わたしの今いるところ そしてこれから
- ISBN
- 978-4-7885-1699-1
- Cコード
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C1045
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教養 単行本 生物学
- 出版社在庫情報
- 在庫あり
- 初版年月日
- 2020年11月15日
- 書店発売日
- 2020年11月13日
- 登録日
- 2020年10月27日
- 最終更新日
- 2020年11月13日
紹介
宇宙・地球・生命・人間という階層の中に「わたし」を置き、生命を見つめる今号。生命科学を牽引する科学者たちの語り、チョウやクモなど小さな生物の研究報告、そして中村桂子氏のこれまでの歩みなど、多様な切り口で生命の今とこれからを考える。
前書きなど
はじめに
「生命誌研究館」というどこにもない新しい場を創り、そこからの発信の一つとして『季刊生命誌』の刊行を決めました。毎号、その時の思いを込めて時に悩みながら、でもいつも楽しくつくり続けてきました。
昨年ふと気づいたら、100号になっていました。100という数字はやはり特別です。これまで創立5周年を初めとして、10周年、20周年には、それまでの活動をまとめこれからを考える記念事業を行ってきました。そこで25周年は季刊誌に眼を向けて、これまでを踏まえた100号、これからを考える101号をつくることにしました。私たちにとっての特別の号であり、お読み下さる方もその気持ちを共有して下さるに違いないと思ったのです。
テーマはすぐ決まりました。「わたしの今いるところ、そしてこれから」。四半世紀の間に生命科学研究は大きく変わり、当初、モデル生物以外の生き物を研究したり、生きものは歴史と関係の中にいると考えるなどとんでもないこととされていた研究のありようは大きく変わりました。生命誌研究館と同じような研究が大学や国の研究所でも行われるようになってきたのです。でも生きものを見る眼は本当に変わったでしょうか。
人間は生きものであり、まだよくわからない生きものという存在の本質を知らない限り、本当の生き方は見えてこないのだという謙虚な探求心で研究が行われているでしょうか。今こそ生命誌を考え続けた「私」の「今いるところ」を真剣に考えなければなりません。生きてるって少し変てこで、面倒で、でもやはり魅力がある。そう思いながらこれからを考えていきたいという気持ちを100号と101号にこめました。この気持ちをみごとに共有して下さる金子邦彦、倉谷滋、酒井邦嘉さんがすばらしい考え方を示して下さいました。どのお考えも不安定なところに新しい芽を生みだしており刺激的です。研究紹介と研究館の各グループの報告にも同じ兆しが見えます。
生きものの本質を見つめ、生きる意味を求めて歩む道は生命誌の先にあることは確かだと思いながら今年の年刊号を送り出します、ご一緒に考えて頂きたいとの願いをこめて。
2020年8月 中村桂子