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アラブ古典音楽の旋法体系 飯野 りさ(著) - スタイルノート
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アラブ古典音楽の旋法体系 (アラブコテンオンガクノセンポウタイケイ) アレッポの歌謡の伝統に基づく旋法名称の記号論的解釈 (アレッポノカヨウノデントウニモトヅクセンポウメイショウノキゴウロンテキカイシャク)

芸術
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A5判
312ページ
並製
価格 3,200 円+税   3,520 円(税込)
ISBN
978-4-7998-0158-1   COPY
ISBN 13
9784799801581   COPY
ISBN 10h
4-7998-0158-9   COPY
ISBN 10
4799801589   COPY
出版者記号
7998   COPY
Cコード
C1073  
1:教養 0:単行本 73:音楽・舞踊
出版社在庫情報
在庫あり
初版年月日
2017年2月
書店発売日
登録日
2017年2月4日
最終更新日
2019年12月3日
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受賞情報

第35回田邊尚雄賞受賞

書評掲載情報

2017-04-20 アラブ  2017年春号(No.159)
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紹介

シリアの古都アレッポには、宗教歌手ムンシドたちが歌い継ぎ、町の名士たちが護ってきた歌謡の伝統があった。そこで歌い継がれてきた数々の旋律は、音楽がもたらす心理的な影響を重視するタラブ的感性でとらえられ、旋法ごとにラーストやバヤーティーなどの名称を付され分類されてきた。しかし、名称の中には旋法名だったり、小音階名だったり、さらには音名だったりするものもある。また、数も多いため、その存在は音楽学的理論研究では扱いきれずに等閑視されてきた。本書はこうした名称群の特徴やアラブ音楽に欠かすことのできないタラブ的感性、そしてそれらを護り続けてきた古都アレッポの伝統に着目して、アラブ音楽の旋法体系の基本をまずこの文化の内側からの視点で解き明かし、次にそれらを理論的に分析・考察することでこの文化の外側にいる我々にも理解可能にした待望の一冊。

目次

はじめに
凡例
図・表・譜例・図像参考資料一覧
アレッポ旧市街の略地図

序章
 ・第1節 本研究の目的および問題の所在:アラブの音文化が培った名称による旋律様式の体系
 ・第2節 先行研究群の歴史社会的背景と方法論的問題点
 ・第3節 課題と方法:音文化を重視した方法論的枠組み
 ・第4節 資料と研究手法および本論の構成

■第1部・ナガムをめぐる文化内在的枠組み
 第1章 歌謡の伝統の社会文化的構造 ー名士とムンシドから成る歌謡文化共同体
 ・はじめに
 ・第1節 ムスリム社会における歌謡の位置付け
 ・第2節 ムンシドたちと社会における活躍の場
 ・第3節 名士の庇護と中庭式邸宅におけるサフラ
 ・第4節 実践者たちの自己認識:敬意と尊敬の念に値する技芸の徒
 ・おわりに
 第2章 音楽の情緒的体験 ータラブの文化内在的構造
 ・はじめに
 ・第1節 古典歌謡文化におけるタラブ
 ・第2節 タラブの意味構造:情緒を重視する文化的概念
 ・第3節 情緒を感じさせる旋律としてのナガム
 ・おわりに
 第3章 実践者の音楽知 ー記号としてのナガム体系
 ・はじめに
 ・第1節 音声と記憶に基づく稽古
 ・第2節 技芸の伝授を支える伝承の系譜
 ・第3節 響きに名前を付ける:音高名としての名称
 ・第4節 響きと情緒的記憶を結ぶ記号としての名称
 ・おわりに

■第2部・旋法の名称とその音楽学的機能
 第4章 一音の響きとしての名称 ー旋律の開始部と支配音の概念
 ・はじめに
 ・第1節 文化内在的認識から音楽学的理解へ
 ・第2節 一音の響き:旋律の開始部と支配音としての名称
 ・第3節 アレッポの実践と『会議の書』における旋法分類の整合性
 ・おわりに
 第5章狭旋律の響きとしての名称ー核音と小音階
 ・はじめに
 ・第1節 小音階(ジンス)の音楽学的定義:核音とジンスの関係
 ・第2節 小音階と支配音による狭旋律:名称を持つ小音階の音楽学的機能
 ・第3節 旋律的響きとしての小音階(1):テトラコード型(バヤーティー旋法タイプ)
 ・第4節 旋律的響きとしての小音階(2):トリコード型(スィーカー旋法タイプ)
 ・第5節 響きを左右する旋律の方向性:ペンタコード型(ラースト旋法タイプ)
 ・おわりに
 第6章 名称を付与されている旋律と名称の記号論
 ・はじめに
 ・第1節 旋律行程の概念と歌謡形式に見られる共通した特徴
 ・第2節 一般的な旋律行程と二つの構成単位AとB:低・中音域から始まる旋律の例
 ・第3節 旋法名が付与されている支配的響き:高音域から始まる旋律の例
 ・第4節 「名称旋律」と新古典歌謡の事例
 ・おわりに
 終章

用語集
基本旋法リスト
参考文献
参考録音資料(DVDを含む)
索引

前書きなど

 本書は、2016年2月末に東京大学大学院総合文化研究科から学位が授与された博士論文『アラブ古典音楽の旋法体系に関する考察ーアレッポの歌謡の伝統に基づく旋法名称の記号論的解釈ー』に若干の修正を加え、出版用に体裁を整えて印刷に付したものである。博士論文として執筆されたため、アラブ音楽の紹介書や入門書の類でないことをまず断っておきたい。そうした向きに興味のおありの方には、近く刊行予定の『やさしいアラブ音楽入門(仮題)』を手に取って頂きたいと思う。本書は入門書の執筆以前に行われた、アラブ音楽の旋法体系を理解するためになされた試行錯誤の産物である。
 今日の日本で我々が慣れ親しんでいる和声に基づく音楽とは異なり、アラブの伝統的な音楽は旋法音楽である。旋法とは英語でmode というが、アラブ音楽では、より正確にはmelodic modeすなわち旋律様式と言われ、その様式感の違いから諸旋法にはそれぞれに名前、すなわち名称がついている。今日では理論的には譜面を使って説明するものの、この体系はもっぱら口伝で発達してきた。そこで、まずは時間を若干巻き戻し、言葉も含めた文化的背景から説き起こして考察を始め、さらに音楽学的に議論し詳解しているのが本書である。
 それを可能にしてくれたのが、シリアの古都アレッポの歌謡の伝統であった。歌手サバーフ・ファフリーらの活躍によりアラブ世界でも知られてきたが、元々は、日々の暮らしの中で、また慶事の際に、そしてスーフィーの修行場で当然のごとく歌い継がれ、この都市の生活に根差してきた伝統である。歌は歌い継がれ、必要な知識は受け継がれてきたが、言葉の文法が当事者たちには必ずしもつまびらかにされないように、この歌謡の伝統に関わる、特に旋法体系に関わる知識や決まりごとも理路整然とは説明されない、そのようなことに筆者はフィールドワークの現場であったアレッポで耳を傾けた。その結果が本書であるとも言える。整然とは語られない知識や体系をいかに説明するのか、フィールドワークを一通り終えた後に残った課題はフィールドワークと同様に複雑で難儀であったが、ここに一つの成果が残り、安堵しているというのが現在の心境である。
 ここに至るまでの調査・研究および執筆には、アレッポ、日本、そして世界各地で多くの方々の協力と助言を得た。すべての方々の名前を挙げ心からの謝意を表したいが、その数はあまりにも多い。そこで、ここではその中でも最も重要かつ不可欠な存在であったムハンマド・カドリー・ダラール氏の名前のみを挙げることでお許し願いたい。同氏はアレッポの旧市街ハディード門街区で生まれ育った生粋のアレッポ人で、今日、アレッポを代表するウード奏者でかつ、かの地に伝わる伝承歌謡の膨大なレパートリーを記憶する歌の師匠でもある。同氏から筆者はもっぱら伝承歌謡を学んだが、その知識量の膨大さと国内外での演奏活動経験の豊富さに基づく氏の教えは、稽古の枠をこえて本論文に多大な貢献をしている。アレッポでも、そして世界のどこにいても、惜しみなく多くを与えてくれた同氏に最大限の感謝を捧げる。

版元から一言

本書は、シリアの古都アレッポに残る歌謡の伝統を基にして、アラブ古典音楽の旋法体系の基本を分析・考察している研究書です。
旋法とは簡単に言うとその音楽で使われる独自の音階やその使われ方などのことです。アラブ古典音楽の様々な旋法には、ラーストやバヤーティー、ヒジャーズなどの名称があり、その種類もとても多いそうです。また、名称の中には旋法名だったり、小音階名だったり、さらには音名だったりするものもあって大変に複雑。音楽学的理論研究では扱いきれずにその存在について言及されることはほとんど無かったと言われています。
本書ではこうした名称群の記号的性質に着目し、まずは、その性質や特徴にこの文化の内側から迫り、そこから理論研究にも役立てることでこれまで理論上曖昧であった部分にも切り込んでいます。
本書は二部構成で、第一部でこの名称群を育んだ伝統における内在的構造を考察しながら名称群の役割に関する理解を深め、第二部でその音楽学的な理論分析を行っています。相互参照的な議論が、この文化の外側にいる我々にもこの伝統文化の内側を垣間見させてくれることでしょう。
アレッポで伝承歌謡のレパートリー保持者から直に歌の伝承指導を受け、さらに歌を伴うスーフィーの儀礼(ズィクル)に参加するなど、現地での調査研究研鑽を積み重ねてきた著者ならではの視点で、アラブ音楽の旋法体系を理論的に分析・考察したものです。

著者プロフィール

飯野 りさ  (イイノ リサ)  (

日本学術振興会特別研究員(PD)地域文化研究(音楽)
最終学歴:東京大学大学院総合文化研究科単位修得満期退学
学位:博士(学術)

追記

2018年5月、東洋音楽学会より、第35回田邊尚雄賞を受賞しました。

上記内容は本書刊行時のものです。