版元ドットコム

探せる、使える、本の情報

文芸 新書 社会一般 資格・試験 ビジネス スポーツ・健康 趣味・実用 ゲーム 芸能・タレント テレビ・映画化 芸術 哲学・宗教 歴史・地理 社会科学 教育 自然科学 医学 工業・工学 コンピュータ 語学・辞事典 学参 児童図書 ヤングアダルト 全集 文庫 コミック文庫 コミックス(欠番扱) コミックス(雑誌扱) コミックス(書籍) コミックス(廉価版) ムック 雑誌 増刊 別冊 ラノベ
ザ・うらたじゅん うらた じゅん(著) - 第三書館
.
詳細画像 0

ザ・うらたじゅん 全マンガ全1冊

発行:第三書館
菊変型判
632ページ
並製
価格 2,800円+税
ISBN
978-4-8074-1999-9
Cコード
C0079
一般 単行本 コミックス・劇画
出版社在庫情報
在庫あり
初版年月日
2019年12月19日
書店発売日
登録日
2019年11月11日
最終更新日
2020年4月8日
このエントリーをはてなブックマークに追加

書評掲載情報

2020-05-09 毎日新聞  朝刊
評者: 川本三郎(評論家)
2020-02-16 読売新聞  朝刊
評者: 鈴木洋仁(東洋大学研究助手、社会学者)

紹介

「不世出の、不思議な女性マンガ家」うらたじゅん。
 今年、64才で早世して、秘されていた数々の、あっと驚く、こんなマンガ・あんな作品が、やっと、遂にとうとう世に出ることになった。

「エッチな時もあれば、けだるいときもあり、ナンセンスとシュールとギャグがびみょーに混ざったりしていて、つまり何でもあるのです」(幻堂主人評)
という生涯の全作品百数十点(掲載誌1200ページ分)を無削除全面収録の全マンガ全1冊本刊行。
幻堂評曰く、「うらたじゅんのマンガを読むと、なんだか懐かしい気分になる、嬉しくもなってくる、ほのぼのともするし、せつなくなることもある」

つげ義春は「“うわばみのおキヨ”は傑作です」とのコメントを残した。

目次

桜葉の散る森
中之島の図書館で
秘密の姫君
MARUKO COME BACK
怪奇ラクダ女
カレーライス エレジー
眞夏の夜の二十面相
黑猫倶樂部
金魚釣りの日
どこかの裏庭でいつか君と
春幻夜曲
浮浪漫歩 シーサイドホテル
眠れる海の城
真夜中のわたし
あしたののべに
RANDEN
嵐々電々
ホットケーキ
発禁・櫻御前
思い出のおっちゃん
新宿泥棒神田日記
海の夜店
冬のプラネタリウム
赤い実のなる木
渡難
ーーーー,
五月の風の下
夏休みの里
河原町のジュリー
うわばみのおキヨ
淡く透明な夏休みの君
名物節穴女
浮世一夜
遠い遠い夜の音
TWINKLE
小夜時雨
バーボン横丁のフミヤ
川をのぼる魚 虹色の銃
カリンの花が咲けば
おつかい
ニライカナイの果て
キネマガーデン リンゴの唄
B29
夏の午後には
つるこちゃん
天王寺夏絵日記
病窓紀行
マドンナの宝石
冬紳士
ジャングルパレス……冬休みの城……
泊めてくれ
JUNE BIRTH DATE
ポンタのこと
ひとさらいをめぐる追想――KOTORI――
北風に恋をした少女――タンポポの伝説――
ちんちんばしら
こんにちは赤ちゃん
MILK TEA
ホワイトレター
パンツおっさん
PEARL GARDEN――夢銀幕の庭――
和束バス道中
ドキュメンタリー「おじさん」
浮かんでるよ
山羊
つうてんかく物語 きみはトレビアン‼
テレリストたち
南風
きらきら星
バクーニンとノーブラ女
風聞しもやけ女
酔いどれ風船
MAN HOLE
情人たちへ
ミルクティ
夏休み採集
Bye′……
女学生の友
あきこあきおぶるうす
1000円の巻
4コママンガ
イラスト集
マンガ同盟

解説 お花畑の向こうへ 荒木ゆずる
あとがき
年譜

版元から一言

●『週刊読書人』書評 2020年4月3日号 評者:秦 美香子(花園大学文学部准教授・漫画研究)

《一人の人間が生き、描いた世界の広がり》
~新たなうらたじゅんに、マンガ表現の面白さに出会い続ける~

 特定のテーマで行儀よくまとめられた作品集ではない。一人の人間が生き、描いた世界の広がりを見せつけることで、うらたじゅんという作家そのものを浮かび上がらせていく作品集である。

うらたじゅんとはどういう作家なのかがこの作品集を読めば簡単に見渡せる、ということではない。個々の作品のテーマは、女性の性的欲望、子ども時代の思い出、少女または少女文化、淡い恋心、(戦後の視点からの)太平洋戦争、学生文化、老いと死など、様々である。テーマに合わせて絵柄も異なっている。読み進めながら「うらたじゅんの雰囲気がだいたいわかった」と思った瞬間に、全く違うタイプの作品が登場するのだ。

正直言って、よくわからない作品もある。しかし、強く惹かれる作品に出会って、ハッとさせられたりもする。人を一瞬で理解することなど不可能であるように、この本も一気に読むのではなく、個々の作品に向き合いながら、少しずつ味わうのが良いように思う。

評者は「ポンタのこと」がとても気に入った(なおこれ以降、この作品のネタバレを含む)。他の作品とは違って、子ども向け作品のような絵柄で描かれている。「むかしむかし あるところに おじいさんと おばあさんが 住んでおりました」というモノローグから始まる、タヌキとおじいさんの出会いと別れの物語である。

ある夜、お寺から家に帰る道すがら、おじいさんはポンポコと鳴る音に気付いて後ろを振り返る。するとそこに、腹鼓を叩く小さなタヌキが立っている。おじいさんは、タヌキがぐーぐーと腹を鳴らしたので、持っていた握り飯をわけてやる。次第にタヌキはおじいさんになついていき、おじいさんもタヌキをポンタと名付けて可愛がったようだが、ある日、家までついて来たポンタの目の前で扉をピシャンと閉めてしまう。ペットとして家で飼うわけにはいかないと思ったからだ。その晩、雨戸を叩くような音が聞こえ、おじいさんはタヌキが怒って石を投げているのだと感じる。それきり、おじいさんはポンタの姿を見ていない。

タヌキは大きな目で可愛らしく描かれ、おじいさんの声かけにうなずいたり、腹鼓を叩いて答えたりする。寝るときは落ち葉でベッドを作って、「おかあたん…」と独り言をつぶやきながら眠るのだ。おじいさんの様子を描いたコマは現実的に描写されているのに、タヌキのコマは完全に絵本の世界である。

作品の最後で、不意におじいさんの孫娘に視点が移動する。孫娘がおじいさんたちを新幹線のホームで迎える様子と、大人になった孫娘が新幹線に乗る様子が簡潔に描かれる。つまり、実はそれまで描かれていたものは、孫娘が子どもの頃におじいさんからタヌキの話を聞きながら想像していた情景だったのである。

もし、この分厚い作品集を一気に読んでしまえば、おそらくこのカラクリには気付けず、単に可愛いタヌキを描いた子供向けのお話だととらえるはずだ。しかし作品にじっくり向き合えば、十二ページの短い物語の中に、過去と現在、現実と記憶と想像のイメージを織り交ぜる表現の巧みさに感心せずにはいられないと思う。きっと評者も、今後もこの本を読み返すたびに、新たなうらたじゅんに、そしてマンガ表現の面白さに出会えるような気がする。(はた・みかこ=花園大学教授・マンガ研究)

●『読売新聞』書評 2020年2月16日 評者:鈴木洋仁(社会学者、東洋大研究助手)
 
《別れ描く作家の視線》

 祖母が亡くなり、駆けつけた孫は祖父にかける言葉を見つけられない。二人の見上げる空に、星になった祖母はいるだろうか。
 この「きらきら星」という作品は、わずか11コマでいつまでも余韻を感じさせる。昨年2月に64歳で死去した女性マンガ家・うらたじゅんは、いくつもの別れを描いてきた。
 本書は、彼女の未発表を含めた80以上の作品を約600ページにわたって収める。横長の電話帳のような本なのに、手に取っていても疲れない。本の造りが優れているだけではない。やさしい絵が、悲しさと希望を読み手に同時にもたらすからだ。
 うらたは、長編ではなく、短編や中編を描き、雑誌『幻燈』に多くの作品を寄せている。その追悼号に再録された「冬のプラネタリウム」にも別れがある。
 高校生の男女は、駆け落ちめいた家出をとがめられ、大人たちに仲を裂かれる。時がたち、医者になった男は、転勤先の病院内を案内されるうちに、別れた彼女と出会う。必ずしも幸せな再会ではない。しかし、男は悲しむだけでも、自らの歩みを悔やむだけでもない。男女には、それぞれの生きた道が確かにあっただろうと思わせる。
 あるいは、小学校の門前でヒヨコや、あやしげな小物を広げる露天商を題材にする「思い出のおっちゃん」も、楽しげな展開とともに、少しの寂しさを味わえる。
 本書をまとめた作者の夫・荒木ゆずるによれば、その作品とほぼ同時期に彼女は父を病で失っている。
 うらた自らもまた、47歳の時から癌に侵された。「皮肉だが、病気と死が作品を生んだ」と荒木は記す。
 声高に何かを訴えるのではない。斜に構えるのでもない。私たちの人生は、地味だからこそ尊く、愛おしい。うらたは淡々と伝える。静かな芯の強さが真骨頂だ。
 本書は、彼女との別れではない。新しい出会いを何度でももたらす僥倖として、抱きしめたい。

●『サンデー毎日』書評 2020年2月9日号 評者:岡崎武志(フリーライター、書評家)

 うらたじゅんという女性漫画家を知らない方も多いだろう。約40年の漫画人生を、ずっとマイナーな媒体で生き、2019年2月に死去した。享年は64。
 死後に発見された漫画原稿を、初期習作も含め収録したのが『ザ・うらたじゅん 全マンガ全一冊』。当人とも親交のあった私としては感無量だ。知らなかったうらたじゅんにもたくさん会える。
 亡き父の記憶、昭和30年代大阪の子どもたち、ヒッチハイクでの放浪、安アパートの同棲など叙情とノスタルジックな私小説世界が基調だが、やがて繊細な線の描き込みが世界を押し広げていく。性と死、たんねんに描き込まれた植物や古い建物が愛おしい。どこか懐かしく夢のような作品たち。
 夫の荒木ゆずるによる「解説」は、がんの手術と闘病、そして最期を伝えて悲痛だ。「冬のプラネタリウム」で、かつての少年は死んだ少女を思い「いつかまたどこかの星でめぐり逢いたい」と言う。うらたさん、私もまた……。

著者プロフィール

うらた じゅん  (ウラタ ジュン)  (

1945年~2019年。マンガ家。
単行本に『眞夏の夜の二十面相』『赤い実のなる木』など。

https://junmilky.exblog.jp/

上記内容は本書刊行時のものです。