日
- 2014年10月21日
- 登録日
- 2014年9月18日
- 最終更新日
- 2014年10月14日
重版情報
2刷 | 出来予定日: 2018-03-01 |
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紹介
かつて、日本社会は教育にも働き方にも「ゆとり」を強く希求したはずだった。
なぜ「ゆとり世代」は叩かれねばならなかったのか──。
長年にわたりバッシングを受け、
いまや世代論における罵倒のかたちとして定着してしまった「ゆとり」。
「ゆとり世代」批判は根拠ある正しい認識なのか。
気鋭の研究者2人が社会学と教育学の観点から
「ゆとり」言説を読み解き、多くの誤謬を明らかにする。
不毛な学力低下論争のすえに一人歩きしたネガティブ・イメージを支えたものとは?
この問題を置き去りにできない社会的な理由とは?
「ゆとり世代」による座談、著者による対談も収録。
目次
はじめに◆「ゆとり世代」と呼んでほしくない
第1章◆朝日新聞にみる「ゆとり」言説の変遷──岡本智周
■二〇一二年版PISAの報じられ方
「脱ゆとり成果」報道/「ゆとり教育」世代が受けていたPISA/何を「ゆとり」と呼んでいるのか
■八〇年代からの「ゆとり」言説
夢や理想と地続きだった「ゆとり」/「働き方を見直し、欧米なみのゆとりある暮らしを」
■求められた「ゆとりある教育」
「学校教育を見直し、子どもの生活にゆとりを」/「ゆとりのない詰め込み教育からの脱却を」/「ゆとりある教育」のあり方を問うた九〇年代
■二〇〇二年の急転換
学力低下論、総合学習、学びのすすめ/「国の競争力にかかわる問題」――産業界の懸念/紙面審議会での議論――競争原理をめぐって
■言説が実体化させた「ゆとり世代」
揺れ動いた世代の定義/モンスター新入社員という言説/「ゆとり世代にもかかわらず」――消えないレッテル
第2章◆「ゆとり」批判の政治性──岡本智周
■ラベルを上書きする試み
価値の反転と「さとり世代」/社会や時代の問題として
■世代論の虚しさ
先行世代は後続世代をネーミングする/「ゆとり」批判の特異性
■経験主義と系統主義のせめぎあい
日本の教育におけるせめぎあい/アメリカでのせめぎあい――多文化教育をめぐって
■歴史教科書にみる学習内容の実際
系統主義と「国家」の強調の連動/記述の変遷を読み解く
■教育内容の「変化」とはどのようなものか
「ゆとり教育」で内容は薄まったか/教育内容の変化をとらえる視点
座談◆「ゆとり世代」と勝手に呼ばれてしまった当事者たちのちょっと真剣な議論
いつ、どんなときに、だれから言われてきたか/いったい、なんで、くくられる?/「ゆとり教育」と大学入試のビミョーな関係/同じ量・同じ内容の教育だと安心できる?/押しつけられたものを別の言葉で語りなおす
第3章◆教育施策のコンセプトを読む──佐藤博志
■そもそも「ゆとり教育」って、なに?
ゆとり、新学力観、生きる力/九八年改訂学習指導要領をきっかけとした批判/学習指導要領、その改訂と実施
■新学力観という原石――主体的思考・判断・表現の尊重
新学力観が目指したもの/キー・コンピテンシーと新学力観
■原石に影を落とす指導要録――「関心・意欲・態度」を評価する問題点
成績評価における八九年の変更点/相対評価から絶対評価へ/「関心・意欲・態度」は評価にそぐわない
■生きる力という原石――「自立し共に生きる力」として
打ちだされた二十一世紀の「生きる力」/「生きる力」のわかりづらさ
■生きる力とゆとりの結合――スコレーとしてのゆとり
九六年中教審答申で表現された「ゆとり」とは/スコレーの意義を理論化できなかったことの弊害
■「ゆとり」の真の意味を探る――創造的・公共的経験
教育における現代のスコレーとは/「自立し共に生きる力」と「創造的・公共的経験」を
第4章◆「ゆとり教育」の正体──佐藤博志
■九八年改訂学習指導要領の特徴
「教育内容の厳選」の実際/新設された「総合的な学習の時間」/「授業時数の削減」のとらえ方
■九八年改訂学習指導要領が「ゆとり教育」と呼ばれたとき
「三つの誤解」――元文科省事務次官の発言/批判の背景にある教育観
■文科省主導の軌道修正――〇二年「学びのすすめ」と〇三年学習指導要領一部改正
大学生の学力低下論をきっかけに/最低基準とされた学習指導要領と「確かな学力」/残る疑問
■PISAショックと学力低下批判――「ゆとり教育」批判の再検討①
二つの国際調査/PISAの成績がふるわなかった理由/PISA型問題への対応で上がった成績
■若者世代の行動様式に対する批判――「ゆとり教育」批判の再検討②
行動や性質を異質ととらえる目/理不尽な批判
■「総合的な学習の時間」の二律背反――「ゆとり教育」批判の再検討③
何が問題だったのか/「総合学習」の最大の意義
■何が必要とされているのか
グローバル対応と平和主義と/学力の二極化と高度化するカリキュラムへの対応
■「世代フリー社会」に向かって
世代の枠組みを超えて/誤った言説を解体する力
対談◆佐藤博志×岡本智周「ゆとり」批判とは何だったのか、その先に何が見えてきたのか──世代の葛藤をぬけて共生社会へ
わかりやすさゆえに力をもった「ゆとり」言説/自分たちのおかれた状況を問いなおすということ/「ゆとり教育」批判の二つの方向性と社会的文脈/協力・協働のあり方とPISAの影響力/二〇二〇年の教育で何が目指されるのか/世代論をめぐって──区別と差別と共生と/多文化リテラシーと学校教育/世代の問題は共生社会への試金石
上記内容は本書刊行時のものです。