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欲望と誤解の舞踏
フランスが熱狂した日本のアヴァンギャルド
- 出版社在庫情報
- 在庫あり
- 初版年月日
- 2017年7月1日
- 書店発売日
- 2017年7月15日
- 登録日
- 2017年4月5日
- 最終更新日
- 2017年7月14日
書評掲載情報
2017-09-10 |
読売新聞
朝刊 評者: 伊藤亜紗(東京工業大学准教授、美学者) |
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紹介
戦後日本の前衛芸術「舞踏」はどのように受容され、発展したのか?
1970年代の終わり、フランスの人々は、日本の前衛芸術「舞踏」を大きな衝撃をもって迎え入れた。大野一雄、カルロッタ池田、山海塾、室伏鴻、笠井叡、そして土方巽……多くの日本人ダンサーがフランスで〈発見〉された。本書は、舞踏がその上陸から今日まで、この地の人々を魅了しつづけている歴史を跡付けている。舞踏の伝播は、あらゆる「誤解」とともに、ここではないどこかへ、日本への欲望を引き起こしながら、コンテンポラリーダンスの領域に途方もない影響を与えたのである。
フランスのジャーナリズムと〈身振り〉の分析を駆使して、美学と文化史の観点から舞踏を論じることは、現代の舞踊史を読み直すことを意味する。「ジャポニスム」の歴史、ドイツ表現主義とのつながり、舞踏に関係づけられるヒロシマの記憶……舞踏をめぐるダイナミズムを明らかにし、身振りを介した日欧の歴史を亡霊のごとく浮かび上がらせる、革新的な日本文化受容論。
貴重な写真資料を多数掲載。
目次
日本語版によせて
序論 身振りのグローバル化のなかに舞踏をよむ
邂逅、そして創造/ねつ造の歴史をひもとく
誤解をめぐる物語/歴史
舞踊史の中心をずらす
「日本ブーム」
舞踊史と文化史の交差
第一部 「新発見」から聖別/公認まで
第一章 瞬く間に成功した歴史
一九七八――決定的な年
長く続く熱狂
ダンス分野からの聖別/公認
第二章 啞然とした批評家たち
衝撃が新たな文体をつくりあげた
記号が力を覆い隠してしまうとき
揺さぶりかけてくる体験、両義的な魅力
第二部 さまざまな誤解がもたらした舞踏の再創造
第三章 多様な舞踏を「舞踏」にまとめる
――単純化された美学的カテゴリー
「舞踏」という語の曲がりくねった歴史
舞踏という美学的カテゴリーは均質なのか?
歴史的厚みを欠いたカテゴリー
第四章 「ヒロシマの灰の上に生まれた」……?
ジャーナリズムに登場したステレオタイプ
戦後芸術の一つとして
死を匂わすものから大量死へ
舞踏、ヒロシマを記憶する場所
第五章 異国趣味への欲望
日本人的アイデンティティと特性?
異国として他性を知覚する
前衛性を遮蔽する異国趣味
第三部 コンテンポラリーダンスのなかにある舞踏への欲望
第六章 感覚のなかの他所
旅への欲望
フランスで舞踏を実践する――感じる別の方法を求めて
実践の発展
多様な取り込みの方式
第七章 ひそかな欲望――再び現れた表現主義の身振り
別の歴史を求めて
回帰と迂回としての舞踏
舞踏への新たな欲望
結論 国を越え、断続的に形成される身振りの歴史
注
解説(パトリック・ドゥヴォス)
参考文献・資料一覧
フランスの舞踏 年表
索引
上記内容は本書刊行時のものです。