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心の七つの見方
- 出版社在庫情報
- 在庫あり
- 初版年月日
- 2016年11月
- 書店発売日
- 2016年11月1日
- 登録日
- 2016年10月12日
- 最終更新日
- 2016年11月8日
紹介
◆心とは、どのようにみなされるべきものなのか
私たちが「心」について話すとき、いったい何について話しているのでしょうか。一般的に、私たちの多くは「心と身体」を区別する二元論を素朴に受け入れています。他方、心は、言語哲学、行動主義、認知科学、神経科学などではどのように捉えられているのでしょうか? また心を、科学的構成概念であるとする見方と、社会的構成概念であるとする見方の違いもあります。本書は心に関するこれら主要な見方を七つに分けて、それぞれの視点、および賛否される理由、問題や対立点などをできるだけ難解な言葉を避けて解説しました。心について考えるガイドブックとしておすすめできる一冊です。
目次
心の七つの見方 目次
心の七つの見方
はしがき
序―問題
第一章 物理的世界とは異なるものとしての心
デカルト学派の混同と超常現象
自由意志はどうか
創造性はどうか
機械に意識はあるか
意識的経験は私的ではないか
意識的経験は本当に脳の状態か
簡潔に言うと
第二章 話し方としての心
心的原因はあるか
私的で内面的な心的実体はあるか
心的実体から心的過程へ
二つの甘い誘惑
心の謎は消えたか
簡潔に言うと
第三章 行動としての心
伝統の誕生
苦境にある伝統
スキナーの方法
不穏な情況
意 識
条件づけで十分か
簡潔に言うと
第四章 頭の中のソフトウェアとしての心
デジタル・コンピュータの定義
デジタル・コンピュータとしての脳
意識や感情や意味はどうか
考えることや問題を解決することはどうか
簡潔に言うと
第五章 脳としての心
幻の原因としての意識的意図
脳は表象することができるか
ニューラルネットワーク
意識的経験
その問題は解消した
脳の記述は心的な言葉に取って代わりうるか
簡潔に言うと
第六章 科学的構成概念としての心
操作的に定義できる理論的構成概念
本当に科学的な概念か
法則的原理か
反証不可能な原理
反証不可能な導出仮説
妥当で反証可能か
法則がすべてとは限らない
簡潔に言うと
第七章 社会的構成概念としての心
心性の文化的解釈
自分自身の心的状態
行動は曖昧である
解釈とその仮定
船とクモの巣について
簡潔に言うと
終 章 心を(完全に)見失うことなく二元論を避ける方法
七つの見方を要約すると
問題に戻ると
二元論なしでやっていく
締めくくりに
訳者あとがき
引用文献
事項索引
人名索引
前書きなど
心の七つの見方 はしがき
ほとんどの学生や一般人にとってだけでなく、多くの専門家にとってさえ、彼らの直接経験─彼らの感覚、思考、感情、情熱、これらすべて─は、物理的世界の領域とはまったく別の領域に属しているように見える。しかし、感覚や思考や感情や情熱は、われわれの身体に影響し、逆方向にも同じように影響するように思われるので、もし心と身体が二つの異なる領域に、すなわち一方は物質的でもう一方は非物質的な領域に存在しているとすれば、どうしてそのような影響が可能になるのか理解しがたいだろう。心と身体の二元論は擁護しがたいものに思われる。しかし、もし二元論が拒否されるとすれば、われわれは心についてどのように考えることができるのだろうか。この質問が重要なのは、それ自体としてだけでなく、より広くは、われわれがわれわれ自身をどのように理解するか、われわれがわれわれの人生をどのように生きればよいかということに影響が及ぶからである。
心理学者や神経科学者や哲学者は、さまざまな非二元論的な心の見方を説いてきた。こういった思想家の中には、心をコンピュータ・プログラムに似たものとみなす人たちがいる。心を脳と同じものとみなす人たちもいる。信念、怒り、嫉妬のような心性主義的な単語を、行動に関わるものにすぎないとみなす人たちもいる。心的な用語が指し示すものは何も存在しないと主張する人たちもいる。心的に話すことは慣習を反映するものにすぎないと考える人たちもいる。心的な用語は、科学的な理論であったり、いずれは科学的な理論になるかもしれなかったりする、理論的構成概念とみなす人たちもいる。
これらの見方の中には、明らかに、二元論とだけでなくお互いに相容れないものがある。そして、深刻な問題は、二元論についてだけでなく、これらすべての見方について提起されている。さまざまな心の見方は、ひとつの場所で議論されることがめったになかった。われわれは、それらを本書に寄せ集め、それぞれをそれ自体として吟味する。さまざまな見方に見出される問題を乗り超えることを目標とする結論が提案されることになる。
われわれは、形式張ることなく会話調で書き、専門用語を避けながら、できるだけ共感できるようにそれぞれの見方を紹介し、それぞれを受け入れるかどうかの賛否の理由を考えられるだけ検討しようと努める。読者諸兄姉は、自分にとってあまり馴染みのないアプローチでもそれを深く調べ、不一致や対立があれば、それを避けるよりもむしろ解決するようにしてほしい。われわれは、批判的であると同時に建設的でもあろうとし、学生たち(や他の人たち)が理解しやすく、また関心を見出せるように書こうと努めている。
最近まで、ほとんどの心理学者は、多少にせよ哲学的に見える質問には反感を抱いてきた。心理学は、実証的データによって答えることができる質問にだけ自らを限定し、哲学とは明瞭な一線を画していると考えられていた。しかしながら、認知科学などの分野の新しい発展は、そのような限定や分割が実際には実現できないことを示唆している。われわれは本書が、学問的専門の境界や人為的な制約から心理学者が自らを解き放とうとする動向の進展の一助となればよいと考える。
われわれの授業の学生たちが、本書のテーマに旺盛な興味を示し活発に参加をしてくれたことに感謝する。ダニエル・セルーティ、ジェリー・ダウニング、ロバート・ドレイク、リック・ホイル、グレゴリー・ロックヘッド、ジョン・ロイヤル、ネスター・シャマジャク、マイケル・ベルトハイマーには、コメントと議論に。ヘーゼル・カーペンターとロリー・クワピルには、文書作成に。デューク大学心理・神経科学部には、快適で親切な学術環境の提供に。サイコロジー・プレス社の編集者ステファニー・ドリューには、励ましと支えに。われわれは、匿名の査読者の特別な恩恵を受けた。われわれの最初の草稿に対する彼らの熱意は、章ごとの忍耐強いコメントと極めて有益な示唆を伴って、そうでなければありえなかったほど本書をはるかに良いものにするためのさらなる作業にわれわれを駆り立ててくれた。
上記内容は本書刊行時のものです。