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我々はどこへ行くのか 川良 浩和(著) - 径書房
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我々はどこへ行くのか (ワレワレハドコヘイクノカ) あるドキュメンタリストからのメッセージ

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発行:径書房
四六判
縦194mm 横139mm 厚さ27mm
重さ 525g
320ページ
上製
定価 2,200 円+税   2,420 円(税込)
ISBN
978-4-7705-0194-3   COPY
ISBN 13
9784770501943   COPY
ISBN 10h
4-7705-0194-3   COPY
ISBN 10
4770501943   COPY
出版者記号
7705   COPY
Cコード
C0036  
0:一般 0:単行本 36:社会
出版社在庫情報
在庫あり
初版年月日
2006年7月
書店発売日
登録日
2010年2月18日
最終更新日
2013年8月21日
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紹介

世界を駆けめぐり、NHKスペシャルを150本も作った日本を代表するドキュメンタリストの本。
──世界をこれだけのスケールで見つめたドキュメンタリストは、ほかにいない。
──世界をこれだけのスケールで描いた本は、ほかにはない。
私たちは毎日、あらゆる出来事についての膨大な報道に接する。だが、膨大な断片になった報道にいくら接しても、私たちは世界を知ることはできない。世界観を持てない私たちは、場当たり的な反応だけで世界と接し、次第に孤立を深めている。
私たちはなぜ、世界を知らなければならないのだろう。
日本が世界のなかで存在感を示せず、漂っているのはなぜだろう。
そのなかで生きる私たちひとりひとりの孤独感や浮遊感は、どこから生まれてくるのだろう。
日本の置かれた現状と、私たちが抱えている心もとなさは、同じ根っこから発生しているのではないだろうか。
膨大で断片的な報道は、世界観を持つことができない私たちの有り様をそのままに表している。
報道とはなにか。
世界を理解するとはどういうことなのか。
私たち人間はなにを求めて生きているのか。
世界で起きたあらゆる事件を語りながら、川良浩和は、同時にそれを読者に語りかけている。
いま、これだけのものが書けるドキュメンタリストは、どこにもいない。

目次

序章 時の花びらが落ちて、ドキュメンタリーが生まれる 007
第1章 1989年、平成元年の衝撃
昭和から平成へ・・・天皇の戦争責任をめぐる手紙 018
ベルリンの壁崩壊・・・歴史の美しい火花 035
ヨーロッパ・ピクニック・・・鉄条網に咲いた赤いバラ 040
ショプロンの門・・・ハンガリーの草原を人々が駆け抜け、物語は続いた 045
いま世界が動く・・・冷戦後、初めての戦争報道 055
第2章 新しい戦場と向き合う
我々が世界だ・・・We Are The World 068
悲歌のシンフォニー・・・殺しあう人間 083
サラエボでの上映会・・・子ども捜しの旅 089
IOC委員たちの戦争・・・民族へ帰る若者たち 103
エルサレムの糸杉の丘にて・・・成立しない対話 110
コソボ・・・被害者が加害者の顔に変わる時 121
平和への祈り・・・戦争の泥沼に咲く蓮の花 130
第3章 ヒロシマから見える世界
終末時計・・・核を手放さなかった人間の記録 142
生き地獄・・・ヒバクシャ 150
絆・・・ヒロシマの心 159
チェルノブイリ・・・ヒロシマと同じ運命を背負った人間の標本 174
キューバ危機・・・もうひとつの戦慄のストーリー 182
最悪のシナリオ・・・途方もない核の時代に生きる 196
サダコ・・・絶望から希望の物語へ 209
第4章 我々はどこへ行くのか
「鳥の目」「虫の目」で見る・・・歴史の奔流 220
時祷詩集・・・愛と救済のオープニングテーマ 226
移民たちへの恐怖・・・ヨーロッパにできた新たな壁 233
感染爆発・・・ウイルスが人間を襲う 238
通貨危機・・・ホットマネーが国家を襲う 245
アイデンティティー喪失・・・巨大な精神の空白が生まれる 255
テロの時代・・・新しい戦争が始まった 263
終章 次の時代へ行く、旅立ちの岬にて 279
あとがき 294

前書きなど

 歴史の裏にはさまざまな犠牲と教訓がある。世紀末ベルリンの壁が崩壊し、20世紀に登場して世界をイデオロギーで二分した共産主義はすでに過去のものとなり、強大なソビエト連邦も消えた。この間わずか2年である。21世紀になるとアメリカ同時多発テロが起き、いま人間は、憎しみが報復を生む混沌を生きているかのようだ。世界はコンピュータネットワークでつながり、グローバル化が進み、一見進歩したかのようにみえる。だが、恐ろしいブラックボックスが潜んでいるような薄気味の悪さがある。コンピュータは歴史を、ビデオを早送りするかのような、身体感覚を越えたスピードにしてしまった。世界は異なる人種の共存から、民族による棲み分けへと進んでいるかのようだ。ボーダーレスが進むどころか国益まるだしの対立が激しくなってきた。

 日本は、平成から今に至る道程を、立ち止まって検証する時期にきているように思う。劇的に世界が変わるなかで、舵を切ってきた国の進路はこのままでいいのか、このままいくのか、軌道を考えるかけがえのない時を迎えているような気がする。1989年以降の番組を辿りながら、1995年のNHKスペシャル年間シリーズ「戦後50年、その時日本は」の最後に、毎回つけたナレーションを思い出す。
 「日本は戦後、経済大国の道を歩みました。この間、私たちは何を選択し、何を捨ててきたのでしょうか。この50年の記録を、次の100年のために使ってください」。
 いま、このたった20年足らずの歴史を顧みるよすがとして、歴史が産み落とした膨大な番組群を串ざしにしたようなこの記録が、次の時代へのメッセージを放つものになってほしいと思う。

版元から一言

 いまNHKのあり方が問われている。私たちも、もろてを上げてNHKを礼賛するわけではない。しかし、いま世界で、優れたドキュメンタリーを作っているのは、英国国営放送BBCと、日本のNHKしかない。そのことを考えると、NHK不要論に組することはできない。
 ただ事実を伝えているだけ、という姿勢で、私たちは多くの物語を報道から与えられる。報道にはそもそもそういう側面があり、それゆえに、いま報道は、マルクス主義や世界宗教に変わる世界観を作り出してもいる。そのことに対して、作り手や視聴者が無自覚になったとき、私たちはまた過去の過ちをくり返すことになるだろう。
 それを回避する唯一の道は、さまざまな報道が、さまざまな形であるという状況を作り出すことにしかない。視聴率やスポンサーを意識しつつ行なわれる報道も重要である。だが、それだけになったら、世界はまた単一的な色彩を帯びる。
 国営放送であるNHKが、どちらを向いて番組を作るのかが、日本の民主主義の成熟を測る物差しになるだろう。

著者プロフィール

川良 浩和  (カワラ ヒロカズ)  (

NHK放送総局スペシャル番組センター エグゼクティブ・プロデューサー
昭和47年入局。以来、報道番組(時事・ドキュメンタリー)の企画制作に従事。昭和58年から4年間、広島放送局に在籍。ヒロシマ、原爆に放送ジャーナリズムの原点をみいだす。現在まで「NHK特集」「NHKスペシャル」150本あまりを製作し、国内外の受賞多数。2005年は被爆60年の節目にあたり、世界に向けて「平和巡礼2005広島・長崎平和コンサート」を企画制作。その後、「日本の、これから」エグゼクティブ・プロデューサーを経て、2006年7月からNHKエンタープライズ。

上記内容は本書刊行時のものです。