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性的虐待を犯した少年たち
ボーイズ・クリニックの治療記録
- 初版年月日
- 2020年4月
- 書店発売日
- 2020年4月20日
- 登録日
- 2020年3月18日
- 最終更新日
- 2020年4月4日
紹介
本書のタイトルを見て、違和感を抱く方がいらっしゃるかもしれません。未成年の性犯罪者に対して「治療」を行うという考え方が、日本では一般的ではないからです。本書の舞台であるスウェーデンをはじめとした欧米諸国では、未成年性犯罪者に心理療法を通じた治療を行う機会が幅広く設けられています。
そうした治療機関の代表格であるスウェーデンのボーイズ・クリニックは、30年前に国際NGO「セーブ・ザ・チルドレン世界連盟」のメンバー団体「レッダ・バーネン」内に設立されました。設立当初は性的虐待の被害者少年を対象とした治療を行っていました。性的虐待の被害者に男子が多く含まれるにもかかわらず、彼らが回復するための治療機会が十分に提供されていなかったからです。
1998年、ボーイズ・クリニックは加害少年も治療の対象とするようになります。加害行為に及んだ少年たちへの治療を通じて、当人自身の回復と、新たな被害者を生み出す危険の回避を目指したのです。本書は、このボーイズ・クリニックで長年にわたり性的虐待の被害・加害少年の治療に取り組んできた三名の心理療法士が、自らの臨床経験を踏まえつつ、幼き性犯罪者となった少年に対する治療状況と支援に関する課題を、一般読者向けに詳説したものです。
近年、日本国内においても少年院向け「性非行防止指導プログラム」が開発・実施されるなど、「矯正教育」の取り組みが進んでいますが、出所後も治療を継続し、かつ社会復帰を支援するような仕組みはまだ確立されていません。若年性加害者の処遇に関心をもつ方々、心理療法職に従事し、性加害少年と日々向き合っておられる方々に本書が届くことを願っています。(みはら・れいこ 長崎大学教員/比較教育社会学)
上記内容は本書刊行時のものです。