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出版者情報
西郷隆盛はなぜ犬を連れているのか
西郷どん愛犬史
- 書店発売日
- 2017年12月19日
- 登録日
- 2017年11月28日
- 最終更新日
- 2017年12月16日
書評掲載情報
2018-03-18 | 毎日新聞 朝刊 |
2018-02-10 |
日本経済新聞
朝刊 評者: 水原紫苑(歌人) |
2018-01-07 |
朝日新聞
朝刊 評者: ペリー荻野(コラムニスト) |
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紹介
上野公園の西郷隆盛の銅像が犬を連れていることから、
「西郷といえば、犬」というイメージは、一般によく知られている。
だが、西郷が「異常なほどの犬好き」であったことは、あまり知られていない。
幕末京都の祇園の茶屋で、伊藤博文、木戸孝允などの長州勢が
夜中まで芸者をはべらせ、歓を尽くす中、
西郷ひとりは、芸者には目もくれず、愛犬と鰻飯。食べ終えたら、即帰宅。犬にしか興味がないのだ。
また、戊辰戦争のさなかに、ささっと鹿児島に帰り、犬を引き連れ、狩り、温泉ざんまい。
明治7年には、鹿児島・指宿(いぶすき)の鰻温泉に犬13匹を連れて、温泉旅行(犬最多記録)。
そして、西南戦争には、あろうことか、犬連れ出陣。
熊本、宮崎と撤退を続け、味方の兵士が次々と銃弾に倒れていく中、
西郷は相も変わらず、犬を連れ、狩りにいそしんでいた。
なぜそれほどまでに、犬から離れられなかったのか──
西郷は、維新最大の立役者であるにもかかわらず、
明治政府の中で、目立った仕事をしていない。
明治6年の征韓論争に敗れ、鹿児島に帰った後の動きも、あまり知られていない。
そして、なぜ西南戦争を起こしてしまったのかも、あまり知られていない。
多くの謎に包まれた男なのである。
西郷本は世の中にあまたあれど、西郷の人格を尊ぶものなどが中心で、
「西郷の謎」を真に明らかにした本は、見当たらない。
西郷とは何者か、それは、彼の業績を追っても見えてはこない。
彼がこよなく愛した犬との歩みをたどってこそ、西郷が見えてくるのである。
西郷は犬と一緒にいるとき、素の自分でいられた。
犬との歩みから、
西郷が「その時、何を思っていたのか」が鮮明に見えてくるのである。
本書の著者、仁科邦男氏は
犬関連史料の収集を40年も続けている、唯一無二の「犬の歴史家」である。
初の一般書「犬の伊勢参り」(平凡社新書)で脚光を浴び、
弊社刊「犬たちの明治維新 ポチの誕生」でもヒットを飛ばした。
その著者の最新刊が、
本書「西郷隆盛はなぜ犬を連れているのか 西郷どん愛犬史」である。
あまたある西郷本とは一線を画す、
西郷の「こころ」に肉迫できる希有な書である。
目次
はじめに
戦い終わって犬三匹
第一章
犬と生きる喜びを知った奄美大島時代
1 藩の圧政に心痛める
幕府の追及を恐れ「けとう人の島」へ
薩摩藩の資金源──奄美の黒砂糖
2 犬連れ猟で気晴らし
猪狩りで失敗続き
歓喜の桜田門外の変
3 犬との生活
奄美の犬たちの食料
アマミノクロウサギ狩り
犬を連れて、いざ鹿児島へ
第二章
犬と成した幕末維新
1 貧しかった西郷家
犬二匹と二百両の借金
西郷家の財産事情
2 坂本龍馬は犬を見たか
龍馬と犬と、西郷邸の雨漏り
京都西郷邸の犬と、寺田屋の犬
龍馬夫妻、西郷の狩り場に新婚旅行
3 犬連れの京都、祇園
西郷はなぜ大久保を狩りに誘ったか
祗園の茶屋に連れて行ったのは、蘭犬「寅」か
西郷をもてなした名妓は「君竜」か「君尾」か
4 戊辰戦争期の西郷と犬
「度量が狭い」か「太っ腹」か、食い違う西郷評
戊辰戦争をよそに鹿児島で長湯治
坊主頭で犬連れ温泉旅行
廃仏毀釈したらどうなるか、犬連れで下調査
第三章
明治初年、
犬と狩りと温泉ざんまい
1 日当山温泉に家族旅行
奄美に残してきた菊次郎と菊子を引き取る
家族、親類、犬と大温泉旅行
2 犬連れの狩人、西郷隆盛
狩りを通じて庶民にとけ込む
優秀な猟犬が欲しくてたまらない
3 犬に食わせるための鰻の蒲焼
仰天の高額紙幣を黙って置いていく
児孫のために美田を買わず
第四章
官職を辞し、
故郷で犬との日々
1 兎狩りと温泉ざんまい
征韓論争から身を引き、下野
犬十三匹と鰻温泉
犬連れ温泉の旅、三カ月
2 私学校設立
私学校と農地開墾
宮崎の白鳥温泉への旅
3 庄内からの来訪者
庄内の菅実秀ら西郷を訪ねる
庄内一行、桐野利秋と兎狩り
4 士族騒乱をよそに兎狩り
神風連、秋月、萩の乱
西郷の胸中、「天下驚くべきの事を」
騒ぎを避けて、犬と小根占へ
警視庁中警部、鹿児島に潜入
火薬庫襲撃事件
愛犬と別れ、小根占を立つ
第五章
犬連れの西南戦争
1 葉巻をくゆらし余裕の出陣
出陣の時、犬はいたか
磯邸前で旧藩主に敬礼
想定外だった熊本での戦闘
2 犬連れ西郷の目撃者たち
官位剝奪の使者と兎狩り
西南戦争は「戦争」ではなかった
熊本籠城戦と犬猫
熊本撤退、人吉で兎狩り
3 犬連れ撤退
犬連れで人吉を去る
宮崎の亀松少年と犬連れ兎狩り
犬を連れ、北へ北へと撤退
司馬遼太郎が語る犬連れ西郷
4 ついに「戦争」が始まった
陸軍大将の軍服を焼き、犬三匹を放す
城山の最期と犬たちのその後
第六章
狩りを始めた明治天皇
─西郷への追憶─
1 西郷自刃の衝撃
西南戦争直前の京都行幸
赤坂仮皇居で兎狩り
2 西郷への追憶と兎狩り
庭で犬を飼う喜びを知る
多摩で本格的な兎狩り
憲法発布、賊徒の汚名除かれる
第七章
西郷と犬、銅像になる
1 なぜ犬連れ像になったのか
建設地、上野に決まる
犬連れ像を推した榎本武揚
西郷像の身なりの発案者は大山巌
2 顔は似ているのか
キヨソーネの肖像画への評価
「こげな人じゃなかった」発言の解釈
犬のモデルになった仁礼景範の愛犬サワ
終章
文明開化の果てに──絶滅した薩摩犬
あとがき
「西郷隆盛と犬」の略年表
上記内容は本書刊行時のものです。