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スポーツと遺伝子ドーピングを問う
技術の現在から倫理的問題まで
- 初版年月日
- 2022年1月30日
- 書店発売日
- 2022年2月1日
- 登録日
- 2022年1月6日
- 最終更新日
- 2022年1月26日
紹介
金メダリストを創ることのいったい何が問題なのか?
遺伝子操作技術の急速な進化により、「遺伝子ドーピング」への懸念が高まっている。スポーツの価値を揺るがす遺伝子ドーピングが現実となった時、アスリートの身体や社会にどのような影響をおよぼし、どのような問題が起こるのか。私たちはいま遺伝子ドーピングとどのように向き合うべきかを問う。巻末には中村桂子氏へのロングインタビュー収録
「本書の最大の特徴は,遺伝子操作技術や遺伝子ドーピングの検査手法といった医学・生命科学的な知見から,スポーツ倫理・哲学や人間のいのちの哲学まで,学際的な内容が取り上げられていることである。この本が1 冊あれば,遺伝子ドーピングに関わる問題についてさまざまな視点から読み解き,理解を深めることができるだろう。」(「総説」より)
目次
総説 なぜいま遺伝子ドーピングを問うのか 森岡正博
Ⅰ 遺伝子ドーピングの最新技術
1 遺伝子操作技術とドーピング問題 石井哲也
はじめに
1 ドーピングと遺伝子操作技術
2 遺伝子操作技術を使うドーピング
3 遺伝子ドーピングの問題
おわりに
2 遺伝子ドーピングの検査手法の開発研究について 竹越一博
はじめに
1 競技スポーツ界におけるドーピング検査
2 遺伝子ドーピングへの対応の重要性
3 遺伝子ドーピングとは――その検出困難性について
4 遺伝子ドーピングの低侵襲的検出法の開発――リキッドバイオプシーのコンセプトの応用
5 検査の実装を考えた場合の倫理的問題について
おわりに
3 馬産業における遺伝子操作技術と遺伝子ドーピング問題 戸崎晃明
はじめに
1 人類とウマとの関係
2 競馬産業のドーピング・コントロール
3 遺伝子ドーピング・コントロール
4 ウマの遺伝学的研究と利用
5 最新技術の馬産業への応用と動物の権利
おわりに
Ⅱ スポーツ倫理・哲学からみた遺伝子ドーピング
1 遺伝子ドーピングの倫理学 竹村瑞穂
はじめに
1 スポーツ界におけるドーピングの基礎知識
2 遺伝子ドーピングの登場とスポーツ界の対応
3 変化する遺伝子ドーピングの定義
4 遺伝子ドーピングの倫理学
5 「スポーツの価値」から,「スポーツをすることの意味の哲学」へ
おわりに
2 スポーツの意味と哲学 関根正美
はじめに
1 遺伝子ドーピングによるシナリオ
2 スポーツの意味へ――卓越と達成の世界
3 エンハンスメントと贈与・達成の哲学
4 スポーツの多元性――ライフヒストリーとしてのスポーツ
おわりに
3 遺伝子テクノロジーとスポーツ――新しい倫理的問題 アンディ・ミアー(佐良土茂樹 訳)
1 (スポーツを目的とした)遺伝子操作を考えるための理論的根拠
2 遺伝子操作を受けたアスリートに関するいくつかの想定
3 スポーツのための遺伝子改良という概念を定める
4 遺伝子改良は非倫理的か?
5 以上のことはスポーツにおけるパフォーマンスエンハンスメントについて私たちに何を伝えているのか?
6 以上のことはスポーツをどこに向かわせるのか?
7 結語――新しい倫理的な問題
COLUMN 我が国におけるスポーツと遺伝に関する研究,その新しい試み
――LEGACY2020 プロジェクトについて 大岩奈青
Ⅲ 生命の尊厳と哲学
1 エンハンスメントと人生における幸福のかたち 立花幸司
はじめに
1 人間の3つの能力
2 能力を高めるための努力
3 能力を高める努力の不確実性
4 確実に能力を高める手段としてのエンハンスメント
5 人はエンハンスメントをすべきなのか
6 2 つの勝負――競争と克己
おわりに
2 人間の欲望の哲学 坂本拓弥
はじめに
1 なぜ欲望が問題となるのか?
2 剰余としての欲望
3 三角形的欲望とその模倣的性格
4 遺伝子を操作したい欲望の裏側にあるもの
おわりに――いま,〈やせ我慢〉の倫理は可能か?
3 人間のいのちの尊厳を考える――人格概念の捉え直しを通して 片山善博
はじめに
1 現代の尊厳論
2 カントの尊厳論――人格に基づく尊厳とは
3 ヘーゲルの人格論――人格の拡張
4 あらためて人間のいのちの尊厳について
おわりに
COLUMN アスリートとしてドーピング問題に向き合う 齋藤里香
付録 中村桂子先生 ロングインタビュー
・アメリカで誕生したライフサイエンスと生命倫理学
・日本における生命科学――ライフサイエンスとの違い
・組換えDNA 技術の誕生
・人間にとってスポーツの意味とは
・ゲノムで生命を語ることの難しさ
・ゲノムに規格はない――生きものを「トータルで」考える
あとがき
上記内容は本書刊行時のものです。