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バットマンの死 遠藤 徹(著/文) - 新評論
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バットマンの死 ポスト9・11のアメリカ社会とスーパーヒーロー

発行:新評論
四六判
272ページ
定価 2,400円+税
ISBN
9784794810908
Cコード
C0036
一般 単行本 社会
出版社在庫情報
不明
書店発売日
登録日
2018年3月6日
最終更新日
2018年5月31日
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紹介

 映画『バットマン ビギンズ』(クリストファー・ノーラン監督による〈ダークナイト・トリロジー〉の第一作)では、バットマンことブルース・ウェインが、幼いころ目の前で両親を殺された体験が描かれる。理不尽な暴力によって大切なものをいきなり奪われてしまったのである。この体験がもとでウェインは、突然両親がいなくなるという虚無感、犯人が別の事件で死亡したことによる怒りの対象の喪失といった、解消しようのない苦悩、あるいは衝動を抱え込むことになる。
 そうした内部に鬱積した「向けるべき対象」のない苦悩、あるいは衝動を解放する手段として選ばれたのが、かつて自分を恐怖させたコウモリという表象へと自らを置き換える、あるいは分裂させることだった。かくして“暗鬱なヒーロー”バットマンが誕生する。
 他の選択肢がなかったという意味で、バットマンは呪われているともいえる。だから、彼の物語にはスーパーマンのような能天気さはない。なぜなら、バットマンとは、内なる苦悩、あるいは衝動を解放するための経路にすぎないのであり、極端にいえば自分が「正義」を行っているかどうかはもはや関係ないからである。
 そのことは、ポスト9・11のアメリカ社会の状況とみごとにリンクしているのではないだろうか? 突如襲いかかってきた無差別テロという理不尽な暴力。これに対し、アメリカは即座に自らを「被害者」と位置付けた。そして、国民の抱えこんだ恐怖や苦悩、あるいは「向けるべき対象」の見えない衝動を、明確な「加害者」の幻像を捏造することによって解放した。それが対テロ戦争だったと読むこともできるように思われる。
 それは、苦悩せる呪われたヒーロー像が、苦悩せる呪われた国家の隠喩となった瞬間だったのではないだろうか。(えんどう・とおる)

著者プロフィール

遠藤 徹  (エンドウトオル)  (著/文

同志社大学グローバル地域文化学部教授。「モンスター」「プラスチック」といったユニークな切り口から英米文学・文化研究を行なっている。また近年は作家としても知られ、「姉飼」で日本ホラー小説大賞を受賞、「麝香猫」で川端康成文学賞候補に選出された。

上記内容は本書刊行時のものです。