書店員向け情報 HELP
出版者情報
書店注文情報
在庫ステータス
取引情報
チョムスキーの言語理論
- 出版社在庫情報
- 在庫あり
- 初版年月日
- 2019年2月25日
- 書店発売日
- 2019年2月25日
- 登録日
- 2018年12月7日
- 最終更新日
- 2019年2月18日
紹介
変化と成長を続けているチョムスキー理論の出発点から現行理論に至るまでを、きわめて分かりやすく教えてくれる、他に類を見ない生成文法入門・活用書。内容を最大にアップデートした第三版から、政治観の章を除き、チョムスキーの言語理論に絞り翻訳。
目次
チョムスキーの言語理論 目次
訳者まえがき
第3版への序文
再版への序文
初版への序文
序 論
1 チョムスキーの業績
2 妙想と影響
訳注
第1章 心の鏡
1 序 説
2 科学としての言語学
2.1 理想化の本質
2.2 コモンセンス
3 モジュール性
3.1 機能分離の二方向性
3.2 モジュールと準モジュール
3.3 知能と学習
4 言語能力と言語運用
4.1 言語能力と文法
4.2 規 則
4.3 I言語とE言語
5 言語運用、統語解析、そして語用論
5.1 統語解析的考察
5.2 語用論的考察
5.3 言語能力と言語運用 対 I言語とE言語
6 進化と生得性
6.1 言語獲得
6.2 刺激の貧困
6.3 語の意味
6.4 普遍性
7 自然言語と思考の言語
8 要 約
訳注
第2章 言語の基盤
1 序 説
1.1 何が達成されたか?─3つの妥当性
1.2 ミニマリスト・プログラム
2 言語の知識
2.1 レキシコン
2.2 構造の知識
2.3 構造関係の知識
3 記述的妥当性
3.1 形式的背景
3.2 表示レベル
3.3 構成素と規則
3.4 深層構造
3.5 記述 対 説明
4 説明的妥当性を目指して
4.1 規則から原理へ
4.2 句構造規則の廃止
4.3 Xバー理論
4.4 統率・束縛理論
4.5 変形の地位
4.6 原理とパラミタ
4.7 語彙範疇と機能範疇
5 説明的妥当性を越えて
5.1 ミニマリズム(極小主義)
5.2 スパルタ式言語学(Spartan linguistics)─ミニマリズムの成分
5.3 経済性
5.4 (実質上の)概念的必然性
5.5 第三要因の考慮
5.6 実 装
5.7 完璧な統語論
6 棚卸し─歴史的経過
6.1 進 化
6.2 第三要因
訳注
第3章 ことばと心理学
1 序 説
2 因果関係と説明
2.1 理論とデータ
2.2 行動主義
3 心理的実在性と証拠の性質
3.1 「心理学的」または「言語学的」証拠?
3.2 直 観
4 言語処理
4.1 複雑性の派生理論
4.2 文法と統語解析器
4.3 解析問題
4.4 経済性
5 言語獲得(プラトンの問題)
5.1 教えるのか、それとも教えられることなしに学ぶのか
5.2 学習か成長か
5.3 パラミタの設定
5.4 臨界期仮説
5.5 成 熟
6 言語病理
6.1 脳梁発達不全
6.2 多言語使用の天才
6.3 特異言語障害
7 行動主義者の反撃
7.1 コネクショニズム
7.2 構成主義と統計的学習
7.3 創発主義
8 結 論
訳注
第4章
哲学的実在論
─チョムスキーが与(くみ)する立場とそれをめぐる論争
1 序 説
2 チョムスキーが与する立場
2.1 心についての実在論
2.2 生得的構造
2.3 方法論的自然主義
2.4 再びI言語について
2.5 表示と演算
2.6 心理主義
2.7 合理主義と言語の知識
3 チョムスキーをめぐる論争
3.1 言語についての内在主義
3.2 言語についての外延主義的見解
3.3 言語とコミュニケーション
3.4 意味についての内在主義
3.5 生得性
3.6 心身問題
3.7 統一化と還元
4 結 論
訳注
原 注
文 献
人名索引
事項索引
装幀=新曜社デザイン室
前書きなど
チョムスキーの言語理論 第3版への序文
本書の再版が出てから10年以上経つ。この10年は世界を取り巻く様々な危難が増大した期間であるが、言語学と認知科学が著しく成長した時でもあり、チョムスキーも、それまでと同じように先鋭的な理論的貢献を続けていた時期であった。チョムスキーの旺盛な学問的活動は、時間とエネルギーの大半を政治活動と、産業界と政府の巨大な範囲にわたる虚言や意図的混迷化を暴くことに捧げる中で行われたのである。
こうした展開を理解・説明し、チョムスキーの継続的活動を正しく捉えるためには、著者の専門的知識の幅を広げる必要があると考えられた。そこで第2版までの著者・スミスはアロットの協力を得ることとなった。アロットはこの目的に必要な知識と経験を兼ね備えていたのである。 我々(スミスとアロット)は、今回も本書の基本的な輪郭には変更を行わないこととしたが、その一方で、この10年間の新展開の理解を進歩させる材料と、これらの進歩においてチョムスキーが果たした役割を示す材料との双方を本書に反映させる目的で、アップデートと改訂を本書に施した。以前の版に誤りがあることが判明した場合はこれを訂正したし、不明瞭であった部分を説明等により明らかにした。またこの10年で最も傑出した革新であると我々が判断したものを強調的に表示した。この結果、第1章については、多少の確証的証拠を加えただけで、ほとんど変更を加えなかったが、他の章ではこう単純には行かなかった。言語学の中では、動乱と言っていいほどの活動が続いていた。ミニマリスト・プログラムは生成文法的陣営では相変わらず支配的パラダイムであるけれども、このプログラムには大幅な変化が生じていた。これに従って、第2章には変更と増補が施され、現行理論の時に不明瞭な理論的・形式的新機軸をもっとわかりやすく説明する試みが盛り込まれた。チョムスキーは現行の統語理論に対して理論的貢献を行っており、それについては我々も詳しく説明することになるが、それに加えてチョムスキーは、最近の学問的業績の大半を言語能力の進化の研究に捧げている。これに伴って我々も、以前の版では比較的短かったこの問題に関する論考をくわしく精巧なものとした。
言語の心理学と心理言語学の分野で最も重要な変遷は、チョムスキーが公準として唱える「普遍文法(UG)」に対する一層の、そして一層敵意を増した反発と、これに代わるべき考えとして提出されている、コネクショニズム等の「創発的」理論の出現である。第3章ではこれらの代案のいくつかを吟味し、その主張を解剖し、しかるべき裁断を与えている。この論争は、「刺激の貧困」を巡る論議の本質と解釈を巡るより広い意見不一致の一部をなすものである。「刺激の貧困」については、第4章で哲学的実在論の観点から再び吟味する。この章ではまた、哲学界におけるチョムスキーの業績誤解の多くの原因となったと思われる用語上の、また実質上の複雑さについて、前回よりも紙数を割いて説明を行っている。その中には、「知識(knowledge)」、「(心的)表示((mental)representation)」、さらにチョムスキーが拒絶し、それゆえに悪評を買っている「語と世界」の意味的関係が含まれている。
チョムスキーの執筆の豊饒さには尽きるところがない。本書のアップデートされた参考文献には、チョムスキー自身による50ほどの新たな論文・書籍のほか、ほぼ同数の他の人による新文献が入っている。派生的文献は今や膨大なものである。この中には統語論、音韻論、意味論という専門領域に関する文献もあるが、それだけでなく、チョムスキー自身およびその業績にほぼ限って捧げられている定期刊行物の特別号も含まれている。この領域に属する最近の有用な著をあげると、Al-Muraiti(2014), Barsky(2007, 2011), Bricmont & Franck(2010), Collins(2008a), McGilvray(2005), Piattelli-Palmarini & Berwick(2013), Sperlich(2006)がある。さらに、彼のウェッブサイト(www.chomsky.info)には大量の有用な資料があるし、彼が尽きることのないインタヴュー要請に応じているため、このウェッブで「アフガニスタン」や「ISIS(Islamic State of Iraq and Syria;イスラム過激組織)」から「シオニズム」に至るまでのチョムスキーの考えに接することができる。続けるときりがない。
初・再版で触れた方々に加え、次の方々に、コメント、交信、質疑、断続的ながら憤激に対して感謝の意を表したい。クラウス・アーベルス(Klaus Abels)、エリーヌ・ブッシュ・グンダーセン(Eline Busck Gundersen)、ティモシー・チャン(Timothy Chan)、アナベル・コーマック(Annabel Cormack)、ヤン・テーリエ・ファールンド(Jan Terje Faarlund)、クリステル・フリッケ(Christel Fricke)、カーステン・ハンセン(Carsten Hansen)、ジョナサン・ノウルズ(Jonathan Knowles)、アド・ニールマン(Ad Neeleman)、アンダース・ネス(Anders Nes)、ジェシカ・ペップ(Jessica Pepp)、ジョルジュ・レイ(Georges Rey)、マーク・リチャーズ(Marc Richards)、アマール・スミス(Amahl Smith)、マルコム・トッズ(Malcolm Todd)、ヒロユキ・ウチダ(Hiroyuki Uchida)、ハンス・ファン・デ・コート(Hans van de Koot)、セバスチャン・ワツル(Sebastian Watzl)、ユハーニ・イリ=ヴァクーリ(Juhani Yli-Vakkuri)。マーク・リチャーズには、第2章の原稿に関するこちらからの質問や、あちらからのコメントに対して、ヤン・テーリエ・ファールンドには、第2章に対するコメントに対して、ジョルジュ・レイには、本書全体に関するコメント、疑義、そして極めて価値の高い討論に対して、特別の謝意を表したい。これらの方々の示唆に関して、我々が書いたこと、書かなかったことについての責任はこの方々にはない。スミスは、前と同じくその家族(セアラス、アマール、アン(Anne)、ザック(Zak)、ジョシュ(Josh);アイヴァン、ジャネック(Janneke))からの愛、支援、そして専門的助言に対して恩義を感じている。アロットは、研究センターCSMN(ロンドン大学の Centre for the Study of Mind and Nature)の同僚に、研究プロジェクトである The Reflective Mind(非思慮行使的な精神活動)に、双方に資金を提供したノルウェー国立研究評議会に、そして何よりも、妻ジューイ・チュー(Jui Chu)の愛情と、忍耐と支援に感謝をささげたい。
版元から一言
チョムスキー理論の初期から最新理論までを解説
初心者にも懇切な記述
上記内容は本書刊行時のものです。