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食べることのリハビリテーション 本田慎一郎(著/文) - 協同医書出版社
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【利用不可】

食べることのリハビリテーション (タベルコトノリハビリテーション) 摂食嚥下障害の多感覚的治療 (セッショクエンゲショウガイノタカンカクテキチリョウ)

医学
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A5判
286ページ
定価 4,000円+税
ISBN
978-4-7639-3057-6   COPY
ISBN 13
9784763930576   COPY
ISBN 10h
4-7639-3057-5   COPY
ISBN 10
4763930575   COPY
出版者記号
7639   COPY
Cコード
C3047  
3:専門 0:単行本 47:医学・歯学・薬学
出版社在庫情報
不明
初版年月日
2019年11月1日
書店発売日
登録日
2019年10月8日
最終更新日
2019年10月8日
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紹介

なぜ患者は誤嚥してしまうのか、なぜ注意してもむせてしまうのか──
なぜ自分はいろいろなものをごく自然に食べることができるのか──


「食べること」をあらためて考えていくと、食べるという行為を下支えしている基本的な機能は何かが見えてきます。
私たちは毎日ごく自然に食べています。どんなふうにその食べ物を口に入れ、どの部分でどれくらいの力で嚙むのかなど、意識せずとも食べる前に予測して、歯ごたえや水分や風味が複雑に一体となったその味を期待しています。
それができるのは自分の舌や口蓋など口腔器官のイメージが明確で、それらをどう動かすかという適切な運動のイメージを持てるからであり、食べ物の大きさ・形・硬さなどの物性の認識が適切だからです。

一方、摂食嚥下障害の患者の動きを観察し、知覚(触覚や空間感覚など)を評価し、同時に本人にしかわからない認識のあり方を対話によって丁寧に聞いていくと、「見た目の口腔器官と頭で思い浮かべるイメージが一致しない」「口の中の模擬食塊の違いがわからない」など、脳機能に何らかの変質があることが浮かび上がってきます。

本書は、脳-身体-道具の相互作用を考えながら、知覚・注意・記憶・判断・イメージ、それらのあり方を推測させてくれる言語との関連のなかで、食べることの多感覚性に目を向けて患者の病態を評価し、また治療に用いていく考え方と実際を紹介し、提案しています。
摂食嚥下治療の新しい可能性を探るセラピストにとって、見逃せない一冊です。

目次

第1部 「食べること」の経験とリハビリテーション
第1章 食べることの機能
1 食べることの認知とその仕組み
 1)①食べ物を認知する段階
 2)②捕食後、嚥下できる性状になるまで咀嚼する段階
 3)③食塊を咽頭へ送り込む段階
 4)④食塊が咽頭を通過する段階、⑤食塊が食道を通過する段階
2 美味しさとその予測
3 食べることの運動学習
 1)身体と環境の動的な関係~相互作用
 2)運動学習メカニズム
 3)学習と意図、情報性
 4)経験を広げる学びの原則
4 「食べる」という行為の表象
 1)表象とは
 2)「食べる」という行為と身体の表象
 3)接触情報と空間情報

第2章 病態解釈と治療の組み立て
1 患者が抱える問題の把握(病態分析)~評価(外部観察・内部観察)
 1)行為の機能システムの変質(外部観察)
  (1)行為の機能システムの階層性 (2)“口腔”機能システムの情報構築
 2)認知過程の変質(内部観察)
  (1)食べることの認知過程 (2)観察のためのプロフィール
2 治療の流れ
 1)セラピストの思考と患者の思考
 2)訓練の流れ(認知問題-知覚仮説-解答)
  (1)認知問題 (2)知覚仮説(予測) (3)解答(比較照合)
 3)訓練における3つの道具~訓練教材、運動イメージ、セラピストの問い(言語)
3 学習計画の立案(訓練の組織化)
 1)どのような問題を解決したいのか
 2)どの身体部位を訓練の対象とするのか
 3)どの感覚モダリティを使うのか
 4)どのような認知問題を提示するのか
 5)訓練によって何を教えたいのか(内容)
 6)どのように教えるか(方法)
 7)回復をどのように確認するか(検証)
4 訓練課題の例
 1)「捕食」の課題例
 2)「保持」の課題例
 3)「咀嚼」の課題例
 4)「移送」の課題例
5 心理的道具としての言語
 1)意識経験と言語
 2)「食べる」という行為と言語
 3)対話における言語

第2部 「食べること」の治療としてのリハビリテーション
第3章 観察・病態解釈・治療の実際~臨床思考をたどる
症例1 強くむせてしまう右片麻痺患者~舌の身体表象の変質による嚥下障害の可能性
 ・はじめに
 ・症例1
 ・評価
  初回の一般的な評価および結果/評価1:複数の口腔器官を介した模擬食塊の形態認知/評価2:舌のみによる模擬食塊の形態認知/評価3:舌と口蓋の体性感覚地図の評価/評価4:口腔内の身体表象の描画による評価/評価5:硬さの異なる模擬食塊の認識と模擬食塊を圧縮する際の舌運動/評価6:舌と口蓋の正中線の表象/評価7:舌の触圧覚
 ・病態解釈
 ・病態解釈に至るまでの臨床思考の道筋
  1.嚥下運動誘発の入力源とMRI画像の関連について考える/2.舌の立体認知能から考える/3.立体認知(対象の表象化)を体性感覚情報処理から考える/4.対象の表象化障害を嚥下の神経機構から考える/5.舌尖と口蓋の接触情報と嚥下の関連
 ・治療の組み立て~行為の機能システムという観点
 ・治療仮説
 ・学習計画の立案(治療の組織化)
  治療1:触覚を介した舌と口蓋の体性感覚地図の課題/治療2:舌の触覚を介した表面性状の認知課題/治療3:舌と口蓋間で模擬食塊を表象化する課題(運動イメージの活用)
 ・治療経過
 ・再評価結果
 ・治療介入の順番の妥当性についての再考~知見と記述の振り返り
 ・最後に症例の印象的なことば
症例2 「飲み込むのが怖い」高次脳機能障害患者~口腔内の左半側空間無視による嚥下障害の可能性
 ・はじめに
 ・症例2
 ・嚥下機能に関する主要な口腔器官の評価
 ・症例2の訴えに立ち戻る
 ・模擬食塊による評価
 ・病態解釈に至るまでの臨床思考の道筋
  1.神経解剖学的観点と記述について/2.半側空間無視の定義と記述について/3.空間そのものの定義と記述について/4.空間に関する臨床的分類と記述について/5.脳内の表象化と記述について/6.触覚性無視と記述について/7.注意機能の関与による身体図式の表象化と記述について/8.脳の側性化(ラテラリティ)と記述について/9.治療介入の原則となる身体(個体)空間の成り立ちについて/10.治療介入に重要な言語と身体表象の象徴的要素について
 ・病態解釈
 ・治療仮説
  言語の重要性と個々の症例に合わせた治療/認知プロセスの「注意」に着目した介入方法の実際
 ・治療経過
 ・模擬食塊を用いた最終評価の様子
 ・物理的に存在する口腔器官と身体表象としての口腔器官
  症例1、症例2に共通する重要なポイント/意識経験の記述の取り扱い
症例3 食物残渣の著明な進行性疾患(ALS)患者~感覚麻痺による口腔の知覚変質の可能性
 ・はじめに
 ・症例3
 ・評価
  一般的な嚥下機能および舌運動の評価/実際の食事場面の口腔器官の評価/評価1:舌の体性感覚地図の検査/評価2:模擬食塊の形態認知/評価3:模擬食塊の硬さの認知/評価4:高次脳機能の側面
 ・病態解釈に至るまでの臨床思考の道筋
  1.感覚麻痺による知覚の変質の可能性/2.食べるという行為の神経機構/3.治療介入可能性としての病態解釈には学習モデルが必要
 ・病態解釈
 ・治療仮説と段階づけ
 ・結果(介入から1か月後)
 ・結論
 ・嚥下障害の原因を捉え直す~認知神経リハビリテーション理論の3つの柱
  1:口腔器官という身体は、情報の受容表面と捉える/2:口腔器官の運動(の意味)とは(世界を、対象を)知ることである/3:回復とは学習である
 ・嚥下機能障害のみの治療を超えることができるか(汎化)

第4章 治療道具の作製
1 身体があって初めて物理的な対象物は道具となる
2 舌の体性感覚地図の評価
 1)評価用紙の作り方
 2)評価の基本的な流れ
 3)舌の絵という道具の段階づけ
  (1)1点の刺激の空間的な配置を「問う」課題設定 (2)2点の刺激間の空間関係を「問う」課題設定 (3)線を引くような刺激について「問う」課題設定 (4)刺激を予測させた空間的部位と実際の刺激が一致しているかを「問う」課題設定
3 食べ物の物性認知につなげる模擬食塊
 1)模擬食塊(形態・表面性状)の作り方および評価(治療)方法
  (1)歯科印象用レジンで作る形態・表面性状の異なる模擬食塊 (2)市販の商品を組み合わせて作る形態の異なる模擬食塊の例 (3)レジンで作製した模擬食塊と市販の商品で作製した模擬食塊の比較
 2)模擬食塊(硬さ)の作り方および評価(治療)方法
  (1)医療用粘土で作る硬さの異なる模擬食塊 (2)市販の商品を組み合わせて作る硬さの異なる模擬食塊の例 (3)医療用粘土で作製した模擬食塊と市販のスポンジで作製した模擬食塊の比較
 3)通常の模擬食塊を嫌がる患者の場合の工夫例
  (1)水で作る (2)飴で作る
4 摂食嚥下障害の治療道具としての絵(写真)カード
 1)絵(写真)カードという道具の作製
 2)絵カード(写真)を用いた治療展開の紹介
症例4 口唇閉鎖ができない失語症患者~捕食における視覚情報解読の重要性
 ・症例4
 ・口腔器官の運動性の評価
 ・視覚情報が運動(挺舌)修正の鍵?
 ・視覚情報(絵〔写真〕カード)を用いた治療の考案へ
  1.視覚情報(二次元の口形と二次元の口形)のマッチング課題/2.視覚情報(三次元の口形と二次元の口形)のマッチング課題/3.視覚情報(二次元の口形)から体性感覚へ情報を変換し運動を産出する課題
症例5 食具を使わない失語症患者~口唇器官-食べ物-食具の関係を読み解く
 ・症例5
 ・評価
  1.道具の使用に関する模倣/2.左上肢の模倣とそれに関連する評価
 ・病態解釈に至るまでの検討事項
 ・治療仮説へ
 ・治療介入
  治療介入1:絵(写真)カードの解読から自助具箸の把持へ/治療介入2:絵(写真)カードの解読から自助具箸の適切な使用へ
 ・結果と経過
 ・手づかみに戻る原因の検討
 ・食べるという行為の再検討~他患者との比較
 ・口腔器官に対する評価
 ・模倣障害や運動性錯行為という現象への着目
  1.手づかみ食べという行為の再検討~ビデオ映像の再分析/2.二重接触(ダブルタッチ)の意味/3.予測と結果の一致/4.道具の身体化の困難さの原因/5.道具を自分と認識できるか/6.手の延長として視覚表象化されない食具/7.身体(自)と道具(他)を統合する過程への介入
 ・捕食に関する発達的観点を加え、病態解釈へ
 ・捕食に関する視覚情報を読み解く課題例
  課題1:絵(写真)カードの解読により口唇の形を思考する/課題2:絵(写真)カードの解読により食べ物に合う口の形を思考する/課題3:絵(写真)カードの解読により口腔内の空間表象(手の空間表象)と食べ物の形態に関する表象とを思考する

上記内容は本書刊行時のものです。