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はじめての認知科学
- 出版社在庫情報
- 在庫あり
- 初版年月日
- 2016年2月
- 書店発売日
- 2016年2月26日
- 登録日
- 2016年2月8日
- 最終更新日
- 2016年2月26日
紹介
◆「認知科学のススメ」シリーズの刊行にあたって
人間や動物は、どのように外界の情報を処理し、適切に反応しているのでしょうか?認知科学は、このような関心から。動物も含めた人間の知能や、人工知能システムなどの知的システムの性質や処理メカニズムを理解しようとする学問です。人間や動物のさまざまな現象にかかわるため、認知科学は、心理学、進化学、情報科学(とくに人工知能)、ロボティクス、言語学、文化人類学、神経科学・脳科学、身体運動科学、哲学などの幅広い分野の研究者が集まって作られました。そのため認知科学は、これらの諸分野を横断する学際的な学問分野となっていて、数学、物理、歴史などの伝統的な分野と比べて、体系化することは容易ではありません。そのためもあってか、私たち自身について知るための基本的な学問であるにもかかわらず、これまで中学校や高校の教育の中で教えられることはありませんでした。しかし学問の存在を知らなければ、その道へ進もうと志す人もなかなか現れません。
第1巻では、認知科学の基本や多彩な取り組み全体をクイズやコラムを交えて紹介します。
目次
はじめての認知科学 目次
まえがき
序章 ヒトはどんなふうにものを考えるか?
パズルで試す「ヒトの考え方」
直感と論理の差がある
確率的なものをどう捉えるか?
常識的ってなんだろう?
序章の読書案内
1 章 出発点 こころを問うひとびと
こころの研究を「科学」にする
条件反射から行動主義心理学へ
こころの中の「認知地図」
こころの中にあるもの
表象という「なにか」
情報科学がもたらしたもの
Box アラン・チューリング /ジョン・フォン・ノイマン
ノーバート・ウィーナー /クロード・シャノン
Column こころを持った機械への夢とチューリング・テスト
双子の学問の誕生
情報科学からこころを追うと……定理証明プログラム
モデルという理解の仕方
問題を解く「こころ」とコンピュータ・プログラム
境界を越えて
Column 日本に認知科学がやってきたとき
1章の読書案内
2 章 こころをわかるために章 ――記号,表象,計算,意味,理解
こころの働きを情報処理になぞらえる
大きな枠組で理解する
情動を伝える2つのルート
形式的に扱う=計算論的扱い
計算主義・記号主義とレイヤー
ことばのないネコ,知性と言語
ヒトのこころとことば
文を作る能力は生得的か?
ヒトに固有な言語活動
ことばを獲得するとき
ことばの意味がわかる,とは
記号接地問題
使いやすいヒューリスティックな思考
Column もう1 つの計算主義 ニューラルネットワーク
2章の読書案内
3 章 こころと身体と言語
表情も身体だ
身体を動かしたほうがクリエイティブ
身体とミラーニューロン
Box 「共感」と「心の理論」――他者に共鳴する能力
Column 神経科学のあゆみ
問題解決に役立つ心内シミュレーション
記号だけに頼れない?
身体とアフォーダンス
身体と触れ合う世界
ことばを持つ「意味」とヒトの能力
Column 身体を持ったロボットは知性を持つのか
3 章の読書案内
4 章 動物らしさvs. ヒトらしさ
あなどれない動物の認知システム
イルカの「音」の世界
オオカミからイヌへ
キツネの家畜化からわかるもの
動物とヒトはどう違うのか
数字の短期記憶実験
推移的推論はできるか
対称性についての奇妙な結果
ヒトの認知システムの基本を探る
推論の基本
ヒトの知性をがっちり支える道具=アブダクション
発達とは学び続けること
Column 脳をのぞく――画像撮影装置の発展
4 章の読書案内
間奏曲 認知科学対話
I
根っこから外れる節操の無さ
役に立つか
人とモノの間で
II
がんばれ東ロボくん!
会話プログラムと川柳
文脈と忘却
III
どんな状況にも対応できるヒトのこころ
ボトムからもトップからも考えるヒト
情動を超えて
生き残る仕事はなにか見極めるために
5 章 認知科学のここまで,そしてこれから
認知科学は何をやってきたのか
1995 年から2012 年の日本の認知科学
認知科学は社会とつながる
情報社会を認知科学すると
これからの問題は
Column 認知科学を学ぶには
あとがき
文献一覧
索引
装幀=荒川伸生
イラスト=大橋慶子
前書きなど
はじめての認知科学 まえがき
ヒトのこころとは何でしょうか。こころ,精神,胸の内,英語で言えばマインド(mind),ハート(heart),スピリット(spirit)……いろいろないい方があります。自分のことを振り返ってみても,こころというのはとても気になるのになかなか捕まえにくい存在です。
自分で自分のこころのことを考えてみましょう,感じてみましょう。 テレビドラマを見て感動したり,明日のデートの計画を立てたり,幼いころを思い出したり,数学の問題を一所懸命考えて解き方がわかって興奮したり……。
こころの中身は次々に移り変わります。そこから,こころがいろいろな働きを持っていることに気がつきます。
ちょっとまわりを見渡してみましょう。
考えているこころを持っているのは,自分だけではなさそうですね。
私があなたに話しかけます。私のこころの中にある思いを語ります。
あなたはそれを聞き,私のこころの中身を思いやりながら,あるときは「そうだね」と言いながらうなづき,またあるときは「ちがうよ,それ」と首を横にふります。私のこころのはたらきは,あなたのこころのはたらきに何かを与えたようです。
でも,あなたのこころの中を私は見ることはできません。「こう思っているのかな」と考えることはできても見ることはできないのです。私のこころの中だって,私自身でさえはっきりこうだとわかるわけではありません。
こころの働きとは何でしょうか? 人間のこころの働きは,だれでも同じなのでしょうか? それとも,みんな顔が少しずつ違うように,こころの働きにも違いがあるのでしょうか。こころの働きをだれでもわかるように,わかりやすく説明することはできないでしょうか。
それが,こころの科学,認知科学のめざすところです。
この本は,日本認知科学会出版委員会の認知科学者5 人,今井むつみ(慶應義塾大学),植田一博(東京大学),川合伸幸(名古屋大学),嶋田総太郎(明治大学),橋田浩一(東京大学)と私,科学ジャーナリストである内村直之を合わせた6 人が議論や対談を重ねて作り上げたものです。
上記内容は本書刊行時のものです。