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漂泊のアーレント 戦場のヨナス
ふたりの二〇世紀 ふたつの旅路
- 出版社在庫情報
- 在庫あり
- 初版年月日
- 2020年7月15日
- 書店発売日
- 2020年7月7日
- 登録日
- 2020年4月2日
- 最終更新日
- 2020年7月6日
紹介
▼二〇世紀の破局を二人はどう生き、そこに何を見たのか。
「二一世紀の全体主義」に警鐘を鳴らす友情の記録。
政治の意味を問い続けたハンナ・アーレントと、
未来への責任を基礎づけたハンス・ヨナス。
盟友として、ユダヤ人として、思想家としてナチズムに対峙し、
ともに二〇世紀を駆け抜けた。
二人は、時代が課した過酷な宿命に向かい合い、
その破局に対して、それぞれの仕方で、答えを模索し続けた。
その二人の思想は「出生」という概念において、閃光のように交錯する。
アーレントとヨナスの人生と思索の軌跡を追い、
二一世紀を歩むわれわれへの問いかけを探る。
【「アーレントの葬儀におけるヨナスの弔辞」第6章より】
僕たちは、別々の場所に長く引き裂かれ、
善悪の判断が嵐に曝されたように崩壊していく世界を、切り抜けてきた。
重要なことは何で、そうではないことは何なのか、
本当に価値があることは何なのか、
恐怖すべきことは何なのか、
軽蔑すべきことは何なのか、
そういうことに対して僕たちは同じ気持ちを抱いていた。
それだけはいつも確かだったね。
目次
凡例・文献略号一覧
プロローグ 二〇世紀の破局を超えて
アーレントとヨナス
漂泊と戦場
二人の交錯点――「出生」
本書の構成
第1章 友情と恋愛のあいだ――誕生から出会いまで 1903~1933
アーレント 〇~二七歳
幼年期と少女時代
ユダヤ人としての自覚
ヨナスとの出会い
博士論文「アウグスティヌスの愛の概念」
ナチ前夜の結婚
ヨナス 〇~三〇歳
ヨナスの出生
読書の世界へ
シオニズムへの夢
大学時代――フライブルク・ベルリン・ヴォルフォンビュッテル
アーレントとの出会い
古代グノーシス主義の研究
第2章 漂泊と戦場――ナチズムとの対峙 1933~1945
アーレント 二七~三九歳
ナチス政権の成立
政治的目覚め
パリのアーレント
伝記『ラーエル・ファルンハーゲン』と「自覚的パーリア」
ブリュッヒャーとの出会いと結婚、そしてギュルス収容所
新天地アメリカへ
ヨナス 三〇~四二歳
ドイツからの亡命
ハイデガーへの失望
エルサレムの日々
「われわれはこの戦争に参加する」
ローレとの結婚
ユダヤ旅団への参加
戦場の思索
第3章 新たな始まり――それぞれの再出発 1945~1961
アーレント 三九~五五歳
戦争の終わり、そして二人の恩師との再会
イスラエル建国への絶望
全体主義とは何であったのか
新たな「始まり」への希望
『人間の条件』における「始まり/出生」論
ヨナス 四二~五八歳
母の死
「人間を信じるということが必要だった」
パレスチナからカナダへ
「私には小さな子どもがいる」
ニューヨークへ、そしてアーレントとの再会
第4章 亀裂――アイヒマン論争 1961~1964
アーレント 五五~五八歳
「悪の凡庸さ」についての考察
アイヒマン論争
ショーレムの怒り
語り口の問題
アーレントからの応答
あえて裁くこと
ヨナス 五八~六一歳
アイヒマン裁判への態度
アーレントへの手紙
「誇りをもって身につけよ、この黄色い星を!」
決裂と和解
第5章 精神の生活、生命の哲学――方向転換の季節 1964~1975
アーレント 五八~六九歳
〈活動的生活〉から〈精神の生活〉へ
一者のなかの二者
晩年のアーレント
ヨナス 六一~七二歳
「死の存在論」
ハイデガーとニヒリズム
哲学的生命論の戦略
生命における死と実存
人間の自由と想像力
不死性の神話
ヨナスの生命とアーレントの生命
第6章 最後の対話――テクノロジーへの問い 1975~1993
アーレント 死去後
「究極的なもの」をめぐって
超越性と内在性
科学技術をめぐる対話
見ることと聞くこと
ヨナス 七二~九〇歳
「世界はずっと冷たくなってしまった」
晩年のアーレントからの影響
科学技術文明への問い
「未来への責任」という難問
『責任という原理』
責任と「出生」
「神があなたと一緒に作ろうとした本」
哲学者であり、同時に、ユダヤ人である
補論 歴史をめぐるアーレントとヨナスの対話
コンスタンツ大学哲学文書館
一九六九年のアーレントとヨナス
論文「流転と静止――歴史の理解可能性の根拠について」
アーレントからの批評
『精神の生活』への影響と「魂の交流」
第7章 考察――アーレントとヨナスの比較 20xx
共鳴と反発――漂泊と戦場がもたらしたもの(百木 漠)
1 アーレントとヨナスの差異
2 差異の理由
3 アーレント出生論の神学的基礎
4 ヨナス出生論の神学的基礎
5 ふたりが遺したもの
自然・対話・想像力――アーレントとヨナスにおけるテクノロジーの問
題(戸谷洋志)
1 着想へ至る経緯
2 終わりなき進歩と自然性
3 テクノロジーとしての科学
4 アーレントにおけるテクノロジーの脅威――公共性の空洞化
5 ヨナスにおけるテクノロジーの脅威――倫理の空洞化
6 そして全体主義へ
7 抵抗としての対話
8 抵抗としての想像力
9 ここにいる者とともに、ここにいない者のために
エピローグ テクノロジー的全体主義に抗して
未来に向けて
現代=近未来
テクノロジー的全体主義の出現
註
あとがき
参考文献
上記内容は本書刊行時のものです。