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ひれふせ、女たち ケイト・マン(著) - 慶應義塾大学出版会
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【利用不可】

ひれふせ、女たち (ヒレフセ オンナタチ) ミソジニーの論理 (ミソジニーノロンリ)

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A5判
448ページ
並製
価格 3,200円+税
ISBN
978-4-7664-2635-9   COPY
ISBN 13
9784766426359   COPY
ISBN 10h
4-7664-2635-5   COPY
ISBN 10
4766426355   COPY
出版者記号
7664   COPY
Cコード
C0010  
0:一般 0:単行本 10:哲学
出版社在庫情報
在庫あり
初版年月日
2019年11月30日
書店発売日
登録日
2019年10月7日
最終更新日
2019年11月28日
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書評掲載情報

2020-07-25 朝日新聞  朝刊
評者: 三浦まり(上智大学教授)
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紹介

「女性嫌悪」とされるミソジニーとは何か?

家父長制を維持するための「魔女狩り」のメカニズムを明らかにする
革新的なフェミニズム思想のベストセラー

「ミソジニー」についての初めての研究書であり、フェミニズム思想を刷新した注目作がついに翻訳。

なぜアメリカ大統領選でドナルド・トランプがヒラリー・クリントンをおさえ勝利したのか?
なぜ性犯罪をおかした男性は免責される傾向にあるのか?
なぜ「インセル」による女性の殺人事件が起こるのか?
なぜ女性の証言は信用されないのか?
なぜ堕胎を理由に女性は罰せられるのか。
なぜ戦時中の虐殺において、レイプがかならず含まれるのか?
なぜ女性たちはいつも「与える」ことを期待されるのか?

社会生活と政治の中にある「ミソジニー」を、分析哲学的アプローチで探究することで「ミソジニー」を定義し直し、それがどのように機能しているか明らかにする。

【各誌レビューのご紹介】

私は長いあいだ性差別とミソジニーについて考え、教えてきたが、この本は新鮮な視点を開いた。たとえば、信念としての性差別と、執行戦略としてのミソジニーを説得力のある方法で区別している。(中略)ミソジニーというものが主として、女性の与えるサポート、サービス、ケアへの要求についてなのだという本書の議論は、たしかに、この激動の時代の物語の少なくとも大きな一部分だろう。(マーサ・ヌスバウム、哲学者・倫理学者)

[著者が]ミソジニー理解を明らかにして、議論のために現実社会の実例をフル活用していることは、称賛に値するし、すぐれた哲学の典型となっている。(マリ・ミッコラ、哲学者)

絶好のタイミングで出版された本書は、私たちの前に現われる、いびつで根深い現象の理論的枠組みを提供してくれる……この本によって、個々のミソジニストを明らかにすることは難しいが、ミソジニーを根絶することはもっと難しいのだと気づくことができる。(カルロス・ロサダ『ワシントン・ポスト』)

ミソジニーとは何か。性差別とはどう違うか。なぜ男性優位の状況が続いているように見えるのか。[この本の中に]答えがある。著者の主張によると、ミソジニーは女性に対する男性の敵意や憎悪ではなく、男性の支配にあらがう女性をコントロールし、罰することだという。 ミソジニーは、家父長制を強化する女性に報酬を与え、そうでない女性を罰する……この本は、私たちが社会で果たす役割、出生時に割り当てられ、ほとんど疑問視しない性的役割に注目し、そしてその役割を拒否する人々、とりわけ女性をどのように罰するか示している。(ショーン・イリング『Vox』)

分析道徳哲学のツールを展開して、ミソジニーの論理を印象的に説明している。重要なのに残念なことに長いあいだ軽視されてきた[ミソジニー]というトピックについて今後議論するための参照点になることは間違いない。(ジョン・タシウラス、道徳・法哲学者)

ミソジニーを個人の偏見の問題だけでなく、文化全体のシステムととらえることに対し、説得力のある議論を示している。(マックス・フィッシャー、アマンダ・トーブ『ニューヨーク・タイムズ・ザ・インタープリター・ニューズレター』)

目次

はじめに 道を誤る

序論 前言を取り消す

 息を塞ぐ
 沈黙
 声の変容
 本書の狙い
 不出頭
 本書の概略
 ミソジニーの「論理」とは

第一章 女たちを脅す

 アイラ・ヴィスタ銃乱射事件
 「ミソジニーとは何か」とはどのような問いなのか
 ミソジニーのありうる姿

第二章 ミソジニーの定義を改良する

 ラッシュ・リンボウによるサンドラ・フルク批判
 改良的・交差的提案
 ミソジニーは存在論的に家父長制に依存する
 ミソジニー的敵意の諸相
 ミソジニーの認識論
 傾向性としての(潜在的)ミソジニー
 システム的なものとしてのミソジニー、そしてそれ自身が(はるかに)
 大きなシステムの一部分であるミソジニー
 この分析はミソジニーの根底にある道徳的特徴を明らかにする
 ミソジニーの存在はミソジニストの存在とかならずしも結びつかない
 男のものでない島

第三章 性差別主義(セクシズム)と区別する

 性差別主義(セクシズム)とミソジニー
 ミソジニーと性的モノ化
 お仕置き(スマックダウン)の術
 母を愛し、他者を抹消する
 与えない/与えられない女たち
 バックラッシュとしてのミソジニー

第四章 彼の取り分を奪う

 ミソジニーと権利意識
 彼女が与えなくてはならないもの
 彼の取り分
 生命を奪う──恥と家庭内殺人者
 本章以降の展望
 
第五章 ヘイトを人間化する

 人間主義的思考の適用例
 人間主義を明確にする
 人間主義の問題点
 社会的に状況づけられた代替案
 人を支配する
 女、あまりにも人間的な

第六章 男たちを免責する

 殺人から逃げおおす方法
 ボーイ・キルズ・ガール
 階層を維持する証言的不正義
 ヒムパシー
 ロッカールーム・トーク
 ミソジノワールの現場──ダニエル・ホルツクロー事件 

第七章 被害者を疑う

 いわゆる「被害者文化」について
 被害者とは何か──道徳的ナラティヴの役割
 被害者を(控えめに)演じる
 『独立の民』──事例研究

第八章 ミソジニスト(に)敗北する

 男が女と争うとき──ジェンダー・バイアスの比較研究
 社会的拒絶は嫌悪によって媒介される
 ヒラリーにたいする嫌悪表現の数々
 いかに嫌悪は貼り付くか
 距離を保つ
 ケア煽動
 ジェンダー化された二重知覚
 なりすまし

結論 与える彼女
 
 訳者あとがき
 文献一覧
 索引

著者プロフィール

ケイト・マン  (ケイト マン)  (

コーネル大学哲学科准教授。専門は倫理・社会・フェミニズム哲学。学術雑誌のほか、『ニューヨーク・タイムズ』、『ハフィントンポスト』などにも寄稿。『ボストン・レヴュー』のミソジニーに関するフォーラムのために書いた記事が、2016年度の最も好きなエッセイ25のひとつに選ばれた。主に本書の成功により、イギリスの総合月刊誌『プロスペクト』が毎年選ぶ「50人の世界のトップ思想家(2019)」に、マーサ・ヌスバウムらとともに選出されている。
ウエブサイト katemanne.net  ツイッター @kate_manne

小川 芳範  (オガワ ヨシノリ)  (

翻訳家、ソーシャルワーカー(精神保健福祉士)。早稲田大学教育学部国語国文学科卒業。ブリティッシュ・コロンビア大学哲学科博士号取得。著書に『ハウジング・ファースト』(共編著、山吹書店、2018年)、訳書にM・アトウッド『青ひげの卵』(筑摩書房、1993年)、H・S・ベッカー『ベッカー先生の論文教室』(慶應義塾大学出版会、2012年)など。

上記内容は本書刊行時のものです。