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東日本大震災と地域産業復興 Ⅲ
2012.8.31~2013.9.11 「人と暮らしと仕事」の未来
- 書店発売日
- 2013年12月16日
- 登録日
- 2015年8月13日
- 最終更新日
- 2015年8月13日
紹介
東日本大震災の被災後一年半を過ぎたころから、「真新しい水産加工工場」や「仮設の商店街」が被災地で目立ち始めた。投資額の四分の三を補助する「グループ補助金」によるものや、無償で提供された事業用仮設施設である。
他方で、復旧、復興へ向けた歩みにおける津波被災地と原発避難区域との格差、さらに、原発避難区域における南北の格差が痛感される。さらに、震災以前からすでに人口減少、高齢地域であった被災地では、雇用の不安から若者の多くは流出していく。年配者たちは「若者のいないまちは死滅する」と呟いている。復旧、復興、帰還といった流れの中で、雇用(就業)の場の形成は、まちの将来にかかっているようである。
この点、「地域産業」には大きく三つの役割がある。すなわち、「地域に所得をもたらす」「地域に雇用の場を提供していく」、そして「地域の人びとの生活を支える」ことであろう。人は仕事をすることによって社会に参加し、自分の存在感を確認していくことができる。
当面、市街地の再生、恒久住宅の建設が急がれている。それと同時に地域の産業の復旧、復興、そして新たな創造は、その後の地域の存続に関わってこよう。日本全体が世界にも例がないスピードで人口減少、高齢化に向かっている。復旧、復興に向かう被災地においてこそ、新たな可能性を切り開いていくことが期待される。
本書では、広大に拡がる被災地の中から、七市町の地域産業を取り上げた。いずれの地域でも、新たな事業に果敢に踏み込もうとしている事業者に出会うことができた。特に、若い後継者世代の台頭が興味深いものであった。彼らは一様に、「地域の再建は自分たちがやる」と気持ちを引き締めていた。そのような若者たちが新たな活動に踏み込み、新たな価値を創造し、東日本沿岸の復旧、復興に向かう人びとに「希望」と「勇気」をもたらしていくことを期待したい。
上記内容は本書刊行時のものです。