書店員向け情報 HELP
出版者情報
書店注文情報
在庫ステータス
取引情報
声の法社会学
- 出版社在庫情報
- 在庫あり
- 初版年月日
- 2019年3月20日
- 書店発売日
- 2019年3月11日
- 登録日
- 2019年1月17日
- 最終更新日
- 2019年3月8日
書評掲載情報
2020-03-10 |
法社会学研究
第86号 評者: 小佐井 良太 氏(愛媛大学教授) |
MORE | |
LESS |
紹介
紛争,問題解決場面や乗り越えの過程で〈声〉はどんな働きをするのか。本書は,〈声〉が〈法〉と,身体が規範・文化・制度と,ぶつかり,きしむさまを,描こうとしたエスノグラフィカルな考察である。声の働き,即ち,本人性,手触り(メタメッセージ),言葉・物語・意味とのあらがい,それらの記述を試みた苦闘の跡でもある。
【主な目次】
序 章 声に現れる法,法からはみ出る声
●第I部 交通する主体
第1章 新たな法主体の可能性:コールバーグ/ギリガン論争を出発点に
第2章 日常的実践としての紛争=処理
第3章 日常的交渉場面に現れる法
第4章 理由をめぐる生活実践と法
第5章 葛藤乗り越え過程における“人びとのやり方”:その語り口分析から
●第II部 領有からはみ出す声とからだ
第6章 身構えとしての声:交渉秩序の反照的生成
第7章 紛争過程における当事者の声:自主的解決支援の罠と可能性
第8章 ナラティヴとメディエーション:反物語の声
第9章 痛みと償い:震えの声の前で
第10章 痛みと紛争解決:混沌の声に立ち会う
第11章 身体的関わりと了解
目次
序章 声に現れる法,法からはみ出る声
1 気づいていない当事者=気づかせる専門家
2 経験をカウントする法
3 インタビューの敗北
4 声のしわざ
4.1 本人性 4.2 声の手触り(メタメッセージ) 4.3 声と言葉 4.4 声と物語 4.5 意味から離れた声 4.6 声から身体へ
5 本書の構成
第Ⅰ部 交通する主体
第1章 新たな法主体の可能性 コールバーグ/ギリガン論争を出発点に
はじめに
第一節 コールバーグ/ギリガンモデルの位相
1 Kモデルの「理想的役割取得」
2 生態学的視点からのKモデル批判
3 Gモデルの含意
第二節 新たな主体イメージの可能性
1 四つの主体イメージ
2 「関係に生きる」主体から「交通する」主体へ
第三節 「交通する」主体と法秩序
1 三つの法秩序の主体イメージ
1.1 全体的正義 1.2 個人的正義 1.3 共同体的正義
2 「交通する」主体の法秩序イメージ
2.1 「接触の共同体」あるいは「点滅共同体」 2.2 秩序化の契機
3 交通を支援する法制度
3.1 対面の直接性 3.2 状況に開かれた発声空間
おわりに
第2章 日常的実践としての紛争=処理
1 紛争の法社会学
1.1 制度志向の紛争研究 1.2 紛争の生成研究へ
2 日常的実践の凝視
2.1 日常的実践 2.2 状況的認知研究 2.3 声という実践──接触から生まれる声
3 実践研究から紛争処理実践へ
3.1 視角としての実践研究 3.2 処理機構から接触媒介へ 3.3 媒介者としての弁護士
第3章 日常的交渉場面に現れる法
1 はじめに
2 しぐさの中の法
3 対面的了解のテスト
3.1 現場交渉 3.2 テストとしての了解活動
4 おわりに
第4章 理由をめぐる生活実践と法
1 問題関心
2 離職理由のジレンマ
2.1 解雇による人格の否定視 2.2 「自己都合」扱いによる二重の自己否定 2.3 「自己都合」扱いによる自己の保持 2.4 理由問題の外観
3 理由問題のスパイラル
3.1 解雇扱いによる自己の回復──「辞めさせられたと大手を振って」 3.2 理由問題からの脱却──問いをずらす
4 若干の展望
第5章 葛藤乗り越え過程における “人びとのやり方” その語り口分析から
1 問題意識──「顧客満足」経営という視点
2 ヒアリング・データの分析
2.1 調査概要 2.2 ケース分析
3 考察と仮説──“経験” に踏みとどまる話法
3.1 語りの四つのモード 3.2 “経験” 話法による乗り越え
4 まとめと今後の課題
4.1 “人びとのやり方” から得られる示唆 4.2 今後の研究課題
第Ⅱ部 領有からはみ出す声とからだ
第6章 身構えとしての声 交渉秩序の反照的生成
1 声に現れる日常と法
2 記述される事実
2.1 法の記述様式 2.2 語る資格 2.3 要件事実に乗らない事実
3 出来事を出来事以外で語ること
3.1 証人尋問 3.2 出来事の陳腐化への抵抗
4 交渉秩序の反照的生成
第7章 紛争過程における当事者の声 自主的解決支援の罠と可能性
1 はじめに
2 事例
2.1 夫との面接経過 2.2 妻との面接経過 2.3 土壇場で即決
3 望まれる声
3.1 カウンセリングの「成果」? 3.2 プロットの導入──非自律的パーソナリティの構築 3.3 転移のエスカレーション 3.4 さぐり=当たり
4 転移と支援──関与者とのあいだに生まれる特別な関係
4.1 転移的関係の広がり──引っ張り込みの力と傾聴 4.2 当事者の位置取り
5 おわりに 157
第8章 ナラティヴとメディエーション 反物語の声
1 はじめに
2 〈問題〉の解決から〈物語〉の改訂へ
3 混沌の語り
4 声の復唱
5 声に立ち会うこと──声を物語に回収しない
5.1 さし出される声 5.2 証人の証人
6 おわりに
第9章 痛みと償い 震えの声の前で
1 はじめに
2 問題の所在
3 意味づけプロセスとしての喪失
3.1 喪失は〈終わったこと〉ではない 3.2 プロセスとしての償い
4 理解から攪乱へ
4.1 報告が詩に変わるとき 4.2 意味取り回路の切断
5 おわりに──振舞いの即興性
第10章 痛みと紛争解決 混沌の声に立ち会う
1 問題の所在
1.1 痛みの損害化とその余剰 1.2 痛みの〈と〉紛争解決モデル
2 痛みは語れるか?
2.1 不定で多面的な痛み 2.2 物語の不能──痛みを語る困難
3 声に立ち会う──徹底的な受動性の中で
3.1 物語的救出の無効 3.2 痛みの個別性 3.3 ただ聴くという責任 3.4 召喚──徹底的な受動性
4 痛みの声と紛争解決
4.1 対面性の契機──個別性において出会うこと 4.2 しるし──世界の再所有
5 おわりに
第11章 身体的関わりと了解
1 問題の所在
2 からだで確かめる事実
2.1 身体的軌跡のなぞり 2.2 問いの焦点化
3 保護者説明会
3.1 言い繕い,廃棄,逃げ腰 3.2 メモ廃棄の意味
4 検証委員会──物語の自己成就
4.1 身体から離れた提言 4.2 背景を探らない背景
5 了解基盤としての身体的関わり
5.1 しぐさによる自己暴露──無様で雄弁なからだ 5.2 「70の156です。」
6 訴訟──「誰でもない/体のない」化け物:NO-BODY
6.1 黒い魔物 6.2 「現実」をカウントする法
7 求められる関わりの形
7.1 身体的手がかりと了解──からだが生み出す了解の芽 7.2 了解を生む身体配置──共同注意の構図
8 おわりに──了解活動は終わらない
あとがき
文献一覧
初出一覧
上記内容は本書刊行時のものです。