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中国に生きた外国人 不思議ホテル北京友誼賓館 小池 晴子(著) - 径書房
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中国に生きた外国人 不思議ホテル北京友誼賓館 (チュウゴクニイキタガイコクジン フシギホテルペキンユウギヒンカン)

社会一般
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発行:径書房
四六判
縦195mm 横138mm 厚さ21mm
重さ 340g
224ページ
上製
定価 1,900円+税
ISBN
978-4-7705-0202-5   COPY
ISBN 13
9784770502025   COPY
ISBN 10h
4-7705-0202-8   COPY
ISBN 10
4770502028   COPY
出版者記号
7705   COPY
Cコード
C0036  
0:一般 0:単行本 36:社会
出版社在庫情報
在庫僅少
初版年月日
2009年2月
書店発売日
登録日
2010年2月18日
最終更新日
2010年9月21日
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書評掲載情報

2009-04-26 朝日新聞
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紹介

北京にあった外国人専用・長期滞在型ホテル。広大な敷地に囲まれ、外界から隔てられたそのホテルには、数奇な運命を生きた米国人・英国人・日本人などが、中国政府から「老専家」の称号を与えられ、手厚く保護されて暮らしていた……。

敗戦後、抗米武装闘争路線を推進した日本共産党が、中国で立ち上げた秘密組織「北京機関」。なかば強制的にその機関で働かされた日本人。
原爆製造に関わりながらも、それを日本に投下したアメリカ政府に絶望。国を捨ててFBIからスパイとして追われたアメリカの女性原子物理学者。
中国の文学作品を英訳して世界に送り出したイギリス人。中国で起きていることを世界に向けて発信しつづけたポーランド生まれのジャーナリスト。

毛沢東のプロレタリア革命に湧いた中国。文化大革命の狂気に曝された中国。改革開放に舵を切った中国──。貧しさに耐え、投獄されたり家族を失ったりしながらも、激動の時代をくぐり抜けて生きた彼らは、いま老いて歴史のなかに消え去ろうとしている。
偶然、北京友誼賓館に滞在することになった著者が、軽やかな視点で描き出す中国に生きた外国人たち。国家や思想に翻弄され、飲み込まれながら生きざるを得ない私たちに、彼らが語りかけるものとはなにか。

目次

プロローグ
第一部 北京友誼賓館
  北京再訪
  北京友誼賓館との出会い
  不思議な空間、北京友誼賓館
  北京友誼賓館の沿革
  北京友誼賓館の日常…………私の教師生活
  専家…………北京友誼賓館の住人たち
  日本人専家との交友
  北京友誼賓館、内と外
  渡辺はま子のガウンと有吉佐和子のジャケット
  北京友誼賓館の行事…………専家局主催と友誼賓館主催
  のどかな映画上映会
  外国人との交友
  北京のキリスト教会
  中国語クラス…………日本人が中国語を学ぶ落とし穴
  誕生日
  改革開放と自転車騒動
  庭園の茶会…………エプシュタイン氏との出会い
  専家いろいろ
  日本人専家の旅
  中国人の友情…………恐怖(?)の好朋友
  前期高齢者ファッションショー
▼老専家の風景
  はるかな友 ベティ・チャンドラー
  グラディス・楊の記憶
  ベティの唐三彩
  横川辰子女史の葬儀
  君子蘭のゆくえ…………岡崎兼吉先生

第二部 老専家の回想録
▼川越敏孝先生の回想
  京都帝大を卒業して大蔵省入省
  入隊と敗戦、運命をわけた一〇分
  延吉から牡丹江へ
  ロシア語が身を助ける
  中国共産党への傾斜
  反革命鎮圧運動
  日本共産党秘密組織「北京機関」
  中国外文出版局に勤務
  文化大革命と長男の死
  日本へ一時帰国
  改稿について
  川越先生との別れ
▼幻の原子物理学者 ジョアン・ヒントン
  マンハッタン計画への参加と決別
  核廃絶を訴える
  ジョアン・ヒントンをモデルとした小説?
  降って湧いたジョアンの来日
  二〇〇八年夏 広島、長崎
エピローグ
  おわりに
  参考文献

前書きなど

 プロレタリア文化大革命が終わって、中国が西側諸国との国交を回復し始めた一九七〇年代後半から八〇年代にかけて、外国からの賓客および一般旅行者を受け入れる代表的なホテルが北京には二つあった。「北京飯店」と「北京友誼賓館(ぺきんゆうぎひんかん)」である。

 このうち「北京飯店」は、北京の心臓部を東西に走る最も重要な道路「長安街」と、北京随一の繁華街「王府井」が交差する地点に一九〇三年に建てられた。隣は「天安門」とそれに続く「故宮」、目の前に「天安門広場」が広がる。名門中の名門ホテルで、一九四九年の新中国建国以後は、国営ホテルとして各国首脳や著名人を受け入れ、重要な国際会議なども開かれてきた。北京を代表する顔としてのきらびやかな歴史を誇っている。当時、北京を訪れる旅行者のほとんどは、このホテルに泊まりたいと憬れていたものだ。

 これに対して「北京友誼賓館」は、ずっと地味な存在だった。いまでこそ「三環路」の内側で、すぐ近くを地下鉄が走り、市の中心圏内といってもおかしくないほどだが、一九五四年の創建当時は「西郊」と呼ばれる地域であった。「西郊」とは、北京旧市街をとりまく城壁(現在はとりこわされて、跡地に「二環路」が走っている)の西の外であることを意味する。やはりプロレタリア文化大革命以後、外国からの一般旅行者を受け入れたが、立地からいっても、格からいっても、「北京飯店」と比較して「二流」とみなされていたことは否めない。知名度も低かった。
 この「北京友誼賓館」で、私は一九九三年から二〇〇〇年のあいだに、二回にわたり合計五年間を過ごした。そして「北京飯店」とは一味違う特異な歴史を知り、そこに住む、世に知られざる人々と関わっていくことになった。

版元から一言

 中国に「北京友誼賓館」という外国人専用・長期滞在型ホテルがあると聞いたのは、2007年のことだった。
 ノーベル文学賞を受賞したパール・バックが描いた原爆小説『神の火を制御せよ』を刊行した直後、朝日新聞記者より「ひょっとしたら『神の火を制御せよ』の主人公ジェーン・アールは、実在する女性がモデルだったのではないか」という情報がもたらされた。驚いた。完全な創作だと思っていたからだ。原爆製造に関わりながらも投下に抗議し、一人、中国に亡命したアメリカ人女性原子物理学者ジョアン・ヒントン──。間違いない。彼女がモデルだと確信した私たちは、ジョアン・ヒントンの存在を日本に伝えた小池晴子なる女性をたずねた。
 ひとしきりジョアン・ヒントンのことを聞いたあと、小池さんが話し始めた。「中国に『北京友誼賓館』というホテルがあって……」。彼女が話す言葉を聞いているうちに、高い天井から下がっている友誼賓館のシルクのカーテンが、風に吹かれて翻るのが見えた。すぐに執筆をと、勢い込んで話した。
 北京友誼賓館はいまも中国に実在している。しかし私たちが小池さんの原稿のなかで訪れたホテルは、遠い幻の国にあるかのようだ──。

著者プロフィール

小池 晴子  (コイケ ハルコ)  (

早稲田大学卒。日本観光通訳協会会員、翻訳業。
観光通訳、海外旅行旅程管理者を経て1986年より東邦学園短期大学講師、国際プログラム担当。1993年より5年間、北京連合大学旅游学院にて「日本語」と「観光学」を教える。
主な翻訳に、J・R・ブラック著、ねずまさしと共訳『ヤング・ジャパン』全3巻(1970、平凡社東洋文庫)、L・カルドゥッチ著『中国 偉大な世界』(2003、五洲伝播社)、阿南・ヴァージニア・史代著『円仁慈覚大師の足跡を訪ねて――今よみがえる唐代中国の旅』、同『北京千年 樹と石と水の物語』(いずれも2007、ランダムハウス講談社)など。著書に「日本語による北京案内」(2006、中国旅游出版社)ほか旅行エッセイなど。

上記内容は本書刊行時のものです。