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パフォーマンス心理学入門 香川 秀太(編) - 新曜社
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パフォーマンス心理学入門 共生と発達のアート

発行:新曜社
A5判
230ページ
価格 2,400円+税
ISBN
978-4-7885-1624-3
Cコード
C1011
教養 単行本 心理(学)
出版社在庫情報
在庫あり
書店発売日
登録日
2019年2月13日
最終更新日
2019年3月14日
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紹介

本書のパフォーマンスは成果や成績のことではない。新しいチャレンジ、古いやり方や見方も超えること。今の自分とは異なる生を演じること。どうやって? 理論を詳しく解説するとともに、多彩な実践を紹介。よりよい人生のパフォーマンスへの招待。

目次

パフォーマンス心理学入門 目次

まえがき

1部 パフォーマンス心理学入門

 1章 パフォーマンス心理学とは 茂呂雄二
  1 はじめに
  2 パフォーマンス心理学
  3 パフォーマンス心理学の歴史
  4 パフォーマンスのインパクト
  5 パフォーマンス心理学の可能性

 2章 レフ・ヴィゴツキー─愛しき革命家 ロイス・ホルツマン大塚翔・石田喜美 訳
  1 はじめに
  2 レフ・ヴィゴツキー
  3 発達におけるあること(being)となること(becoming)
  4 やり方を知らない成長活動
  5 私たちは皆、無名の革新者

 3章 パフォーマンス・アクティヴィズム ダン・フリードマン石田喜美・大塚翔 訳
 ──人間の発達を再開し、コミュニティを創造するために出現しつつあるグローバル戦略
  1 はじめに
  2 パフォーマンス、発達、コミュニティ
  3 世界各地の実例

 4章 状況論からパフォーマンス心理学へ 太田礼穂
  1 はじめに
  2 パフォーマンスが持つ意味
  3 状況論とパフォーマンス心理学との連続性と不連続性
  4 パフォーマンス心理学における実践
  5 おわりに

2部 交換のパフォーマンス

 5章 所有、贈与、創造的交歓─関係論の解散へ 香川秀太
  1 新しい社会構造の息吹
  2 アソシエーション論(交換論的転回)
  3 贈与論
  4 創造的交歓論
  5 相模原市藤野地区のファーマーズマーケット
  6 関係論の静かな解散へ

 6章 放課後コミュニティの形成 広瀬拓海
 ──子ども・若者支援のための新しい「パフォーマンス」
  1 はじめに
  2 交換様式からとらえるコミュニティビルド
  3 子ども・若者支援の新しい放課後コミュニティ
  4 子どもたちとの出会いとその背景
  5 応答としてのパフォーマンス

 7章 パフォーマンスとしての社会的企業と交換 北本遼太
 ──『空と大地と』の事業の開始と展開
  1 はじめに
  2 パフォーマンスとしての社会的企業という働き方
  3 交換の持つ「力」
  4 『空と大地と』の開始と展開
  5 パフォーマンスとしての『空と大地と』の実践
  6 新たな支援を切り開く交換の「力」
  7 おわりに

 8章 交換が生まれる場を作る 小池星多・篠川知夏・青山征彦
 ──多摩地域のコミュニティスペースにおける活動のデザイン
  1 はじめに
  2 コミュニティスペースにおける活動の実際(1)
    ──工房を中心としたネットワーク
  3 コミュニティスペースにおける活動の実際(2)
    ──シェアハウスと出版がつなぐネットワーク
  4 コミュニティスペースにおける活動のデザイン
  5 コミュニティスペースの困難、そして可能性へ

 9章 異文化理解と交換 岸磨貴子
  1 はじめに
  2 インターネットを活用した異文化間の協働実践
  3 「交換」の観点から見えてくるもの
  4 コミュニティを創造する異文化理解の実践とその特徴
  5 おわりに

3部 学びの場のパフォーマンス

10章 教育におけるパフォーマンスの意味 有元典文
  1 はじめに──観客・共同・即興・創造・発達・遊び
  2 主体を「個」から「場」へ広げよう
  3 教育にパフォーマンスを
  4 やったことがないことがやったことがないままでできる場へ!

11章 英語の学びとパフォーマンス心理学 今井裕之
  1 はじめに
  2 日本の英語教育が抱える問題
  3 小学校英語が本格的に始まった
  4 「教科書」の存在が大きい中学校の英語授業の変化
  5 高等学校の「言語活動の高度化」が持つ可能性
  6 英語教員との研修を通して「即興性」の認識を変えていく
  7 英語教育にもっとパフォーマンスを

12章 教員養成におけるインプロ 郡司菜津美
  1 はじめに
  2 なぜ教員養成でインプロなのか
  3 インプロを取り入れた教育実践
  4 おわりに

13章 インプロが促す発達 清家隆太
  1 はじめに
  2 インプロについて
  3 インプロのレッスンの実際
  4 学生の発達と変化(インタビューをもとに)
  5 おわりに

終章 状況論からパフォーマンス心理学へ 青山征彦
 ──私たちはなぜ変わらなければならないのか
  1 はじめに
  2 状況論からパフォーマンス心理学へ(1部)
  3 コミュニティを交換論で読み解く(2部)
  4 インプロは学校教育をどう変えるか(3部)
  5 そして研究者はどう変わるか
  6 現実とわたりあえる心理学に向けて

あとがき
索 引


装幀=臼井新太郎
装画=鹿又 広祐

前書きなど

まえがき

 本書は、パフォーマンス心理学を広く日本の学生、研究者、実践家と共有するために編まれた本である。

 パフォーマンス心理学におけるパフォーマンスは、新しい活動へのチャレンジを通して、今までの古いやり方や自分自身の見方も超えることを意味している。その典型例は、俳優の技であり、ごっこ遊びに興じる子どもである。自分ではない者に成りきって、今の自分とは異なる生を演じることがパフォーマンスである。

 しかし現在の私たちには、むしろ成果主義に基づいたパフォーマンスのほうが馴染みやすい。「ハイパフォーマンスのチームが高レベルの価値を提供します」、「コストパフォーマンスのよいサービスを提供」といった広告のことばが踊る中、俳優の演技が典型となる遊びや楽しさに通じるパフォーマンスの意味は忘れられがちである。

 本書が取り上げる意味でのパフォーマンスの概念は、人類学やドラマ研究、言語学等の、人間の本性に迫ろうとするさまざまなアプローチにおいて繰り返し主張され、議論されてきたものでもある。現在のパフォーマンス心理学は、そのような多様な流れの合流点に成立しているものである。

 たとえば、文化人類学には、伝統的な慣習行動の制約とその乗り越えに着目するアイディアがある。“リミナリティー(境界越え)”としてのパフォーマンスのアイディアであり、パフォーマンスによって新しい何かが生じることで、それまでのリミッターを振り切るというアイディアである。

 文化人類学者ファン・ヘネップは、部族社会においてパフォーマンスの儀式が平和から戦争への変化や季節による労働の変化などの、社会変化の越境として機能するものだとした。一方、社会劇の概念で知られるヴィクター・ターナーは、社会劇が部族間抗争であれ、近代的国民国家であれ、社会集団の“リミナリティー(彼の場合にはリミノイド)”としての転換活動として、社会集団が確立された関係性や古いやり方を超えて進むのを可能にするとして、このようなリミナリティー活動としてパフォーマンスをとらえている。現在、リチャード・シェクナーが牽引するパフォーマンス・スタディーズとして知られる社会文化的な研究動向は、この人類学のパフォーマンスのアイディアを引き継ぐものである。

 パフォーマンスの中でも、インプロ(即興、インプロヴィゼーション)に着目した動きにも、発達支援を担ってきた長い伝統がある。インプロは、演劇のひとつの形式であり、俳優修行の道具でもあると同時に、社会教育やリーダーシップ育成の道具としても利用されてきた。インプロの代表者のひとりに、シアターゲームの創設者として知られるヴァイオラ・スポーリンがいる。彼女が師事したのは、社会学者のネヴァ・ボイドである。ボイドはシカゴのセツルメント施設(ヨーロッパからの移民子弟と地元民の共生による貧困問題解決を目指す施設)内に、1年の課程でグループゲーム、ダンス、ドラマ、遊びの理論、社会問題を教えるレクリエーション訓練学校を創設した人物であるが、若いスポーリンはこの教育施設で学んでいる。現在、日本においても、学校教育はもちろんのこと、企業における研修や、異文化・多文化理解のワークショップ等の多くの分野から注目されているインプロの背景に今世紀初頭の貧困等の社会問題への関心があったことは、貧困や格差の問題を抱える現代と共鳴するという意味で興味深い。

 言語研究においても、パフォーマンスへの注目の伝統がある。本書で言及されるウィトゲンシュタインの言語ゲーム論もそうだが、言語行為論(スピーチアクト)もそうだ。通常、言語は、対象物や事実を記述する道具と想定されるが、このような実証主義的な想定に対して、言語の持つ行為性や社会的事実の構成の機能を強調する流れも脈々とつづいている。ジョン・オースティンの着目する、遂行的な行為は、「この船をクイーン・エリザベスと命名する」というように、ことばを発する行為が、発話行為の実践を通して意味を作り上げる事態に注目する等、パフォーマンスとしての言語を強調する流れも、実践としての言語の本性を明らかにしてきた重要な流れである。

 さて、パフォーマンス心理学には、もうひとつの特徴がある。それは実践や介入との結びつきである。パフォーマンスを強調しておきながら、研究対象を遠くから眺めているだけではすまない。むしろ、研究対象として設定した人々の中に入り込み、一緒に実践を作り上げること、どのように人々と共に活動するのか、どのように活動の場をつくり上げたのかが大事になるだろう。このことも、アクション・リサーチ、介入研究、当事者研究、形成的なアプローチ等の名前で呼ばれて、実践されてきたものである。

 本書に寄稿してくれたダン・フリードマンが述べるように、パフォーマンス心理学あるいはパフォーマンス研究は、同時に、パフォーマンス・アクティビズムでもあるのだ。パフォーマンスの観点から人々を見ることは、私たちの生をベタリングすることを目指して、一緒に新しいパフォーマンスを創造することにほかならない。

 本書には、理論的で解説的な章とともに、日本においてパフォーマンスによってさまざまな活動の場をつくり上げた実例も示されている。読者のみなさんが、本書をとおしてパフォーマンス心理学の一端に触れ、さらには、パフォーマンス・アクティビズムのコミュニティに参加するきっかけになることが、著者一同の願いである。

                              編者一同

著者プロフィール

香川 秀太  (カガワ シュウタ)  (

青山学院大学社会情報学部准教授

有元 典文  (アリモト ノリフミ)  (

横浜国立大学教育学部教授、

茂呂 雄二  (モロ ユウジ)  (

筑波大学人間系教授

上記内容は本書刊行時のものです。