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店は生き残れるか
- 初版年月日
- 2018年6月
- 書店発売日
- 2018年7月1日
- 登録日
- 2018年6月7日
- 最終更新日
- 2018年7月9日
紹介
全世界で急成長するECビジネス。その勢いは止まるところを知らない。リアル小売業の未来は閉ざされてしまうのか。著者の答えはノーだ。ECビジネスの死角は何か。リアル小売業の活路はどこにあるか。そして消費者はどう動くのか。流通業の専門コンサルタントが小売業再生の大きなロードマップを描いて見せる。
目次
はじめに
第一章 ECの拡大が招く閉店ラッシュ
ECの拡大はこれからが本番
ECの拡大で店舗はショールーム化する
ECと店舗販売の効率はこんなに違う
米国で広がる閉店ラッシュ
SCは廃墟になるのか
日本でも百貨店やアパレル店の閉店が加速
退店ラッシュを招いた四つの要因
商業施設デベはECの脅威を理解していない
商業施設デベとテナントの生存を賭けた協業へ
[コラム]深刻化するブランド難民
第二章 オムニチャネル戦略は反撃の決定打となるのか
ショールーミングとウェブルーミング
在庫と顧客の一元化が要
ECモール取引の4形態
自社EC体制確立の障害
オムニチャネル戦略の副作用
アマゾンを押し返した家電量販店
[コラム]しまむらのEC進出を阻む事情
第三章 ECを支えるプラットフォーマー
ECの巨人アマゾンとウォルマート
ホールフーズマーケット買収で食品にも橋頭保
アマゾンジャパンはどこまで伸びる
物流関連費が収益を圧迫
ファッションECモールの勢力図
ファッションECの覇者「ZOZO」
屋台骨を支える「ZOZOTOWN」
脱「ZOZOTOWN」一本足を模索
壮大な成長戦略の実現性
覇者だからできる制圧戦略
[コラム]ささげがECの足枷
第四章 ラストワンマイルの担い手
世界一便利で安く正確な宅配インフラ
アマゾンを巡るヤマト運輸/佐川急便の葛藤
値上げに踏み切った宅配業界
クリック&コレクトの拡大
店舗はC&C拠点になるか
返品率はどこまで上がるの?
試着専門サービス拠点という利便
コンビニからTBPPへ
[コラム]コンビニの未来は断捨離が開く
第五章 販物一体が店舗販売を自滅させる
EC出遅れで赤字転落したイケア・ジャパン
セルフサービス神話が足枷となった
“販物一体”流通の欠陥
労働集約型の運営と中央集権組織の非効率性
チェーンストアのECを阻む五つの壁
[コラム]CMIかSMIかVMIか?
第六章 ポストECのニューリテール革命
コストインフレに直面するEC
“百貨店化”するファッションECモール
ニューリテールの台頭
国内でも沸騰するレジレス店舗開発
「amazon Go」はICタグ不要のAI無人精算
本質はレジレスよりキャッシュレス
無人店舗の死角はマテハン
[コラム]「店内撮影禁止」はもう通用しない
第七章 省在庫・無在庫のショールームストア革命
突破口は省在庫・無在庫化
ショールームストアの時代が来る
カタログショールームストアの「Argos」
ZARAのショールーミングストア
ショールームストアのメリット
バックヤードまで無在庫化する受注先行のD2C
カシヤマ・ザ・スマートテーラーの革命
D2Cは既成服にも拡げられる
[コラム]接客までAIで無人化するの?
おわりに
前書きなど
ECが加速度的に拡大して店舗販売が圧迫され大量閉店が広がる今日、顧客に来店と持ち帰りという労働を強い、売場に在庫を積むという物理的な制約に縛られ、高コストで在庫の偏在が避けられない店舗販売は存続を脅かされている。オムニチャネル化は店舗販売の救世主となるのか、はたまたショールーム化を加速してしまうのか、AI装備の無人店舗に取って代わられるか、内外の最新状況に加えて歴史的な経緯も検証し、店舗販売の未来を予見してみたい。
米国ではアマゾン旋風が吹き荒れ遠からずEC店舗小売業に取って代わるのではないかと危惧され、中国では米国をはるかに上回るペースでECが広がる一方でレジレスな無人店舗が台頭し、英国では宅配の壁を超えるクリック&コレクト(ネットで注文して店舗や専門受取所で受け取る)が普及してネットスーパーが定着しショールームストアが台頭しているが、わが国がその波に飲み込まれるのも時間の問題だ。それも2年や3年先という悠長なペースではなく、店舗や小売企業やプラットフォーマー(商業施設デベロッパー屋ECモール事業者)にITやフィンテック。リテール機器/情報機器や物流などさまざまな周辺分野企業も加わって、月だ週だというスピードで急進していくと思われる。
小売業の歴史を振り返れば店舗が主役でなかった時代も長かったし、前世紀の初頭には通信販売が今日に近い盛り上がりを見せた時期さえあったから、店舗販売が小売の脇役に落ちてもなんら不思議はない。小売業は時代の交通・通信・物流手段やライフスタイルのみならず、都市と農村の社会構造、雇用と社会保障の国家政策など、さまざまな要素が絡んで変転していくもので、四半世紀・半世紀というスパンで見れば何もかも一変してしまう。ならば、これからの変転も同様だと腹をくくるべきだろう。
上記内容は本書刊行時のものです。