- ISBN
- 978-4-7872-3406-3
- Cコード
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C0036
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一般 単行本 社会
- 出版社在庫情報
- 在庫あり
- 初版年月日
- 2016年7月
- 書店発売日
- 2016年7月15日
- 登録日
- 2016年5月20日
- 最終更新日
- 2020年10月19日
重版情報
3刷 | 出来予定日: 2020-10-09 |
2刷 | 出来予定日: 2018-01-31 |
食品添加物や遺伝子組み換え食品など、いまや私たちの食を取り巻く状況は科学と不可分な状況にあります。「食べる」ことに付随するリスクの問題を分析し、科学と食の関係を描き出します。3刷出来。 |
紹介
「食べる」という日常生活を取り囲む社会的・経済的・政治的な背景を解きほぐし、不安とリスクコントロールを迫る科学言説の問題性に切り込む。食の安全・安心をめぐるリスクコミュニケーションの限界と可能性を照らし出し、食をめぐるリテラシーを提言する。
目次
はじめに
第1章 食とリスクのマトリクス
1 〈権利/手段としての健康〉の棄損、〈責務/目的としての健康〉の推進
2 新自由主義のもとでの戦略としてのヘルスケア
3 食のリスクをめぐる関心と不安の高まり――政策技術の変容
4 食とリスクのマトリクス
第2章 食べることと知識
1 食べることについて社会学で扱うということ
2 リスク論の系譜
3 リスク論におけるカルチュラリズム
4 人々の知識という問題圏
5 状況づけられた解釈――私にとっての真理
第3章 市民とは誰か
1 シティズンシップをめぐる規範性の問題
2 上から権威づけられたシティズンシップと「よき市民」
3 非市民の構築――規範性Ⅲの困難
4 見えない恐れへの連帯は可能か
第4章 テクノフーズの氾濫――科学を食べなさい
1 私たちは本当にそれを欲していたのか
2 テクノフーズ誕生の歴史的背景
3 「三次機能」が(ヒト生体に対してではなく)社会的に機能するための条件
4 テクノフーズへの期待が高進する二十一世紀
5 「科学的精度」ではなく「言説的精度」の問題
6 私的領域の問題としてではなく
第5章 リスク“ディス”コミュニケーション――正しく食べなさい
1 「食べてはいけない」と風評被害
2 事実経過
3 実際にはどのように報じられたか
4 リスク“ディス”コミュニケーションの本質
5 〈現在化した未来〉における変更可能性
6 政策・技術としてのリスクコミュニケーション
7 〈現在化した未来〉で負わされる責任
第6章 永遠のゼロリスクと禁断のゼロリスク――正しく消費しなさい
1 消費者市民社会の狭隘さ
2 禁断のゼロリスクと科学的正しさイデオロギー
3 対立的に語られる科学と価値
4 リスクをめぐるコミュニケーション
5 隷従と忖度を超えた胃袋の連帯は可能か
おわりに
版元から一言
いまコンビニで食品を手に取れば、「脂肪を燃やす」「血糖値を抑える」「肌に潤いを」という言葉とともに、ラクトフェリンやヒアルロン酸などの成分が提示されている。私たちは「食べ物と科学を食べる時代」に生きているのである。
健康食品、遺伝子組み換え食品、ヘルスケア産業、マグロ水銀報道、水俣病、BSE、中国冷凍餃子事件、セシウム濃度……。「食べる」という日常生活を取り囲む社会的・経済的・政治的な背景を解きほぐし、「健康であれ」というメッセージが人々に不安=リスクをどのように提示しているのかを明らかにする。そして、「リスクコントロールをして正しい市民たれ」と私たちに迫る健康言説の問題性に切り込み、食の安全・安心をめぐるリスクコミュニケーションの限界と可能性を照らし出す。
あるときには照れくさくてくすぐったい、でも懐かしい家庭の味を思い出し、あるときには「まずい」とげんなりしながらも笑いあう。不安・リスク・科学から距離をとり、「食べる」という豊かな営みを私たちの手に取り戻すリテラシーを提言する。