書店員向け情報 HELP
出版者情報
書店注文情報
在庫ステータス
取引情報
校内研究の新しいかたち
エビデンスにもとづいた教育課題解決のために
- 出版社在庫情報
- 在庫あり
- 初版年月日
- 2020年9月20日
- 書店発売日
- 2020年9月24日
- 登録日
- 2020年7月21日
- 最終更新日
- 2022年11月7日
書評掲載情報
2020-10-17 |
月刊学校教育相談
2020年11月号 評者: ブックレビュー |
MORE | |
LESS |
紹介
日々の指導を広げる・深めるための研究入門マニュアル。主題設定,実践,考察,成果報告といった各段階のポイントを,文章の書き方・まとめ方などの初歩から,現場でも使える統計処理や質的・量的データ分析など発展的なものまで取り上げる。根拠に基づいたていねいな研究を促し,取組を学校変革へとつなぐヒントを提供。
目次
はじめに
序 章 校内研究の新しいかたちをめざして
1.校内研究の新しいかたちとは
2.エビデンス不足の実態
3.本書の特徴と読み方
第1章 学校の課題(ニーズ)をアセスメントする
1.学校経営計画と校内研究
2.学校経営に校内研究を位置づける手順
3.校内研究推進上の課題
4.学校における課題把握の方法
5.校内研究の改善の方向
第2章 実践研究の主題を決める
1.施策と学校課題のつながり
2.取り組みの切り口
3.課題の範囲
4.先行実践・報告集集め
5.先行研究の取り組みの検討
6.目的と手段・方法の区別
第3章 実施計画をつくる
1.目標を明確にする
2.校内のシステムづくり
3.研究デザインを決める①:5W
4.研究デザインを決める②:1H
5.教育効果の測定①:「ものさし」の選択
6.教育効果の測定②:ベースラインの確認
7.保護者や地域社会との連携を図る
8.スケジュールを決める
9.研究倫理を守る
第4章 試行的な実践を行う
1.試行的な実践の必要性
2.試行的実践の成果と課題の共有
3.実施計画の練り直し
4.試行的実践のまとめ
5.全校的な取り組みへの展開
第5章 教育実践を行う
1.教育課程への位置づけの工夫
2.既存組織(学年会)の活用
3.少数のクラスから学年全体の取り組みへ
4.学年の取り組みを全学年へ広げる
5.校務分掌の改善への工夫
6.中学校ブロックでの推進組織づくり
7.研究推進委員会への組織的コンサルテーション
8.若手教職員や同僚へのコンサルテーション
9.研究推進だより(ニュースレター)の活用
10.校内研修の工夫
第6章 実践の結果を記録する
1.結果の分析:多様な結果
2.結果の分析:集合的結果
3.結果の分析:個別的結果
4.インタビュー
5.統計処理の選択
6.結果の表示:表・グラフ・図
7.実践経過・結果の記述:記述の内容(分厚い記述)
8.実践結果の記述:経過の記録
9.実践結果の記述:文章のつづり方
10.設定された目標への到達度
11.目標外の意外な結果の記述
第7章 考察をまとめる
1.考察の柱を立てる
2.目的と結果を示す
3.これまでの実践成果との比較
4.限界と今後の課題
第8章 報告(レポート)にまとめる
1.報告(レポート)にまとめる意味と学校がつくる報告書
2.従来の報告書に掲載されている内容
3.報告書に記載したいこと
4.相手に応じた報告書の書き方
5.これからの校内研究の方向と報告書にまとめる内容
第9章 結果(エビデンス)を発信する(報告会を行う)
1.研究指定校などの研究結果の発信
2.校内研究のかたちを変えようと取り組んでいる学校の工夫
3.研究発表会までのスケジュール管理
4.研究発表会時に行うアンケート調査
5.研究発表会で報告した成果と課題の活かし方
補 章 実践論文としてまとめる
1.どの雑誌にするかを決める
2.投稿規定や執筆要綱を調べる
3.実践論文執筆の留意点
ワークの解答(例)・解説
文献
索引
前書きなど
本書で対象とする校内研究は,学校のなかで学年や学校全体で実施されている実践研究のことである。日本の学校では,その実践力を高めるために,さまざまな規模で校内研究が実施されていて,それによって教師の実践力が高まっている。そこで得られた成果と課題を他校に確実につなぐためにはどうしたらよいのか,というのが私たちの最大の関心である。その鍵となるのが,エビデンス(客観的根拠,科学的根拠)だと考えている。「こうすれば成果が出た。このやり方であればこれまでの課題を克服できた」ということを表すエビデンスを示すことができれば,他校でも同じやり方を採用して教育効果をあげることが期待できる。また,それを土台にして,さらに高い教育効果をめざした取り組みへと改善を進めることができる。
現在のところ,校内研究の成果が実施した学校や教師個人の実践力の向上にはつながっているが,それが他校での実践につながっているかどうかは疑問である。下の図の中の(a)の段階から,(b)やさらに(c)の状態へともっていくことができれば,より一般的な成果として報告することができる。
本書は,校内での研究を計画し,全校や学年での校内研究をリードする立場の教師や管理職,またそうした校内研究を指導したり助言したりする立場にある指導主事を対象としている。ぜひ,本書がそうした立場の教師に参考になり,より質の高い実践研究となるための助けになることを願っている。そうして高められた実践研究(図の(c))が,現在,教育界に求められている「理論と実践の融合」につながると確信している。
ここで簡単に本書出版までの経緯を述べておきたい。本書の執筆者4人は福岡教育大学大学院教育学研究科教職実践専攻,すなわち教職大学院の担当教員である。それぞれの専門領域や経歴はさまざまであるが,「子どもの学校適応の促進」を大きな旗印として,4人で協力して生徒指導・教育相談リーダーコース(2020 年現在)の大学院生(県・政令市の長期派遣研修教員等)の指導にあたってきた。
とくに,従来の大学院修士課程で課されていた修士論文にかわるものとして,各大学院生が課題を設定してその解決に取り組む課題演習という科目の指導で力を合わせてきた。そこでのテーマは,単に大学院生個人の興味関心に基づくものではなく,学校の教育課題に焦点を当ててきた。むろんそうした教育課題は不登校,いじめ,学校の荒れ,特別な教育的ニーズへの対応など大きなものばかりである。そこで,それらに対して何らかの切り口を提案してひとつの解決方法を試み,その成果を検証するという方法をとってきた。
この指導の過程でつねに悩んできたのが,教職大学院の特色のひとつである「理論と実践の融合」はどうあるべきかという点であった。その答えのひとつが,エビデンスを示すことができる校内研究の実践ではないかと考えている。正直なところ,まだ完全な道筋を示すことが出来たとは考えていないが,これまでの指導の経験や指導過程の中で得られたノウハウと知見をまとめて,関係する方々の今後の取り組みに活かすことが出来ればと切に願っている。
(はじめにより一部抜粋)
上記内容は本書刊行時のものです。