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ナチス機関誌「女性展望」を読む 桑原 ヒサ子(著) - 青弓社
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ナチス機関誌「女性展望」を読む 女性表象、日常生活、戦時動員

発行:青弓社
A5判
縦210mm 横148mm 厚さ30mm
重さ 514g
432ページ
並製
定価 4,800円+税
ISBN
978-4-7872-2090-5
Cコード
C0020
一般 単行本 歴史総記
出版社在庫情報
在庫あり
初版年月日
2020年9月29日
書店発売日
登録日
2020年7月10日
最終更新日
2020年10月9日
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書評掲載情報

2020-12-19 朝日新聞  朝刊
評者: 戸邉秀明(東京経済大学教授・日本近現代史)

紹介

「女性展望」は、社会的・文化的領域で「理想的な」女性像を伝達して戦争に動員する有力なプロパガンダメディアだった。戦後ドイツの記憶から消し去られたナチス機関誌を掘り起こして解読し、ナチス政権下に生きた女性たちの実像に迫る。図版270点を所収。

目次

はじめに

第1部 「女性展望」が描く女性像と日常生活

第1章 表紙から明らかになるジェンダーとその揺らぎ
 1 「女性展望」の表紙と人物像
 2 男性表象
 3 女性表象

第2章 多様な母親表象とナチ女性団の「民族の母」という概念
 1 「聖母マリア」と「地母神」
 2 農婦の母と民族、民族上のドイツ人
 3 息子を戦場に送り出す母、心配する母、嘆きの母――聖母マリアの運命を背負う農村の母、労働者の母
 4 ナチ女性団・ドイツ女性事業団の活動

第3章 連載小説とその作家たち
 1 ナチ指導部の文学政策と女性雑誌
 2 「女性展望」に掲載された連載小説

第4章 ファッションと料理のページから再構成する第二次世界大戦下の暮らし
 1 ファッションと料理のページとその役割
 2 節約記事の年度別分布
 3 戦時下の暮らし

第5章 広告が描き出す日常生活と女性
 1 誌面のなかの広告と広告割合の変遷
 2 時期ごとにみられる広告の特徴

第6章 広告ページに掲載された生徒・学生募集広告が伝える女子教育機関――女子寄宿学校、家政学校、女子農業学校、社会教育・福祉学校、語学学校、単科大学、工業学校、看護学校
 1 広告ページのなかの生徒・学生募集広告
 2 各種教育機関

第2部 イメージ表象と女性の戦時動員

第7章 「女性展望」が伝える味方と敵の表象
 1 味方と敵に関わる記事の分布
 2 味方の表象
 3 敵の表象1
 4 敵の表象2

第8章 「女性展望」が伝えるヒトラー像
 1 ヒトラー像の構成手段とその分布の特徴
 2 ヒトラー像

第9章 ドイツ人女性の戦時活動――銃後から前線まで
 1 銃後の構築――戦前に成立した巨大ネットワーク
 2 制度的に戦争に組み込まれる母性――人口戦
 3 生活戦と生産戦
 4 軍人援護活動
 5 国防軍との協働――従軍看護師と国防軍補助員

第10章 ドイツ人女性兵士は存在しなかったのか――国防軍女性補助員の実態
 1 第一次世界大戦から第二次世界大戦勃発まで
 2 女性の軍事動員までの法的背景
 3 ジェンダー秩序と軍隊へのリクルート
 4 国防軍の女性補助員の立場、勤務規則、待遇
 5 戦争末期

第3部 ドイツ人女性の社会進出と敗戦

第11章 全国女性指導者ゲルトルート・ショルツ゠クリンクとドイツ人女性の社会活動――公的イデオロギーと女性の地位向上のはざまで
 1 国民社会主義のジェンダー秩序
 2 全国女性指導者ゲルトルート・ショルツ゠クリンクの女性理解と女性領域の拡大

終 章 敗戦――女性雑誌「コンスタンツェ」に描かれた敗戦直後のドイツ人女性
 1 敗戦から「コンスタンツェ」の創刊前後までのドイツ人女性の状況
 2 創刊初期の「コンスタンツェ」の特徴と本章で注目するテーマ
 3 結婚、離婚、非婚
 4 シングルマザーと婚外子の問題
 5 就労の実情
 6 基本法、婚姻および家族法

おわりに
 総力戦と女性の戦時活動
 全国女性指導者ゲルトルート・ショルツ゠クリンクとナチ女性団・ドイツ女性事業団
 敗戦は断絶なのか

ドイツ語対照表

関連年表

版元から一言

1932年から敗戦直前まで発行されたナチスの機関誌「女性展望」は合計282号を数え、最盛期には140万部を記録した。それは、ナチ女性団が編集・発行した女性向けプロパガンダ雑誌として、社会的・文化的領域で「理想的な」女性像を伝達する有力メディアのひとつだった。

誌面では、ヒトラーの指導者像を形作り、敵と味方のイメージを色濃く描き分け、女性を戦時奉仕活動へと動員するための表象を次々に打ち出していった。一方では、性別役割分業と良妻賢母思想を宣伝し、戦時下の窮乏生活を乗り切るための調理方法や物資の倹約法、娯楽を提供する連載小説などを掲載した。

さらに、ナチ女性団と、権力掌握後にナチ化を受け入れたドイツ女性事業団の活動記事からは、彼女たちが母性主義を逆手に取って、家庭に収まることなく女性の社会的地位向上を目指して大規模な社会活動を展開したことを明らかにして、これまでのナチ女性のイメージを覆す。

本書は、官製女性雑誌のために戦後ドイツの記憶から消し去られた「女性展望」を掘り起こし、ナチス支配下に生きた女性たちの全体像を解明する初の研究成果である。270点の貴重な図版を所収する。

著者プロフィール

桑原 ヒサ子  (クワハラ ヒサコ)  (

1953年、東京都生まれ。学習院大学大学院博士課程修了、敬和学園大学人文学部教授。専攻はドイツ文学、ドイツ現代文化。共著に『時代を映す鏡としての雑誌――18世紀から20世紀の女性・家庭雑誌に表われた時代の精神を辿る』(日本独文学会)、『軍事主義とジェンダー――第二次世界大戦期と現在』(インパクト出版会)、論文に「女性雑誌『コンスタンツェ』Constanzeが伝える敗戦後のドイツ人女性――結婚、シングルマザー、就労、法律」(「人文社会科学研究所年報」第16号)、「ドイツ人女性の戦後――「零時」からの出発」(「人文社会科学研究所年報」第13号)など。

上記内容は本書刊行時のものです。