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疎開体験の戦後文化史 李 承俊(著) - 青弓社
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疎開体験の戦後文化史 (ソカイタイケンノセンゴブンカシ) 帰ラレマセン、勝ツマデハ (カエラレマセンカツマデハ)

歴史・地理
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発行:青弓社
四六判
縦194mm 横132mm 厚さ23mm
重さ 366g
314ページ
上製
定価 3,600円+税
ISBN
978-4-7872-2084-4   COPY
ISBN 13
9784787220844   COPY
ISBN 10h
4-7872-2084-5   COPY
ISBN 10
4787220845   COPY
出版者記号
7872   COPY
Cコード
C0021  
0:一般 0:単行本 21:日本歴史
出版社在庫情報
在庫あり
初版年月日
2019年9月27日
書店発売日
登録日
2019年7月30日
最終更新日
2020年6月15日
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紹介

避難ではなく疎開と呼ばれた銃後の人口移動政策を、敗戦後の文学はどのように語り、位置づけてきたのか。柳田国男、太宰治、石川達三、「内向の世代」のテクストや映画などを糸口にして、銃後の記憶を抱えて戦後を生きた人々の思いを照らし出す。

目次

まえがき

序 章 いま、疎開を考えることは
 1 疎開って何?
 2 二〇一〇年代、戦闘なき戦争映画
 3 疎開体験をさかのぼる

第1部 戦争を体験する疎開――柳田国男、記録と証言、疎開派

第1章 「昭和の楠公父子」になるために――学童集団疎開・七生報国・『先祖の話』
 1 急遽断行される疎開
 2 「学童疎開問答」と「桜井駅の別れ」
 3 受け継がれる「志」――七生報国
 4 七生報国の「本義」――柳田国男『先祖の話』
 5 学童集団疎開の「本義」

第2章 もう一度、空襲と疎開を――『東京大空襲・戦災誌』、「名古屋空襲誌」、「学童疎開ちくさ」
 1 空襲の「証言」、疎開の「証言」
 2 戦争体験としての空襲体験――『東京大空襲・戦災誌』
 3 空襲から疎開へ――『東京大空襲・戦災誌』、「名古屋空襲誌」
 4 戦争体験としての疎開体験は?――「学童疎開ちくさ」
 5 体験の捉え方の相違
 6 あってはならない相違
 7 一元化の欲望

第3章 戦中派と戦後派のはざまで――疎開派という世代
 1 かつて疎開派があった
 2 疎開派が立ち上がる――戦中派に異議あり
 3 疎開派が走りだす――世代論を武器に
 4 疎開派がつまずく――戦後派の大江健三郎に異議あり
 5 疎開派を引き上げる

第2部 戦争を体験しない疎開――「内向の世代」・黒井千次・高井有一

第4章 悔恨ではなく、内向する世代の疎開――黒井千次「聖産業週間」、「時の鎖」 
 1 「悔恨共同体」と「内向の世代」
 2 失敗から定位される「内向」――「聖産業週間」1
 3 「自己の空位」に触れ合う労働実験――「聖産業週間」2
 4 「内向」と「世代」の交差――疎開派ではなく
 5 「自己の空位」と対決して――「時の鎖」
 6 「自己批判」を相対化する「自己」

第5章 「不確かな私」のために召喚される疎開体験――高井有一「北の河」
 1 「北の河」と他者の死
 2 疎開派か、「内向の世代」か
 3 「内向の世代」文学の「北の河」
 4 戦争体験と「わだつみの声のない世代」
 5 「私」の疎開体験を凝視する

第6章 疎開体験者の特別な「一証言」――高井有一「少年たちの戦場」からいまを
 1 想像力を動かす余地がない小説
 2 加害者を抱き締めて――視点の移動
 3 被害者の「一証言」――大義名分を捨てる
 4 現代につなげる――時点の移動
 5 一個人の体験の重み――いまに向けて「翻訳」する
 6 いまに、未来に想像力を

第3部 〈田舎と都会〉をさまよう疎開――石川達三・太宰治・坂上弘

第7章 暴き出される疎開と田舎――石川達三「暗い嘆きの谷」
 1 社会派作家の文法
 2 報道される戦争と疎開
 3 記録される疎開/記録されない疎開
 4 石川達三の「歴史」と「記録性」
 5 疎開から田舎の「真実」を暴き出す
 6 〈田舎と都会〉を考える

第8章 東京がら疎開すて来だ「津軽人」が言ってまった…――太宰治「十五年間」「やんぬる哉」など
 1 太宰治の「疎開文学」
 2 発見される出自、「津軽人」
 3 旅人ではなく疎開者として
 4 疎開体験の語りにくさ
 5 田舎ありきの都会/都会ありきの田舎

第9章 疎開を読み替える――戦争体験、〈田舎と都会〉、そして坂上弘
 1 二〇一〇年代の疎開の記憶、その所在は?
 2 われらの戦争体験、子どもの戦争体験
 3 われらの出会い、〈田舎と都会〉の出合い
 4 私と戦争、私と田舎――方法としての坂上弘

初出一覧

あとがき

版元から一言

戦争の裏で、子どもたちを中心に人々は地方への疎開を余儀なくされた。避難ではなく疎開と呼ばれた銃後の人口移動政策を、敗戦後の文学はどのように語り、位置づけてきたのか。疎開に人々は何を思い、どう記憶してきたのか。

柳田国男、太宰治、石川達三、「内向の世代」のテクストや映画を糸口にして、疎開にまつわる様々な資料も使いながら、1945年から戦災を経験した子どもが大人になる70年代までの疎開の描かれ方をたどる。その語りは一様ではなく、いつ疎開を経験したのかという世代の違いや、地方/都市の相違が多様な語りを生み出している。

文学を通して疎開をみたとき、そこに立ち現れるのは敗戦後に突然もたらされた平和な日常への戸惑いであり、幼少期を戦禍のもとに過ごした葛藤である。銃後の記憶を抱えて戦後を生きた人々の思いを照らし出す。

著者プロフィール

李 承俊  (イ スンジュン)  (

1982年、韓国釜山市生まれ。名古屋大学大学院文学研究科人文学専攻博士課程修了。博士(文学)。愛知学院大学教養部非常勤講師。専攻は日本近現代文学、文化史。共著に『敗戦と占領』(臨川書店)、論文に「「自己の空位」に触れ合う労働実験――黒井千次「聖産業週間」論」(「JunCture――超域的日本文化研究」第9号)、「「戦中派」と「戦後派」の狭間で――〈疎開派〉の場合」(「名古屋大学人文学フォーラム」第1号)など。

上記内容は本書刊行時のものです。