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韓国スタディーツアー・ガイド
原書: 한홍구와 함께 걷다
- 出版社在庫情報
- 在庫あり
- 初版年月日
- 2020年10月
- 書店発売日
- 2020年10月26日
- 登録日
- 2020年7月1日
- 最終更新日
- 2020年12月2日
紹介
韓国の近現代史の現場を韓国人歴史家が解説して歩きガイドする。
植民地時代や朝鮮戦争の傷跡、民主化運動の歴史など、現在の韓国
につながる史実の意味づけや、日本の影響を大きく受けた近現代史を
批評的に語る。
目次
第1章 「戦争」を記念する場所に「平和」はない
◉ 戦争記念館
第2章 「被害者」と「歴史」が共存する場所
◉ ナヌムの家
第3章 和解できない矛盾の空間
◉ 国立ソウル顕忠院
第4章 朝鮮王朝の象徴であり近代民族受難史の悲劇の象徴
◉ 景福宮
第5章 歴史の現場は今日を映す鏡
◉ 独立公園と西大門刑務所歴史館
第6章 一木一草にも歴史が息づく
◉ 江華島
第7章 未完の革命が葬られている場所
◉ 国立4・19 民主墓地
第8章 ソウル、民主化運動の足跡を追って
◉ 恐怖政治の舞台「南山」と民主化の聖地「明洞聖堂」
第9章 民主主義が生まれた場所
◉ 広場
第10章 外来の文物が上陸していた関門、仁川
◉ チャイナタウンと自由公園
前書きなど
(著者の韓洪九さんによる「日本語版のまえがきに代えて」です。本来は本に入れるべきものですが、刊行後となりましたことをお詫び申し上げます。)
【日本語版のまえがきに代えて】
2009年に韓国語版が出版され、間もなく日本語版の翻訳契約が結ばれましたが、さまざまな理由で翻訳が遅くなりました。私も、在職している聖公会大学で授業の負担が増えたため、この本のよりどころになったフィールドワーク科目の授業を別の先生に任せることになりました。
2020年の夏、すっかり忘れていた日本語版が間もなく出版されるとの知らせを聞き、フィールドワークの本なのでこの10年の間に起きた変化を反映させたほうがいいとの意思を伝えましたが、途中でコミュニケーションの問題が生じました。出版社側で最新の情報が確認できるサイトなどの情報を掲載していますが、本文でこの10年の韓国で起きた意義深い状況の変化をきちんと反映できずに日本語版が出版されることになり、日本の読者に申し訳ない気持ちを禁じ得ません。
とはいえ、もとの本が展示物を一つ一つ説明するというより、大きな枠で事件や現場の歴史的意味を現在の観点からどうとらえたらいいのかに重きを置いていたので、展示物がかなり変わっても、それなりの価値は生きていると思います。
新型コロナウイルス感染症で、日本の読者の皆さんの韓国訪問も容易ではない状況です。現場を訪れる読者に、ぜひ知っておいていただければと思う変更事項を、以下のように簡潔にまとめてみました。
2020年10月27日、ソウルで
韓洪九
・戦争記念館=外部はそのままで、内部はたくさんのお金をかけて展示をリニューアルしましたが、視点は変わっていません。
・ナヌムの家=新しい建物が多く建ち、多くの展示が補完されました。しかし、その間、ハルモニ数人が亡くなり、ナヌムの家も助成金の使用をめぐって不始末が起き、胸が痛みます。
・国立ソウル顕忠院=外形は大きく変わっていませんが、将軍として唯一、兵士墓域に戦友と共に埋葬されている蔡命新将軍の墓域にぜひ行くことをお勧めします。
・景福宮=復元事業によって、新しい建物が多く作られました。揉めに揉めていた光化門の扁額の文字は、朴正煕が揮毫したものが撤去され、1865年に興宣大院君が再建した際の任泰瑛のものに復元されました。しかし、現在の白地に黒い文字のものを、2020年末に本来の黒地に金色の文字に交換する予定です。時代に合わせ、ハングルの扁額にすべきだという主張も持ち上がっています。
・独立公園と西大門刑務所歴史館=独立公園に大きな変化はありませんが、西大門刑務所歴史館の展示は、この本で指摘した内容がほぼ全て反映され大きく変わりました。正体が不明だった女舍の上にあった楼閣も撤去され、新たな展示室が設けられました。
・江華島=江華大橋を渡ってすぐの場所にあった歴史館が富近里の支石墓付近に拡張・移転しましたが、かつての小さいけれど内容が詰まった感じではなくなりました。席毛大橋が開通して普門寺に行きやすくなり、喬桐大橋が開通したことで大龍市場などのちょっとした見所にもアクセスしやすくなりました。
・国立4・19民主墓地=大きな変化はありません。
・南山と明洞聖堂=南山の入り口から説明を始めると、1970年代に悪名高き拷問の現場だった南山の中央情報部6局は、もとの建物が取り壊され、現在、人権広場と人権展示室を作るためにリニューアルされているところです。日韓強制併合の現場だったかつての統監官邸の場所には「日本軍慰安婦の記憶の場」が作られ、林権助(1905年の乙巳勒約〔第2次日韓協約〕当時の駐韓日本公使)の銅像の台座に使われていた板石4つのうち3つが見つかり、これを逆さまにした「逆さまにした銅像」が作られました。
・広場=広場はそのままですが、とてつもない歴史が新たに作られました。2016~2017年のキャンドル抗争と弾劾の歴史が持つ意味をよく心に留めてください。韓国と日本の近現代史においての最も重要な違いは、民衆抗争の役割だと思います。
・仁川のチャイナタウンと自由公園=中国との交流が促進したことでチャイナタウンはさらに商業化が進みました。多くの新しい建物ができましたが、歴史というよりは資本がより強く感じられます。ジャージャー麺の発祥地である共和春の場所にジャージャー麺博物館ができたことは喜ばしいことです。チャイナタウンに隣接する旧日本租界地が仁川開港場文化地区に指定され、複数の展示場と開港場が作られ、本で紹介したものよりずっと日本風の佇まいになっています。
上記内容は本書刊行時のものです。