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出版者情報
怒りの時代
世界を覆い続ける憤怒の近現代史
- 初版年月日
- 2021年3月29日
- 書店発売日
- 2021年3月24日
- 登録日
- 2021年2月26日
- 最終更新日
- 2021年3月1日
書評掲載情報
2021-05-08 |
日本経済新聞
朝刊 評者: 山下範久(立命館大学教授) |
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紹介
戦争、革命、テロ、暴動、レイシズム、イスラム排斥――
世界はつねに「怒り」に覆われてきた。
18世紀の啓蒙時代・革命の時代から帝国主義、植民地、世界大戦、
そして大衆運動、無差別テロにいたるまでを、
数多の思想家、文芸家、活動家等の言説や証言をもとに詳細に検証。
進歩の旗を振る富裕層と、歴史・民族・信仰を武器に
それを否定する層との衝突と闘争が、
欧州諸国間から植民地化された非西洋世界へ、
そしてリベラリズムとそれに対抗する勢力、
ナショナリズム、ポピュリズムの拡散が止まない現在へと連綿とつながっていく。
この果てしない怒りの連鎖の深淵には何があるのか?
先の見通せない今こそ必読の書!
<目次より>
1 忘れ去られた連鎖――プロローグ
2 空間を広げる――歴史の勝者と彼らの幻想
3 他者を通じてなんじを愛すこと――進歩と進歩に宿る矛盾
4 信仰の喪失――イスラム、世俗主義、そして革命
5 信仰をふたたびこの手に――解き放たれたナショナリズム、救世主へのまなざし
Ⅰ 解き放たれたナショナリズム
Ⅱ 救世主へのまなざし
6 真の自由と平等を求めて――ニヒリズムの遺産
7 現実を見つける――エピローグ
目次
1 忘れ去られた連鎖――プロローグ
ヒトラーとムッソリーニが学んだ流儀
グローバリゼーションとインターネット
聖戦、ホーリーウォー、ジハード
世界に拡散していくルサンチマン
西欧化への無邪気な信仰
民主主義を支える基盤の危機
反ユダヤ主義、イスラム恐怖症、スケープゴート探し
歴史を終わらせ、歴史を超越する
無限の自由のなれの果て
ニーチェの信奉者たち
アングロアメリカへの反発
2 空間を広げる――歴史の勝者と彼らの幻想
普遍的な進化の道という信仰
自由市場と民主主義の勝利と矛盾
危険と怒りに満ちた場所
進化の代償として支払われたもの
フランス革命と産業革命
理性で武装した人間が神に置き換わる
宗教とは無縁の新しい階級
進歩とは上位者が授けるもの
啓蒙思想に抗う者たち
近代化の落伍者たちの憤懣
ドストエフスキーの激しい怒り
西欧の仲間入りを果たすこと
自分とは異なる他者を敵に定める
3 他者を通じてなんじを愛すこと――進歩と進歩に宿る矛盾
ヴォルテールのユートピア
力ある者をねたみ、真似をする
恵まれずないがしろにされる存在
自己愛と自己利益をめぐる永遠の対立
ヴォルテールの専制君主礼賛
エカテリーナ二世と啓蒙思想家
抽象的な理屈を好み、現実とは無縁の日々を送る
世界市民主義に抗う民族主義
被害者意識を扇情的に訴える
4 信仰の喪失――イスラム、世俗主義、そして革命
近代が背負っている宿命
西欧の模倣がもたらした代償
「近代」対「その敵」という思い込み
「西洋と東洋」、「文明の衝突」
ひげ面とカミソリ
人間を「文明化する」ということ
野蛮な胴体と近代という頭部
体制と大衆のはざまの「知識階級」
西洋を模倣し、引き裂かれる者たち
母国を捨てて西洋へ旅立つ
その地ならではの文化
暴政の空白を埋めるホメイニー
大衆による聖なる反乱
迷宮にまよい込むアイデンティティー
5 信仰をふたたびこの手に――解き放たれたナショナリズム、救世主へのまなざし
Ⅰ 解き放たれたナショナリズム
顕彰される暗殺者
ナショナリズムを掲げる国家の偶像化
「市場の魔術」が社会を均質化する
怒れる若きナショナリストの群れ
ドイツ精神を体現するものを求めて
フランスの人工的な洗練とドイツ固有の精神
父祖神話の探求
革命への情熱が幻滅へと変わる
近代の病理に対抗するドイツ・ロマン派
精神を政治化させる
フランス人への燃えさかる憎悪
進歩へのあせりといら立ち
「神」にかわりしもの
神格化されるナポレオン
マルクスと「人類の歴史の発展法則」
非難すべき「他者」としてのユダヤ
ワーグナーとナショナリズム
「民族精神」に浸り続けるドイツ人
Ⅱ 救世主へのまなざし
ポーランド独立の詩人
亡国の文学者たち
ナショナリズムの司祭、マッツィーニ
「行為によるプロパガンダ」
超国家主義と帝国主義
社会進化論が用意した全体主義への道
優秀な人種が劣った人種を支配する
「虚偽と不均衡」を見抜いたニーチェ
「超人」にいたる道
生か、さもなければ死
戦争とは「道徳を育む者」である
上海とカルカッタのマッツィーニの心酔者
植民地インドの怒れる者たち
ヒンドゥー教徒にふさわしい敵
ガンディーの「罪深い」非暴力
「ヒンドゥー王国を軍国化せよ」
絶対的な指導者への幻想
国民の自尊心を満たすもの
敵を作り出すマスメディア、大衆文化
現実離れした国家神話の再生
6 真の自由と平等を求めて――ニヒリズムの遺産
連邦政府ビル爆破実行犯の煩悶
一匹狼たちのルサンチマン
罪なき人たちを殺すことについて
さまざまな組織を結びつけてきたアナーキズム
君主政治でも貴族政治でも、まして民主政治でもない
意志とは無縁の「末人」たち
すべてが灰燼に帰したのち、ようやく平和が訪れる
「地下室」から見た世界
やむことのない暗殺、爆弾テロ
地下室から現れてきた者たち
7 現実を見つける――エピローグ
硬直した政治ととりとめのない反逆
歴史はふたたびもとの位置に戻る
内なる世界の戦争
「不毛な興奮」に向かう近代的個人
手に負えないほどの自由の重み
「不安定な労働者」たち
力と欺瞞のもとで成り立つ秩序
上記内容は本書刊行時のものです。