- ISBN
- 978-4-7808-0225-2
- Cコード
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C0036
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一般 単行本 社会
- 出版社在庫情報
- 在庫あり
- 初版年月日
- 2015年12月4日
- 書店発売日
- 2015年12月4日
- 登録日
- 2015年10月30日
- 最終更新日
- 2021年1月8日
書評掲載情報
2016-07-22 |
週刊読書人
評者: 砂川秀樹=文化人類学者、ゲイ・アクティビスト |
2016-03-25 |
週刊読書人
評者: 砂川秀樹=文化人類学者 |
重版情報
1刷 | 出来予定日: 2015-12-04 |
紹介
今年2015年11月5日、渋谷区・世田谷区で同性パートナーシップ証明の交付が始まった。
渋谷区では一組。世田谷区では七組のカップルが証明書、あるいは宣誓書受領証を受け取った。
日本で初めての同性パートナーシップ制度はなぜ、どのようにして生まれたのか。
渋谷区では、池山世津子(渋谷区教育長)、岡田マリ(渋谷区議会議員)、栗谷順彦(渋谷区議会議員)、桑原敏武(前渋谷区長)、杉山文野、長谷部健(現渋谷区長)、松中権の各氏、世田谷区では、上川あや(世田谷区議会議員)、西川麻実、保坂展人(世田谷区長)の各氏にインタビューを行ない、同性パートナーシップ制度が生まれるまでを追いかけた。
また、渋谷区・世田谷区で証明書の交付、宣誓書受領書の交付を受けるには、どのような手続きが必要か。
渋谷区で必要な合意契約公正証書とはどんな項目で作ればいいのかなど、詳細に解説する。
さらに、渋谷区の条例、条例にいたるまでの議事録の抜粋まとめ、世田谷区の要綱、そして世界の同性婚の動向など、一連のパートナーシップ制度に関わる資料類も掲載。
目次
●第1章 同性パートナーシップ証明はなぜ、いかにして生まれたのか エスムラルダ
渋谷区の場合すべては、いくつかの出会いから始まった
「どうしたらLGBTの人たちに喜んでもらえる?」
検討委員会で何が起こったか
条例成立、そして実施へ
世田谷区の場合世田谷は「性的マイノリティを差別しない」
「要綱」がいかにしてできあがったか
2015年11月5日同性パートナーシップ証明スタート
●第2章 同性パートナーシップ証明手続き編 KIRA
step 1 パートナーシップ証明ってどんなもの?
(1)渋谷区証明書と世田谷区受領証はこんな感じ
(2)渋谷区証明書と世田谷区受領証の違い
(3)婚姻と養子縁組、パートナーシップとの違い
(4)区内の事業者たちに課せられる義務
step 2 パートナーシップ合意書を作ろう!
(1)パートナーシップ合意書ってなに?
(2)どこで作るの?
(3)何歳から作れるの?
step 3 任意後見契約書を作ろう!
(1)任意後見契約書ってなに?
(2)すぐできるの?
(3)いくらかかるの?
(4)どんな内容?
(5)終わりに
●資料
渋谷区議会議事録パートナーシップ関連の議論の要旨
渋谷区男女平等及び多様性を尊重する社会を推進する条例
渋谷区男女平等・多様性社会推進会議の構成及び運営に関する規則
男女平等と多様性を尊重する社会の推進に係る重要事項について
世田谷区パートナーシップの宣誓の取扱いに関する要綱
同性カップルを含む「パートナーシップの公的承認」に関する要望書
諸外国の同性婚制度等の動向──2010年以降を中心に/国立国会図書館調査及び立法考査局行政法務課・鳥澤孝之
●増原裕子さん・東小雪さんが渋谷区に提出したパートナーシップに関する合意契約公正証書
●渋谷区のパートナーシップ証明書のお知らせ
●渋谷区のパートナーシップ証明書発行の手引き
●渋谷区のパートナーシップ証明 任意後見契約・合意契約 公正証書作成の手引き
●相談先専門家一覧
●あとがき
同性パートナーシップ証明ができるまで、を追って/エスムラルダ
大きな一歩に立ち会って/KIRA
●主な参考文献
●協力・プロフィール
前書きなど
あとがき「同性パートナーシップ証明ができるまで、を追って」より
ほんの少し前まで、私の周りのゲイ男性の間で、「日本で同性婚が認められるようになる」ことをリアルにイメージしていた人は、さほど多くなかったように思う。
私自身もそうだった。「いつかはそのような日がくるかもしれない」と漠然と想像してはいたものの、「身近なところにLGBT(この表現をめぐり、昨今、さまざまな議論が交わされているのは承知しているが、今回はセクシュアルマイノリティ全般を指す言葉として、『LGBT』を使わせていただいた)がいる」ことをイメージできる人がまだまだ少ない日本では、文化的にも法的にもクリアするべき課題が多く残されており、「外圧」などよほどのことがないかぎり、同性婚が実現するのに十年はかかるだろう、と考えていた。
(中略)
私自身はいまだに、LGBTのカップルにパートナーシップ制度や結婚制度が認められるべきなのか、明確な答えを導きだせずにいる。
しかし「生き方」の選択肢は、ないよりはあった方がいい。そして、もしかしたら将来、良きパートナーと巡り逢い、「ああ、やはり同性婚もしくは同性パートナーシップが認められていてよかった」と思う日が来るかもしれない――と考えると、やはり今回の渋谷区や世田谷区での「第一歩」を、素直に喜んでおきたい気がする。
制度というのは「生き物」である。
作られた後、実際に運用され、さまざまな人たちの意見や議論にさらされるうちに、少しずつ鍛えられ、変化していく。
同性パートナーシップ証明などはまさに、生まれたてホヤホヤの赤ん坊のようなものである。現時点ではさほど強い思い入れはないとはいえ、LGBT当事者の一人として、せっかく生まれた赤ん坊にはすくすくと育ってほしいし、兄弟姉妹がたくさん増えてくれればいいな、とも思っている。
本書によって、一人でも多くの方に、同性パートナーシップ証明という制度がいかにして生まれたものなのか、どのようなものなのかを知っていただければ、そしてこの新たな制度がより良い形に成長していく助けになれば、望外の喜びである。
エスムラルダ
あとがき「大きな一歩に立ち会って」
同性パートナーシップ証明手続き編のパートを担当させていただきました、司法書士のKIRAと申します。(中略)
当初、「渋谷区の条例成立の本をエスムラルダが出すから、ちょっとその手続きのところだけ書いてみない?」とお声がけいただいたのが事の始まりでした。そのときは、ちょろちょろっと書いてくれたらいいから~みたいな感じだったのと、実際面白そうだなと思ったので安請け合いしてしまったのですが、月日が進むに連れ、「世田谷区の手続きについても載せよう!」「もっとインタビューしよう!」「世界の同性婚事情も入れよう!」「どうせなら条例文も規則も要綱も、手続きのことわかる範囲で全部載せよう!」という流れで、最終的には「渋谷区証明書、世田谷区受領証発行第一号当事者のインタビューまで載せよう!」という、大変盛りだくさんの内容となりました。
(中略)
本当に多くの方々の、多くの偶然が重なり、多くの繋がりによってうまれたこの二種類の制度。条例や要綱成立の裏に秘められた熱い思い。「条例」や「要綱」と、一言で言ってしまえばなんてことのない響きですし、興味がない人たちからすれば、「出生率が下がるからそれはよくないよね」とか、「家族制度崩壊の危機だ」など、無知無関心ゆえに生ずる声も多々ありますが、当事者にとっては本当に大きな第一歩であったと、本書の制作を通じて様々な声を聞き、実感している次第です。また、本書制作中にアジア最大規模とも言われる約8万人規模の台湾のプライドパレードにも参加させていただき、本当に世界にも多くのLGBT当事者がいることを身をもって感じました。
(後略)
KIRA