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生活の豊かさをどう捉えるか
生活水準をめぐる経済学と哲学の対話
- 初版年月日
- 2021年12月10日
- 書店発売日
- 2021年12月13日
- 登録日
- 2021年11月18日
- 最終更新日
- 2021年11月18日
書評掲載情報
2022-02-06 |
読売新聞
朝刊 評者: 牧野邦昭(慶應義塾大学教授・経済学者) |
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紹介
なぜケイパビリティ・アプローチが必要なのか という、その背景を明確化。
本書は、アマルティア・センが1985年に行ったタナー・レクチャーを書籍化したものであり、センの2つの講演に加え、4名の討論者からのコメント、およびセンからのリプライによって構成されている。
討論者には、経済指標の専門家(J.ミュエルバウアー)や哲学の大家(B.ウィリアムズ)が含まれ、非常に射程の広い対話を読むことができる。
アマルティア・センのレクチャーの論点についてやさしく道案内をした訳者解説、巻末付録としてアマルティア・セン邦訳書リスト付き。
【「訳者まえがき」より(一部抜粋)】
本書はAmartya Sen, John Muellbauer, Ravi Kanbur, Keith Hart and Bernard Williams, The Standard of Living, edited by Geoffrey Hawthorn, Cambridge University Press, 1987. の全訳である。この本のもとになっているのは、人文学においてもっとも権威ある招待講義の一つとされている「タナー・レクチャー」であり、本書はアマルティア・センによる二つのレクチャーに加え、四名の討論者からのコメント、およびセンからのリプライによって構成されている。
本書に収められているのは、センが一九八五年にケンブリッジ大学で行ったタナー・レクチャーの内容であるが、センがタナー・レクチャーを行ったのはこの時が二回目である。最初のタナー・レクチャーは「何の平等か?(Equalituy of What?)」と題され、一九七九年にスタンフォード大学で行われた。〔・・・中略・・・〕「何の平等か?」はセンの数多くの学問的貢献の中でも、一つの決定的な論文として位置付けられていると言って良いだろう。というのも、この論文においてセンの重要な理論的主張の一つであるケイパビリティ・アプローチの考え方が初めて提示されたからである。これに続き、一九八〇年代のセンはケイパビリティ・アプローチを積極的に展開・深化させていったのであり、そんな中で行われた彼の二回目のタナー・レクチャーは、ケイパビリティについての彼の研究のさらなる進展を示すものと位置付けられるだろう。ただし、「生活水準」というテーマを掲げた二回目のタナー・レクチャーは、ケイパビリティ・アプローチそのものについて論じるものではない。むしろ、なぜケイパビリティ・アプローチが必要なのかという、その背景の明確化が主題とされている。センのケイパビリティ・アプローチについて論じた論文・著作は、本人の手によるものはもちろん研究書・研究論文のレベルまですでに様々なものがあるが、ケイパビリティ・アプローチのそもそもの問題関心、およびそれに取り組む上でのセン自身の態度が明確に論じられている(そして討論者によってそれに対する疑問点も指摘されている)点に、本書の独自性があると言えよう。
目次
訳者まえがき
凡 例
序 論 (ジェフリー・ホーソン)
レクチャー1:概念と批判 (アマルティア・セン)
レクチャー2:生活とケイパビリティ (アマルティア・セン)
生活水準をめぐるセン教授の議論について (ジョン・ミュールバウアー)
生活水準――不確実性・不平等・機会 (ラヴィ・カンブール)
コモディティ化と生活水準 (キース・ハート)
生活水準――利益とケイパビリティ (バーナード・ウィリアムズ)
リプライ (アマルティア・セン)
訳者解説 生活水準をめぐる哲学と経済学――現実を見据えて視野を広げる (玉手慎太郎)
付 録 アマルティア・セン邦訳書リスト
訳者あとがき
参照文献一覧
上記内容は本書刊行時のものです。