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たのしいマット運動への道
- 出版社在庫情報
- 絶版
- 初版年月日
- 2018年5月
- 書店発売日
- 2018年6月5日
- 登録日
- 2018年4月25日
- 最終更新日
- 2025年5月30日
紹介
月刊『たのしい授業』に連載され,大好評を博した連載がついに1冊の本に!倒立,前転,後転,側転,側方倒立回転,そして前方倒立回転跳び……。敬遠されがちなマット運動がたのしく学べるヒントが満載。
問題形式でいろいろな動きにチャレンジしているうちに,いつの間にかできるようになる,「なんとなくできる」で進む新しい形の体育の授業がここに!
授業で使えるフリップや実際に動きを見ることができる実演動画を収録したDVDなど,付録も充実!
目次
はじめに
マット運動プラン①〈倒立〉
〈倒立〉解説
マット運動プラン〈倒立〉を実施してみて……高畠 謙
マット運動プラン②〈前転〉
〈前転〉解説
マット運動プラン③〈後転〉
〈後転〉解説
転がることをたのしむ〈後転〉の授業……本間 昇
マット運動プラン④〈側転〉
〈側転〉解説
マット運動プラン⑤〈側方倒立回転〉
〈側方倒立回転〉解説
マット運動プラン⑥〈前方倒立回転とび〉
〈前方倒立回転とび〉解説
すぐに使えるマット運動カード
「マット運動カード」で授業をしてみて……黄 絵麻
主な引用・参考文献
謝辞
あとがき……坪郷正徳
前書きなど
■はじめに――「器械運動の授業」のむずかしさ
あなたは,マット運動や鉄棒,跳び箱といった「器械運動の授業」でお困りではありませんか。僕は小学生の頃から体操競技をやっていて,中学,高校,大学,社会人になっても,ずっと体操競技の大会に出ているほど,器械運動が好きな人間です。
ところが,十数年前に小学校の教師になったとき,一番「苦手だなぁ」と思った授業が,この「器械運動の授業」だったのです。高学年の子たちと授業を始めようとすると,大多数の子が「やだ~!」と叫び,数人の子だけが熱烈に「やりたい!」と言う。まずはこのギャップに苦しめられました。得意な子はどんどん技をやりたがり,苦手な子は何にもできずに固まっている。そんな状態からのスタートでした。
ずっと体操競技をやってきた僕は,技を指導するための「補助」ができました。「補助ができればさぞ授業もラクだったのでは」と思われがちですが,学校での一斉授業において,補助の技術はほとんど役に立ちません。技を補助するとなると,それは個別指導であり,それを始めてしまうと,後の十数人は「並んで見ている」ということになってしまいます。ひどい場合,担任が補助に奮闘しているあいだ目が届かないことをいいことに遊びはじめる子どもたちが出てきて,授業のカタチをなさなくなってしまうのです。
■低学年には人気の「器械運動」
ところが,その後,低学年の子どもたちを担任したときに感じたのは,「低学年では多くの子どもたちが器械運動の授業が好きなんだ」ということでした。どんな動きにも興味を示して,とても意欲的に取り組んでくれるのです。そんな子どもたちの姿を知ったとき,「もしかすると,子どもたちは学年が上がるごとに器械運動がキライになっていくのではないか」と思いました。そして,全国各地で行われている「器械運動の授業についてのアンケート調査」を確かめてみると,「低学年では〈器械運動の授業が好き〉という割合が高いが,高学年になるに従って〈好き〉という割合が下がり,逆に〈嫌い〉の割合が高くなる」という現象が,どこの学校でも見られることがわかりました。
どうして,高学年になるにしたがって,器械運動がキライになってしまうのでしょう? 原因はいろいろあるでしょうが,「低学年のうちにできるようにしてあげなければ……」という使命感のもとで行われる〈しごき〉のような授業のせいではないか……。そんな仮説が,頭の中をよぎりました。そこには,「体が小さいうちにやっておかなければ,大きくなってからでは大変だ」と思う教師の優しさがあったり,「〈低学年の時の担任は何をしていたんだ〉と言われてしまったらどうしよう」などというプレッシャーがあったりするのかもしれません。
一方,子どもたちの方にも,やってみたいけれど,「怖い」「痛そう」「自分だけできなかったらどうしよう」といったプレッシャーがあります。そんな双方の思惑の違いと,「〈たのしい器械運動を実現する教材〉の不在」という二つの要因によって,器械運動の授業からどんどん〈笑顔〉がなくなっていってしまっているのではないか。そんなふうに思いました。
■器械運動を学校で学ぶ意義は?
そもそも,生きていく上で器械運動ができなくて困ることなんてありません。それなのに,なぜ学校では毎年のように,器械運動の授業があるのでしょうか。僕は,以前からこのことがずっと疑問でした。体操競技が大好きな僕ですが,「全員にムリヤリできるようにさせる授業なんて,意味のないものだ」と思っていたのです。
そこで,「どうして器械運動が学校教育の中に取り入れられてきたのか」「どうしてなくならずに今に至っているのか」などに興味をもって調べているうちに,ある〈考え方〉に行き着きました。それは,「器械運動で扱われている〈技〉や〈動き〉は,もともとは〈たのしい遊び〉だった」ということです。人類の歴史をさかのぼってみると,大昔からずっと,逆立ちをしたり,前転をしたり,棒にぶら下がって回ってみたり,馬跳びをしたりするのは,子どもたちの遊びだったのです。低学年の子どもたちが器械運動の授業に意欲的なのは,その運動自体が魅力的だったからなのではないでしょうか。それに気づいた僕は,「どうしたら運動自体の魅力を損なわず,〈たのしい器械運動の授業〉を実現することができるのか」ということを考えながら,子どもたちとの授業の中で試行錯誤を繰り返しました。
器械運動の授業を扱う指導書は,たくさん出版されています。しかしながら,「これは自分の授業でもそのまま使えるぞ」と思った本はほとんどありませんでした。そこで,たくさんの本の中から,どの教材だったら「子どもたちがイヤがらず,たのしんでくれるのか」「補助なしの一斉授業で,自分のレベルに合わせて取り組むことができるのか」などを確かめることから研究を始めました。そのような授業実験,研究を重ねて十数年,「この順番で,こんな授業を行えば,子どもたちはたのしみながら取り組み,力を付けてくれるだろう」ということがわかってきました。
■体育の《授業書》作りを目指して
この連載では,器械運動の授業の中でも「マット運動」を〈授業プラン〉の形にまとめたものを紹介していきます。提示された問題に対して,「自分でもできるかな?」と試しているうちに,いつの間にか「できる」に近づいていく授業……そんな新しい授業のカタチを提案します。
これを読みながら個人的に授業を体験してもいいですが,みんなで試しながらやることで,たのしくできたり,なんとなくできてしまったり,友だちの動きを見ることで思いもよらない発見があったりと,自分一人では気づけないようなことが体験できると思います。それらの体験は,科学をたのしむことができる「仮説実験授業」の中で,みんなで予想して,討論して,実験する中で培われるものに似ている気がします。本物の科学が人々の〈たのしみごと〉であったように,身体が新しい動きを手に入れることもまた,とても贅沢な〈たのしみごと〉だといえるのではないでしょうか。学校の授業はもちろん,自宅で家族みんなと試してみることも視野に入れて作っています。
仮説実験授業の授業書の完成度にはほど遠いものですが,とりあえず〈授業プラン〉の形にして世に問わせていただきます。いつか,誰もがたのしめる《授業書》の形になるまで,使ってくださるみなさんの反応を確かめながら,大事に育てていきたいと思っています。
版元から一言
スモールステップでいろいろな動きにチャレンジしながらいつの間にか色々なマット運動の技ができるようになる,世界初の「なんとなくできる体育の本」です!
授業時に子どもたちに分かりやすく動きを説明できるフリップや,子どもたちが自分で達成度合いをチェックできる「マット運動カード」,一つ一つの動きを実際に確認できる動画などを収録したDVDつき!
上記内容は本書刊行時のものです。