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出版者情報
21世紀の啓蒙 上
理性、科学、ヒューマニズム、進歩
- 初版年月日
- 2019年12月20日
- 書店発売日
- 2019年12月18日
- 登録日
- 2019年10月8日
- 最終更新日
- 2019年12月10日
書評掲載情報
2020-02-01 | 日本経済新聞 朝刊 |
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紹介
世界は決して、暗黒に向かってなどいない。
食糧事情から平和、人々の知能まで、多くの領域が啓蒙の理念と実践により改善されてきたことをデータで提示。
ポピュリズムと二極化の時代の今こそ、この事実を評価すべきと説く。
“世界は良くなり続けている。たとえ、いつもはそんなふうに思えないとしても。
スティーブン・ピンカーのように、大局的な視点から世界の姿を我々に見せてくれる
聡明な思想家がいてくれることを、私は嬉しく思う。
『21世紀の啓蒙』は、ピンカーの最高傑作であるのはもちろんのこと、
私の生涯の愛読書となる、新しい一冊だ。“
――ビル・ゲイツ
啓蒙主義の理念――理性、科学、ヒューマニズム、進歩――は、
今、かつてない大きな成功を収め、人類に繁栄をもたらしている。
多くの人は認識していないが、世界中から貧困も、飢餓も、戦争も、暴力も減り、
人々は健康・長寿になり、知能さえも向上して、安全な社会に生きている。
どれも人類が啓蒙主義の理念を実践してきた成果だ。
にもかかわらず、啓蒙主義の理念は、今、かつてないほど援護を必要としている。
右派も左派も悲観主義に陥って進歩を否定、科学の軽視が横行し、
理性的な意見より党派性を帯びた主張が声高に叫ばれている。
ポピュリズムと二極化、反知性主義の時代の今こそ、啓蒙主義の理念は、
新しく、現代の言葉で語り直される必要がある。
つまり、現代ならではの説得力を持った新しい言葉、「データ」「エビデンス」によって――。
知の巨人ピンカーが驚くべき明晰さで綴る、希望の書。
<内容より>
序文
第一部 啓蒙主義とは何か
第一章 啓蒙のモットー「知る勇気をもて」
第二章 人間を理解する鍵「エントロピー」「進化」「情報」
第三章 西洋を二分する反啓蒙主義
第二部 進歩
第四章 世にはびこる進歩恐怖症
第五章 寿命は大きく延びている
第六章 健康の改善と医学の進歩
第七章 人口が増えても食糧事情は改善
第八章 富が増大し貧困は減少した
第九章 不平等は本当の問題ではない
第一〇章 環境問題は解決できる問題だ
第一一章 世界はさらに平和になった
第一二章 世界はいかにして安全になったか
第一三章 テロリズムへの過剰反応
第一四章 民主化を進歩といえる理由
第一五章 偏見・差別の減少と平等の権利
原 注
目次
序文
第一部 啓蒙主義とは何か
人が生きる意味と、啓蒙主義の理念
啓蒙主義の理念は今こそ擁護を必要としている
啓蒙主義の理念は繰り返し語られねばならない
第一章 啓蒙のモットー「知る勇気をもて」
啓蒙とは何か。啓蒙主義とは何か
「理性」とは本来、交渉や駆け引きとは無縁のもの
「科学」による無知と迷信からの脱却
感覚をもつ者への共感が「ヒューマニズム」を支持する
啓蒙主義の「進歩」の理念とは何か
いかに富は創造され、「繁栄」が実現するか
「平和」は実現不可能なものではない
第二章 人間を理解する鍵「エントロピー」「進化」「情報」
人間を理解する第一の鍵「エントロピー」
人間を理解する第二の鍵「進化」
人間を理解する第三の鍵「情報」
三つの鍵で人類は呪術的世界観を葬った
認知力と規範・制度が、人間の不完全さを補う
第三章 西洋を二分する反啓蒙主義
西洋生まれの啓蒙主義を批判したのも西洋
現在もなお続くロマン主義による抵抗
所属する集合体の栄光を優先する人々
進歩あるいは平和を批判する衰退主義
科学批判による反啓蒙主義
第二部 進歩
第四章 世にはびこる進歩恐怖症
世界が良くなっていることを認めない人々
ニュースと認知バイアスが誤った悲観的世界観を生む
世界を正しく認識するには「数えること」が大事
前著『暴力の人類史』への反論の典型
過去の進歩の実績を認識することはなぜ重要か
悪いことを想像するほうが簡単なのはなぜか
知識人とメディアが過度な悲観論に傾く理由
事実、世界は目を瞠る進歩を遂げてきた
第五章 寿命は大きく延びている
平均寿命は世界的に延びている
乳幼児死亡率と妊産婦死亡率は著しく低下
長生きする人も増加、健康寿命も延びている
寿命が延びることに文句をつける人たち
第六章 健康の改善と医学の進歩
医学の進歩が一つずつ問題を解決してきた
疾病制圧の功労者たちを忘れてはならない
今も感染症根絶の努力が続けられている
第七章 人口が増えても食糧事情は改善
飢餓は長いあいだ当たり前の出来事だった
急激な人口増加でも飢餓率は減少した
科学技術の進歩がマルサス人口論を無効化した
農業の技術革新は不当に攻撃されている
二〇世紀の飢餓の最大要因は共産主義と政府の無策
第八章 富が増大し貧困は減少した
世界総生産は二〇〇年でほぼ一〇〇倍に
実は総生産の増大以上に我々は豊かになった
貧困からの大脱出を可能にした三大イノベーション
「極度の貧困」にある人の比率も絶対数も減少
「毛沢東の死」が象徴する三つの貧困削減要因
グローバル化が貧しかった国を豊かにした
科学技術の発展がより良い生活をより安く実現
第九章 不平等は本当の問題ではない
不平等は過度に注目され問題視されている
所得格差は幸福を左右する基本要素ではない
「不平等が悪を生む」という考えは間違っている
不平等と不公正を混同してはならない
経済発展に伴い格差はどう推移するか
二〇世紀以降の格差縮小の最大要因は戦争
資本主義経済の発展とともに社会移転は増えた
先進国の空洞化した中間層とエレファントカーブ
エレファントカーブは事態を過大に見せている
先進国の下位層・下位中間層も生活は向上した
「中間層の空洞化」という誤解が生じる理由
実はアメリカの貧困は撲滅されつつある
優先課題は経済成長、次はベーシック・インカム
所得格差は人類の後退の証拠ではない
第一〇章 環境問題は解決できる問題だ
環境問題の事実を科学的に認めることが必要
半宗教的イデオロギー「グリーニズム」の誤り
グリーニズムの黙示録的予言はすべてはずれた
さまざまな面で地球環境は改善されている
生活や生産活動の高密度化・脱物質化が重要
間違いなく憂慮すべき事態にある「気候変動」
気候変動予想に人々はどう反応してきたか
自己犠牲の精神ではこの問題が解決しない理由
解決のため途上国に犠牲を強いるのは間違い
世界の「脱炭素化」はこれまでも進んできた
「カーボンプライシング」が脱炭素化の第一の鍵
脱炭素化の第二の鍵は原子力発電
脱炭素化はエネルギー技術の進歩にかかっている
大気中の二酸化炭素を減少させるにはどうするか
「気候工学」の手法も条件付きでは使っていい
悲観的にならず解決する方法を模索し実行する
第一一章 世界はさらに平和になった
『暴力の人類史』刊行以降、暴力は増加したか
長期的な戦死率の減少傾向は続いている
多くの内戦が終結、難民数も虐殺規模も縮小
国際的商取引と国益重視が戦争を遠ざけた
戦争を違法とする国際合意の功績は大きい
ロマン主義的軍国主義の価値観から脱却
かつての軍国主義を勢いづけた反啓蒙主義
第一二章 世界はいかにして安全になったか
事件・事故を低減する努力は軽視されがち
「国家の統治」「商取引」は殺人を減少させる
「根本原因の解決なしに暴力減少は無理」の噓
「世界の殺人発生率を今後三〇年で半減」は可能
殺人発生率を半減させるための方法
自動車事故による死亡率は六〇年で六分の一に
歩行者の死亡事故も大きく減少してきた
火事・転落・溺死の減少率も非常に大きい
薬物過剰摂取事故による死者は増えている
かつて「進歩の代償」とされた労働災害も減少
地震・噴火・台風などの被害緩和策も効果発揮
事故も殺人も減らせる。その減少にもっと感謝を
第一三章 テロリズムへの過剰反応
テロの危険は非常に過大評価されている
テロによる死者の大半は内戦地域に集中している
テロの目的は注目を集めること。実際は無力だ
テロへの恐怖は、世界が安全である証しでもある
第一四章 民主化を進歩といえる理由
民主化を進歩の証しと見なせるのはなぜか
「世界の民主化は後退している」という悲観論の噓
選挙こそ民主主義の本質、というわけでもない
民主主義とは国民が非暴力的に政権を替えられること
国家による人権侵害は徐々に減っている
国家による究極の暴力行使、死刑の減少
アメリカにおいても死刑は消滅前夜にある
第一五章 偏見・差別の減少と平等の権利
平等の権利獲得の輝かしい歴史は忘れられがち
ネット検索の履歴データに表れた偏見減少の趨勢
アメリカのヘイトクライムは減少傾向にある
西洋以外の国々でも偏見と差別は減っている
現代化が進むと「解放的な価値観」が根づく
「先進国の価値観は保守化している」の噓
先進国以外の国々も価値観は解放的になった
アメリカでは子どもの虐待やいじめは減少
世界の児童労働の比率は減少、教育機会は拡大
原 注
上記内容は本書刊行時のものです。