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写真記録・三島由紀夫が書かなかった近江絹糸人権争議 本田一成(著/文) - 新評論
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写真記録・三島由紀夫が書かなかった近江絹糸人権争議 (シャシンキロクミシマユキオガカカナカッタオウミケンシジンケンソウギ) 絹とクミアイ (キヌトクミアイ)

歴史・地理
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発行:新評論
A5判
256ページ
定価 2,400円+税
ISBN
978-4-7948-1118-9   COPY
ISBN 13
9784794811189   COPY
ISBN 10h
4-7948-1118-7   COPY
ISBN 10
4794811187   COPY
出版者記号
7948   COPY
Cコード
C0021  
0:一般 0:単行本 21:日本歴史
出版社在庫情報
不明
初版年月日
2019年2月
書店発売日
登録日
2019年1月8日
最終更新日
2019年1月28日
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書評掲載情報

2019-05-04 朝日新聞  朝刊
評者: 斎藤美奈子(文芸評論家)
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紹介

 昭和29(1954)年、106日間に及ぶ日本最大級の労働争議「近江絹糸人権争議」が発生し、国民の目を釘付けにした。その10年後、三島由紀夫がこの争議を題材とする長編小説『絹と明察』を世に出している。ところが、関係者に取材をしたはずの三島、なぜか争議の詳細を作品に書き込まなかった。
 集団就職で工場に勤めた中卒労働者たちと本社の一流大卒エリートたちが見事に一致団結して経営者に立ち向かったこの比類なき争議を詳しく調べていくと、実に興味深い人間と社会の実相が浮かび上がってくる。労働組合を一貫して敵視し続けた経営者。やがて自殺者まで出るに至る凄絶な緊張感。会社側に肩入れする不可解な警察の介入。解放されたはずの若者たちを襲った「もう一つの争議」等々、そこにはいくつもの特異性と謎がある。
 この争議について記した文献のほとんどは彦根工場における活動を中心に描いているが、実は大阪、大垣、富士宮、東京など各地同時多発の全国規模の争議であった。また、一口に争議といっても、ストライキ、ロックアウト、ピケッティング、乱闘、セスナ機からのビラまき、製品ボイコット、不当労働行為、オルグ合戦、募金活動、銀行や省庁への陳情、政治家の動員、真相発表会、裁判闘争などなど、労使双方が多様な戦術を繰り広げ、マスコミ、警察、暴力団、国会すらも巻き込む総力戦であった。そして各地の現場には、仲間を守って闘い抜いたヒーローたちがいた。
 争議を経験した若者たちもいまや80歳を超えている。筆者は存命のヒーローたちにお会いして、当時の写真を前に心ゆくまで語ってもらった。するとお話を聞くうちに、写真の中から被写体が飛び出してきて、この事件の謎を解きはじめた!――まるでタイムスリップである。
 争議勃発から65年が経過し、平成が終わりつつある現在、働く人びとや経営者が本書を読んで(見て)何を感じるか、ぜひ知りたい。そして、叶うことなら200点を超える未公開写真を掲載した本書を、三島に見せびらかしてやりたい。(ほんだ・かずなり)

著者プロフィール

本田一成  (ホンダカズナリ)  (著/文

國學院大學経済学部教授。博士(経営学)。人的資源管理論、労使関係論専攻。日本商業学会優秀賞、日本労務学会学術賞など受賞作多数。「働くこと」についてオーソドックスな実証研究を続けながら、本書のような型破りの手法にも挑戦。著書に『オルグ!オルグ!オルグ!』など。

上記内容は本書刊行時のものです。