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船上の助産師 小島 毬奈(著/文) - ほんの木
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船上の助産師 (センジョウノジョサンシ)

社会一般
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発行:ほんの木
四六判
並製
価格 1,300円+税
ISBN
978-4-7752-0149-7   COPY
ISBN 13
9784775201497   COPY
ISBN 10h
4-7752-0149-2   COPY
ISBN 10
4775201492   COPY
出版者記号
7752   COPY
Cコード
C0030  
0:一般 0:単行本 30:社会科学総記
出版社在庫情報
在庫あり
書店発売日
登録日
2024年6月12日
最終更新日
2024年9月27日
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紹介

都内の病院でごく普通の助産師、看護師として働いていた著者が、なぜ今地中海で遭難ボート救助船の助産師として働くことになったのか? そこから見えてくる日本は「住みやすいけど、生きにくかった」。2013年から9年間で17回、アフリカや紛争地や地中海の難民支援に赴き、まさに今、救助船でただ一人の日本人助産師として活動する40歳の著者、毬奈さんの等身大でリアルな手記。

目次

船上の助産師 目次

序章 まさか船で働く日が来るなんて

1章 落ちこぼれ看護学生が救助船に乗るまで
・地獄の看護学校生活
・え、面接に受かってしまった!
・救助船が出てきた背景

2章 てんやわんやの救助船
・助産師としてNGOで働く(再び船に乗るまで)
・待ちに待った救助船にカムバック!
・遭難ボートの捜索、救助
・安全な港を探し求めて
・移民政策の問題点
・船の上で喧嘩が始まる
・コロナ禍で救助船の仕事が決まる!
・ドイツの船は私には合わない
・躊躇した自分を恥じた
・エナジーバンパイアたち
・船が拘留された
・チャンスの神様にうしろ髪はない
・民族、混ぜるな危険
・大変だった、新しい救助船ジオバレンツ号
・Mom, I am safe(ママ、僕は生きてるよ)
・逃走した! 最後まで波乱の下船作業
・ハメられる救助船

3章 垣間見える人間模様
・赤ちゃんが生まれる
・組織ぐるみの人身売買
・ジャーナリストめ!
・多国籍の看護師と働くということ
・広報にも戦術があるのか
・性暴力の証明書
・船酔いしないの?

コラム 改名のかかった船舶試験

4章 救助した女性に会いにパリへ
・シングルマザ―のルーシー
・難民申請がおりた!

5章 戦地に赴く(ウクライナ)
・愛しの二の腕
・戦争を肌で感じる
・身近な戦争ビジネス
・空襲警報はアプリ
・観光としての人道支援はアカン!
・明日、何があるかわからない

6章 アフリカのお産(カメルーン)
・ハレルヤ! 聖歌のクオリティ
・普通分娩か帝王切開か
・銃声で目覚める朝

コラム 日本の変な産科界隈

7章 アフリカのお産(ベナン)
・アヤ
・おつりない問題から見える、ヨボ(白人)の足元
・ベナンでの生活
・容赦ないベナンの助産師
・衝撃! 殴られる産婦

コラム 絶望的な日本の避妊、中絶、性教育

8章 自分自身の旗を立てよ
・日本は住みやすいけど、生きにくい
・日本の治安の良さは誇るべき
・日本は鎖国だ
・リアルは一つも伝わらない
・今の私にできること
・なぜ船に戻るのか

おわりに
小島毬奈 活動記録

前書きなど

序章 まさか船で働く日が来るなんて

 2024年6月、いつものコンバースの靴を履き、空港へ向かう。助産師になったあの春、まさか海外、しかも船で働く日が来るなんて思ってもいなかった。東京の病院で鬱々と働き、洗濯機の中でぐるぐる回されるように働いていた。年々感じる自分の成長の鈍化、増える責任と女社会特有のややこしい上下関係に心はいつもぐったりしていた。ここから逃げ出す方法はないかと、夜勤中に海外で働く方法をネット検索していた日々が今では懐かしい。
 2014年から、助産師としてアフリカ、アジア、中東、ウクライナなど紛争地で働いた。その中で、2016年に初めて行った救助船での仕事が、人生のターニングポイントとなった。助産師として働く自分の着地点の一つが地中海の船だったのは自分でも意外だ。
 北アフリカのリビアから、ヨーロッパへ行くために地中海を渡る人々の船は30年前から存在したが、2012年、カダフィー政権の崩壊によって激増した。
 2013年、「ランペドゥーザの悲劇」と呼ばれる、リビアからイタリアに向けて渡る移民の船が沈没し360人以上が死亡する事故が起きた。「二度とこんなことが起きてはいけない。ヨーロッパは目を閉じている場合ではない」と当時の欧州長、ジョゼ・マヌエル・バローゾは言った。しかし、2015年には、百万人を超える人々が海を渡った。いまだに苦しい立場にある人たちは、密航業者に乗せられたボートで海に放り出され、危険を顧みずに海を渡り続けている。
 自然は人間よりもはるかに強い。青く広がる空と灼熱の太陽、大雨や雷が連れてくる高波、次々と見せる自然の表情に船上の私たちは、なす術もなく翻弄される。2015年から今まで2万8千人以上が地中海で亡くなっている。海のベッドで安らかに眠れるわけもなく、遺体が回収されることもない。船から見る夕日は息を呑むほど美しい。しかし、同じ場所で繰り返されている事実は言葉にならないほど悲惨な状況だ。それでも、私はまた船に戻る。
 人道支援の活動を通して、世界の矛盾をこの目で見てきた。ときには理不尽な政治に腹を立て、自分自身のやっていることが正しいのか葛藤したり、救助した人たちに本気でムカついたり、人種差別を受けたり、組織内政治に呆れたり……。そうかと思うと、たまには笑ってしまうような失敗も。そこには、たくさんの人間ドラマがある。人道支援の現場は、世間一般に映るような「可哀想な人を助けて偉い」という単純な話ではない。
 自分のしている仕事によって作られる世界が、ちゃんと自分の理想に続いていくのかどうかはわからない。それでも、ライフジャケットとヘルメットに安全靴という、全く助産師っぽくない格好で今日も私は甲板に立つ。

版元から一言

「9月に著者の活動がテレビでドキュメント報道の予定あり」(取材の打診が入っています)詳細は、確定次第お知らせします。

9月8日のテレビ「情熱大陸」で著者、小島毬奈さんの『船上の助産師』活動が紹介されます。

著者プロフィール

小島 毬奈  (コジマ マリナ)  (著/文

1984年、東京都生まれ。オーストラリア・メルポルンの高校卒業後帰国。2005年に看護学校へ進学。2008年看護学校卒業後、助産学校へ進学。2009年都内の病院の産婦人科に就職。2013年から紛争地で助産師として医療活動を始める。2016年より地中海捜索救助船にて活動。9年間で17回勤務。

小島 毬奈  (コジマ マリナ)  (著/文

1984年、東京都生まれ。オーストラリア・メルポルンの高校卒業後帰国。2005年に看護学校へ進学。2008年看護学校卒業後、助産学校へ進学。2009年都内の病院の産婦人科に就職。2013年から紛争地で助産師として医療活動を始める。2016年より地中海捜索救助船にて活動。9年間で17回勤務。

上記内容は本書刊行時のものです。